1. トップ
  2. エピソード
  3. 「友達より俺のほうが大事だろ」と送った彼の、大事にされなかった週末

「友達より俺のほうが大事だろ」と送った彼の、大事にされなかった週末

  • 2026.9.26
ハウコレ

返信が届いたのは、荷物をすべて運び終えたあと。私はその画面を、隣の友人には見せませんでした。

スマホの通知音で目を覚ましました。画面に並んでいたのは、彼から続けて届いた2通のメッセージです。1通目を読み終えたところで、私は布団から出て、出かける支度を始めました。

用意していた軍手を鞄に入れながら

彼とは付き合って1年になります。その週末は、友人の引っ越しを手伝う約束が先に入っていました。彼にも先週からそう伝えてあり、返ってきたのは短い了解の言葉でした。

届いていた1通目は、

「今日、やっぱり無理?」

でした。

そのすぐ下に、2通目が続いていました。

「友達より俺のほうが大事だろ」

私は画面を上下に何度か動かしました。前後を読み返しても、予定を変えてほしい理由は書かれていません。

「引っ越しの手伝い、先週から言ってたよね」

そう返して、用意していた軍手を鞄に入れました。

既読はすぐにつきましたが、返信はありませんでした。

既読のまま止まっていた画面

友人の新しい部屋は、段ボールの山と、まだカーテンのない窓だけの空間でした。私は本棚の組み立てを引き受け、ネジを数えている合間に何度かスマホを確かめました。

1度目は棚板を運んでいる途中。2度目は友人が買ってきてくれた飲み物を受け取ったときです。

どちらも、私の送った文面に既読がついたまま、その下には何も届いていませんでした。

今頃、彼は何をしているのだろう。予定を変えてほしいなら、どうして最初からそう言わなかったのだろう。

「終わったら連絡する」

それだけ送って、私はスマホを段ボールの上に伏せました。

友人は「彼、なんか言ってた?」と聞きましたが、私は首を横に振って棚板を持ち上げました。

荷物を運び終えたあとに届いた1文

最後の段ボールを運び終え、友人と2人で床に座ったところで、伏せたままのスマホが光りました。

「ごめん、今のは忘れて」

届いたのは、それだけでした。

何を忘れてほしいのか。「友達より俺のほうが大事だろ」という言葉なのか、それを送ったこと自体なのか、文面からはわかりません。

私はその画面を、隣にいる友人には見せませんでした。

帰りの電車で、返事を打ちました。

「忘れないよ。でも、ちゃんと話は聞く」

送信すると、既読はすぐにつきました。

返信は、その日のうちには届きませんでした。

そして...

翌日の昼前、彼から少し長い文章が届きました。

「昨日は、急にひとりになったのが嫌であんな言い方した。会いたいって言えばよかったのに、友達と俺を比べさせるようなこと言ってごめん」

どうして急にひとりになったのかは、書かれていませんでした。

私はそこを聞き返しませんでした。

大事なのは、彼に何があったかより、私に予定を変えさせるために「どっちが大事か」を持ち出したことだと思ったからです。

少し考えてから返しました。

「次からは、会いたいならそう言って」

返ってきたのは、

「わかった」

でした。

あれからも、彼から週末の誘いは届きます。

断ると、少し間が空くこともあります。それでも、「俺よりそっち?」という言葉は送られてきていません。

私はそのたび、まだ組み立て途中だった友人の本棚と、段ボールの上で既読のまま止まっていた画面を思い出します。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ