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「後ろに並んでください」と横の女性を睨んだ私→店員の一言で列の先頭のまま頭を下げた理由

  • 2026.9.26
ハウコレ

扉が開いて店員が呼んだのは、列の先頭に立つ私ではありませんでした。横の女性が差し出した小さな紙を見て、私は扉の脇の貼り紙に目を移しました。後ろの視線が背中に集まっていました。

焼き菓子店の店先で、私は列の先頭に立っていました。スマホのメモを開き、母に頼まれたプリンの数を確かめていたときです。横の通りから来た女性が列の脇を歩いてきて、私のすぐ横で足を止めました。後ろではなく、横でした。

「後ろに並んでください」と言いました

女性は入口の柱の前に立ち、手の中の紙を握り直しただけで、列に目を向けませんでした。先頭の私が黙っていたら、後ろの人たちに割り込みを許したことになります。私は女性の横顔を見つめてから、口を開きました。

「後ろに並んでください」

女性が振り向き、私を見て言いました。

「すみません」

それだけでした。列の最後尾へ向かうこともなく、同じ場所に立っています。謝れば済むと思っているのだと受け取り、私は声を少し大きくしました。

「みんな並んでるんですけど」

女性は紙を持ったまま、扉のほうへ視線を戻しました。私は返事を待ちながら、その横顔を睨み続けていました。後ろの人は誰も何も言いませんでした。

店員が先に呼んだのは、私ではありませんでした

扉が開いて、店員が顔を出しました。

「整理券をお持ちのお客さま、お先にどうぞ」

女性が手の中の紙を差し出しました。折り目のついた小さな紙に、番号が印字されていました。店員はそれを確かめ、女性を店内へ通しました。

扉が閉まる前に、女性がこちらを振り返りました。私はその視線を受けたまま、扉の脇に目を移しました。小さな字の貼り紙がありました。「整理券をお持ちの方は入口脇でお待ちください」。私が立っていたのは、整理券のない人のための当日販売の列でした。女性は最初から、この列に入る必要がなかったのです。

「みんな並んでるんですけど」と言ったときの自分の声が、そのまま耳に残っていました。後ろの人たちも、あの貼り紙を見ていたのかもしれません。

店を出てきた女性に、頭を下げました

待つ間、何を言えばいいのかを考え続けました。順番は先頭のままです。それでも、このまま知らない顔で店に入るほうが、ずっと恥ずかしいと思いました。

扉が開いて、紙袋を持った女性が出てきました。私は半歩横に出て、頭を下げました。

「さっきは、勘違いでした。すみませんでした」

女性は少しだけ間を置いてから答えました。

「気にしないでください。貼り紙、小さいですもんね」

声を荒らげることも、私を責めることもありませんでした。女性は紙袋を持ち直し、来た方向へ歩いていきました。

店員に呼ばれて店内へ入るまで、私は扉の脇の貼り紙から目を離せませんでした。

そして...

母に頼まれたプリンは、頼まれた数のとおりに買えました。それなのに、あの日のことを思い出すたびに残るのは、女性の横顔を睨んでいた自分のほうです。

順番を守ってほしくて声をかけたはずでした。それなのに2度目に口を開いたときには、自分が正しいと周りにわかってほしい気持ちのほうが先に立っていました。

それ以来、衝動的に何かを言いたくなったときほど、まず周りを見るようにしています。

(30代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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