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「俺の母親の味と違う」が口癖の彼に、私が黙って食卓に並べた1つの箱

  • 2026.9.25
ハウコレ

肉じゃがを1口食べた彼は、迷わずその味を言い当てました。けれど私が3か月待っていたのは、その言葉ではありません。彼が箸を置いたあとの、一言でした。

彼の茶碗の横に、私はスーパーで買ってきた1つの箱も並べました。

同棲3か月、食卓で聞き続けた口癖

彼と暮らし始めて3か月になります。営業職で帰りが遅い彼のために、私は帰宅してから2人分の夕食を作るのが日課でした。ところが、味噌汁でも煮物でも、彼は1口食べるたびに同じことを言うのです。「俺の母親の味と違う」最初のうちは、実家の味が恋しいのだろうと受け止めて、砂糖を増やしたり、だしを変えたりしました。それでも返ってくる言葉は変わりません。どこが違うのか聞いても、「わかんないけど、なんか違う」と言うだけで、彼はテレビの方へ顔を戻していました。私はいつの間にか、味見をする回数が減っていました。作り終えた鍋を見ても、また同じことを言われるのだろうと思うだけで、うれしさはどこにも残りませんでした。

彼のお母さんに送ったメッセージ

先月、彼の実家に2人で帰省したとき、お母さんの連絡先を教えてもらっていました。私はその番号に、思い切って肉じゃがの作り方を聞くメッセージを送りました。彼が一番好きだと言っていた料理です。返ってきたのは、レシピではなく1枚の写真でした。スーパーでよく見かける、肉じゃがの合わせ調味料の箱です。「うちはずっとこれよ。あの子、言ってなかった?」画面を見たまま、私は洗いかけの鍋に水を張り直しました。調味料に文句があるわけではありません。ただ、3か月分の「違う」が、何と比べられていたのかを知ってしまったのです。私が量って、だしを取って、煮込んでいた時間は、箱の裏の作り方と比べられていたのだと、そのとき初めてわかった気がしました。

「これ、母さんの味だ」

数日後、私は同じ箱を買って肉じゃがを作りました。彼が座る前に、空になった箱を彼の茶碗の横に並べておきました。彼は箱に目を留めないまま席につき、肉じゃがを1口食べました。「これ、母さんの味だ」そう言った彼が、ようやく横の箱に目を向けました。箸を置き、箱を手に取って、裏面を私に見せるように傾けました。私は皿を運びながら答えました。「お母さんに教えてもらったの。ずっとこれだったって。」「言えるわけないだろ」彼の声は小さくて、私の方を向いていませんでした。「私のには、ずっと違うって言えたのにね」それだけ言って、私は自分の皿をキッチンのカウンターに運び、そこで食べました。彼が席を立つ音は、最後まで聞こえませんでした。

そして...

翌日から、私は自分の分だけを作っています。彼にはそう伝えました。「これからは自分の分だけ作るね」彼は短くうなずいただけで、何を考えているのかは分かりませんでした。同棲は続いていますし、別れる話も出ていません。ただ、レシピを書きためていたノートは、キッチンの一番上の引き出しから、寝室の本棚に移しました。あの箱を置いていた茶碗の横には、今は何も置いていません。冷めたのは肉じゃがではなく、私の方だったのだと思います。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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