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「気が利かない」と店員の前で私を笑った彼→会計で、その店員が私に頭を下げた理由

  • 2026.9.25
ハウコレ

上着をよけなかった私を、彼は店員さんがまだ近くにいるうちに笑いました。会計のとき、その店員さんが頭を下げた相手は私でした。帰り道、彼は「でも」から話を始めます。

私の定食に付いてきた小鉢は、頼んだおひたしではなく冷奴でした。

彼が電話に出ている間のこと

付き合って2年になる彼と、久しぶりに2人で出かけた帰りに入った定食屋でした。私は生姜焼き定食、彼は唐揚げ定食を頼み、小鉢は選べたので私はおひたしにしました。注文を取ってくれたのは、研修中の名札を付けた店員さんでした。料理を待っているうちに彼のスマホが鳴り、仕事の電話だと言って外へ出ていきました。先に届いた私の定食に付いていたのが、冷奴でした。店員さんはお盆を置くと、伝票を見ずに次の席へ向かいました。私は間違いを指摘するのが苦手です。呼び止める手間と、慌てている店員さんの様子を見比べて、冷奴でもいいかと思いました。誰かのためというより、そのほうが楽だったのです。

店員さんがまだ近くにいるうちに

電話を終えた彼が席に戻るのと、彼の唐揚げ定食が運ばれてくるのが同時でした。テーブルには私のスマホとたたんだ上着が出たままで、店員さんはお盆を持ったまま置き場所を探していました。私は店員さんの顔を見ていました。小鉢の間違いに気づいているのかが気になっていたのです。上着をよけたのは彼でした。店員さんはまだ隣の席へ伝票を運んでいました。その距離で、彼は「こういうの普通気づかない?」「ほんとそういうとこあるよね」と言い、「気が利かない」と笑いました。付き合い始めた頃からの口癖です。レストランで取り皿を先に出さなかったとき、友人の家で空いたコップを下げなかったとき。彼は人がいるところほど、その言葉を笑って使いました。私はうなずいて、冷奴に醤油をかけました。上着をよけなかったのは私です。それでも、店員さんがこちらを一度見たことだけが、妙に気になりました。

帰り道の1往復

レジで、厨房の脇から研修中の店員さんが出てきて、私の前で頭を下げました。「先ほど、小鉢を間違えてしまって、すみませんでした。そのまま召し上がってくださって、ありがとうございました」。彼は小銭を数える途中で、店員さんと私の顔を順に見ました。私は「いえ、冷奴も好きなので」と答えました。駅までの道で、彼が先に口を開きました。「でも、上着をよけなかったのは事実じゃん」「そうだね」「じゃあ俺、間違ったこと言ってなくない?」。私は歩く速さを変えずに答えました。「間違ってるかどうかじゃなくて、人前で私をそういう人みたいに笑うのが嫌だった」。彼はそれ以上言い返さず、前を向いたまま歩き続けました。冷奴のことを褒めてほしかったわけではありません。上着をよけなかったのも、冷奴をそのまま食べたのも私です。彼が人前で話題にするのは、いつも気づかなかったほうだけでした。

そして...

自販機の前で、彼は足を止めました。水を2本買って、1本を私に差し出しながら、「さっきの、取り消す」と言いました。「取り消すって、何を?」「気が利かないってやつ」。私は水を受け取ってから聞きました。「今日のだけ?」。彼は自分の水のふたを開けかけた手を戻して、しばらく私を見ていました。「今までのも」。そう答えて、彼は水を飲みました。私の1本は、家に着くまで開けないまま手の中で温くなっていました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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