1. トップ
  2. エピソード
  3. 「悪いんだけど、1万円貸してくれない?あとで返すから」財布をなくした母。だが、貸したお金が返ってこない私が取った行動とは

「悪いんだけど、1万円貸してくれない?あとで返すから」財布をなくした母。だが、貸したお金が返ってこない私が取った行動とは

  • 2026.9.22

あとで返すから、と言った母

半年ほど前の夕方、仕事帰りに実家へ寄ったときのことです。

玄関では、これから買い物に出るところだった母が、かばんの中を何度も探していました。

「どうしたの?」

「財布が見つからないのよ。さっきから探してるんだけど…」

母は困った顔でかばんをのぞき込み、私を見ました。

「悪いんだけど、1万円貸してくれない?あとで返すから」

「いいけど、見つかったら返してよ」

「もちろん。助かるわ」

私は財布から1万円札を出して渡しました。

その夜、母から電話がありました。財布は台所のいすの上に置いてあったそうです。

「あった、あった。こんなところに置いてたわ」

「よかった。じゃあ、1万円も忘れないでね」

「わかってるって。また今度返すから」

ところが月末に実家へ行っても、母からお金の話はありませんでした。帰り際、私から聞いてみました。

「そういえば、この前の1万円は?」

母は一瞬きょとんとしてから、「あっ」と声を上げました。

「ごめん、すっかり忘れてた。来月には返すから」

しかし次の月も、その次の月も同じでした。

「ほんとごめん。もう少し待って」

「また来月?」

「うん。来月にはちゃんと返すから」

三度目に同じやり取りをしたころには、私も催促するのが嫌になっていました。

1万円は返してほしい。でも、実家へ行くたびにお金の話をするのも気が重い。しばらく私から何も言わずにいるうちに、最初に貸してから半年ほどたっていました。

冷蔵庫に貼られた紙の一枚

次の土曜日、私は実家の台所で母と向かい合いました。

メモ帳を一枚取り、「1万円・来月15日まで」と書いて母の前に置きます。

母は眼鏡をかけ直し、紙を見ました。

「…何これ。そこまで書くの?」

少し不満そうな声でした。

「俺も何回も聞きたくないんだよ。だから、返す日だけ決めよう。それまではもう何も言わないから」

母はしばらく黙っていましたが、もう一度紙に目を落としました。

「15日ね?」

「うん。それで大丈夫?」

「わかった。じゃあ、それまでに返す」

母は紙を冷蔵庫の扉にマグネットで留めました。

「ここなら忘れないでしょ」

その日から、私は一度も催促しませんでした。

翌月15日の夕方、母から「夕飯食べに来ない?」と電話がありました。

実家へ行くと、母は台所の引き出しから白い封筒を出しました。

「はい、これ」

「あ、今日15日か」

「そう。約束したでしょ」

封筒の中には1万円札が一枚入っていました。

「遅くなってごめんね。最初から日にち決めとけばよかったね」

「うん。返ってきたならいいよ」

それ以来、実家でお金の貸し借りをするときは、金額だけでなく返す日も決めるようになりました。曖昧な「あとで」より、そのほうがお互いに気まずくならずに済むとわかったからです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ