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「今、作業中だから」優先席でパソコンを使う女性。だが、注意されても譲らない姿に、向かいの男性が立ち上がった

  • 2026.9.24
「今、作業中だから」優先席でパソコンを使う女性。だが、注意されても譲らない姿に、向かいの男性が立ち上がった

空いた車内の優先席で開いていたパソコン

四十代の私は、その頃、地方の電車で職場に通っていた。観光客や学生で混む時間を外せば、たいてい座って行ける。

その朝も車内は空いていて、私は二駅先で降りるので、ドアの前に立って外を眺めていた。

ドアのすぐ横の優先席には、若い女性が一人で座っていた。靴を脱いで座席の上であぐらをかき、膝に載せたパソコンのキーを休みなく叩いている。

向かいの優先席では、スーツ姿の会社員の男性が手帳を開いていた。

次の駅で、杖をついた年配の女性が乗ってきた。

女性はドアの横の優先席の前まで来て、手すりをつかんだ。

若い女性は画面から目を離さなかった。私は少し迷ってから、そっと声をかけた。

「すみません、こちらの方が座られます」

「今、作業中だから」

顔も上げず、キーを打つ指も止めないまま、同じ言葉が返ってきた。

年配の女性は困ったように笑い、いいのよと小さく首を振った。

向かいの席で黙って立ち上がった人

言われた言葉が頭の中で繰り返された。

ここで引き下がったら、年配の女性は次の駅まで手すりにつかまって揺られることになる。私は一度息を吸い、声を荒らげないように気をつけて言った。

「優先席はこういう方のための席ですよ」

そのとき、向かいの会社員の男性が手帳を閉じ、黙って立ち上がった。年配の女性の肘にそっと手を添えて、自分の座っていた席のほうへ導いた。

「どうぞ、こちらに」

「まあ、ありがとうございます」

年配の女性が腰を下ろすと、近くに座っていた人たちの視線が、自然と若い女性のほうに集まった。

誰も何も言わなかったが、キーを打つ音だけがやけに大きく聞こえた。

若い女性は口を閉じたまま、パソコンをそっと閉じた。組んでいた足を下ろして靴を履き、背筋を伸ばして座り直した。

次の駅でドアが開くと、若い女性はパソコンを胸に抱えて立ち上がり、何も言わずに隣の車両へ移っていった。

空いた優先席の前で、会社員の男性は何事もなかったようにつり革を握っていた。

年配の女性は、私と男性を交互に見上げて、目じりを下げた。

「ありがとうね。おかげで座れたわ」

「いえ、座っていただけてよかったです」

男性は小さく会釈し、また手帳を開いた。私が降りる駅に着くまで、年配の女性は杖を膝の横に立てかけて、窓の外の景色をのんびり眺めていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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