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「注意するほうも、けっこう気を使うんですよ」定食屋で続いた長電話の翌日、入口に貼られていた一枚

  • 2026.9.25
「注意するほうも、けっこう気を使うんですよ」定食屋で続いた長電話の翌日、入口に貼られていた一枚

隣から聞こえ続けた大きな声

10年ほど前、外回りの途中でよく寄っていた定食屋がありました。カウンターと小上がりだけの小さな店で、昼どきは近所で働く人たちでいつも混んでいました。

その日、空いていたのはカウンターの端から2番目の席だけでした。

隣には60歳くらいの男性が座っていて、料理が来るのを待ちながら携帯電話で話していました。

「いや、それじゃ困るんだって。今日中にやってもらわないと」

店が小さいこともあり、男性の声は店内の奥までよく響いていました。

仕事の電話なのだろうと思い、僕は日替わり定食を注文しました。すぐ終わるだろうと思っていたのですが、男性の電話はなかなか終わりません。

やがて男性の定食が運ばれてきても、片手に電話を持ったままでした。

「だから、さっきも言っただろ」

声は少しずつ大きくなっていきます。

ときどき箸を動かしては、また話す。その状態が10分近く続いていました。

僕の定食も届きましたが、すぐ隣で仕事の話が続いているため、なんとなく落ち着きません。

小上がりにいた家族連れも、声が大きくなるたびにちらりとこちらを見ていました。

女将さんが料理を置いたあと

女将さんも何度か男性のほうを気にしているようでした。

ただ、忙しい昼どきです。注文を取ったり料理を運んだりしていて、すぐに声をかける余裕はなさそうでした。

しばらくすると男性が少し強い口調で言いました。

「だから、それを今確認してくれって言ってるんだよ」

その声に、小上がりにいた子どもまで振り返りました。

そこで女将さんが男性のそばまで来ました。

「お客さん、すみません」

男性は電話を耳に当てたまま、女将さんを見上げました。

「何?」

「お電話、大事なお話だと思うんですけど…声が店の中によく響いてしまっていて」

女将さんは周囲を指すこともなく、申し訳なさそうに続けました。

「長くなりそうでしたら、電話の間だけ外でお願いできますか」

男性は一瞬、納得がいかないような顔をしました。

「もうすぐ終わるから」

「そうですか。すみません、少しだけ声を落としていただけると助かります」

女将さんがそう言うと、男性は周囲を見回しました。

自分の声が思った以上に響いていることに、そのとき初めて気づいたようにも見えました。

「……悪かったね」

男性は電話口に「ちょっと待って」と告げると、携帯電話を持って店の外へ出ていきました。

翌日、入口に増えていた一枚

数分後、男性は戻ってくると、それ以上電話をすることなく定食を食べ終えて店を出ていきました。

女将さんも何事もなかったように仕事へ戻り、僕もようやく落ち着いて昼食を取ることができました。

翌日の昼、また同じ店へ行くと、入口の横に小さな紙が貼られていました。

店内での長時間のお電話は、店の外でお願いします。という短い案内でした。

僕が見ていると、女将さんが苦笑しました。

「昨日みたいなこと、たまにあるんですよ。最初から書いておいたほうがお互い楽かなと思って」

「確かに、そのほうが言いやすいですね」

「注意するほうも、けっこう気を使うんですよ」

そう言うと、女将さんはまた厨房のほうへ戻っていきました。

男性も、周囲を困らせようとして電話をしていたわけではないのでしょう。ただ、電話に集中すると、自分の声がどれほど大きくなっているのか気づきにくいこともあります。

だからこそ、責めるのではなく、今起きていることだけを静かに伝えた女将さんの対応が、今でも印象に残っています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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