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「残ったらもったいない」と大皿の肉をほぼ全部取った男性。もう一度取りに来たとき、コックが伝えた正論

  • 2026.9.22

ローストビーフの前にできた15人の列

去年の秋、夫と小学生の息子を連れて家族旅行に出かけました。泊まったホテルの朝食会場は、朝から観光客でにぎわっていました。

特に人気だったのがローストビーフです。

コックさんが大皿に並べた肉を一皿分ずつ取り分け、客に手渡していました。

台の横には「お一人様二皿まで」と案内があり、15人ほどの列ができていました。

「ママ、あのお肉食べたい」

息子がうれしそうに言いました。

「じゃあ並ぼうか。ちょっと待つけど大丈夫?」

「うん!」

夫には席で待ってもらい、私は息子と列の真ん中あたりに並びました。

しばらくしたときです。60代くらいの男性が列の横を通り、そのまま先頭付近まで歩いていきました。

何か用事があるのかと思って見ていると、男性はローストビーフの台のすぐ横で足を止めました。

ちょうどコックさんが新しい皿を取るために後ろを向いた瞬間、男性は置かれていたトングを手に取り、大皿の肉を自分の皿へ次々と移し始めたのです。

前に並んでいた年配の女性が、驚いた様子で声をかけました。

「あの、すみません。皆さん並んでますよ」

男性は皿を持ったまま振り返りました。

「いや、これ残ってるんだからいいだろ。残ったらもったいないじゃないか」

「でも、後ろの人も待ってますから…」

女性が困ったように言うと、男性は大皿を指しました。

「またすぐ出てくるんだろ?」

そう言いながら、残っていた肉をほとんど自分の皿へ載せてしまいました。

息子が私の手をぎゅっと握りました。

「ママ、お肉なくなっちゃった…」

「大丈夫。きっとまた出してくれるよ」

そう答えたものの、周りからも困ったようなため息が聞こえてきました。

もう一度戻ってきた男性

振り返ったコックさんも、空になった大皿と男性の皿を見て状況に気づいたようでした。

それでも声を荒らげることはなく、まず並んでいる私たちに頭を下げました。

「お待たせして申し訳ありません。すぐ追加をお持ちします」

そして新しい肉を運び、大皿へ並べると、再び一皿ずつ取り分け始めました。

「お待たせしました。順番にお渡ししますね」

ようやく列が動き始めたところへ、先ほどの男性が戻ってきました。山盛りにした皿は席へ置いてきたらしく、今度は空の皿を手にしています。

「あ、新しいの出たんだ。じゃあ、こっちも少しちょうだい」

コックさんは一瞬男性の皿を見てから、落ち着いた声で答えました。

「申し訳ありません。先ほど、すでに二皿分を超える量をお取りになっていますので、追加はご遠慮いただけますか」

男性は少し顔をしかめました。

「でも、さっきのは残ってたやつだよ。これは新しいやつだろ?」

「はい。ただ、ほかのお客様にもお待ちいただいていますので、今回はご遠慮ください」

コックさんは強い口調にはせず、もう一度だけそう伝えました。

男性は何か言いかけましたが、並んでいる人たちのほうをちらりと見ました。

「……じゃあ、もういいよ」

小さくそう言うと、空の皿を持ったまま席へ戻っていきました。

やがて私たちの番になりました。

コックさんが息子へ皿を渡しながら、笑顔で声をかけます。

「お待たせしました。どうぞ」

「ありがとうございます!」

席へ戻ると、夫が不思議そうな顔をしました。

「ずいぶん時間かかったね。何かあった?」

私は椅子に座りながら苦笑しました。

「ちょっとね。『残ったらもったいないだろ』って二回言って、大皿のお肉をほとんど持っていった人がいて」

夫は「それは困るな……」と眉を上げました。

隣では息子がローストビーフをひと口食べ、「これ、おいしい!」とうれしそうに笑っています。

少し騒がしい朝になりましたが、その後は何事もなかったように、ローストビーフの列も一人ずつ静かに進んでいきました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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