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「あ、いた。探したよ」休憩室に入ってきた先輩。だが、続く一言に思わず手が止まった理由

  • 2026.9.22
「あ、いた。探したよ」休憩室に入ってきた先輩。だが、続く一言に思わず手が止まった理由

仕事を教えてくれた先輩

30代でスーパーの品出しのアルバイトを始めたとき、最初に仕事を教えてくれたのは、少し年上の男性の先輩だった。

棚の並べ方も台車の押し方も、分からないことを聞けば嫌な顔ひとつせず教えてくれた。

「そこ、最初は分かりにくいよね。大丈夫、もう一回やってみようか」

そんなふうに声をかけてくれるので、僕も最初は頼りになる人だと思っていた。

何度かシフトが一緒になるうちに、仕事以外のことも聞かれるようになった。

「休みの日って、何してるの?」

「ほとんど家ですね。出かけるのも面倒で」

本当は私生活についてあまり話したくなかったので、笑いながら当たり障りのない返事をした。

「へえ、そうなんだ。意外だな」

先輩もそれ以上は聞かず、その日はそのまま仕事に戻った。

翌週の月曜日、バックヤードで段ボールを畳んでいると、先輩が隣にしゃがみこんだ。

「そういえばさ、日曜日は駅の北側に買い物に行ってたでしょ」

一瞬、手が止まった。

「え…?」

「俺も近くにいたんだよね。見かけた気がして」

「ああ……そうなんですね。偶然ですね」

そう答えながらも、少し引っかかった。

確かに日曜日、僕は駅の北側へ買い物に出ていた。ただ、先輩には「休みの日は家にいる」としか話していない。

先輩は僕の反応を気にする様子もなく、「びっくりした?」と笑い、次の段ボールに手を伸ばした。

何気ない質問まで気になり始めた

それから、先輩の何気ない言葉が妙に耳に残るようになった。

「先週、三回も残業してたよね。最近忙しい?」

「まあ、人が足りない日があって」

数日後にも、また同じように残業のことを聞かれた。

勤務表には通常のシフトしか載っていない。ただ、同じ職場にいれば残っている姿を見かけることもある。そう考えれば、おかしいとまでは言えなかった。

別の日には、売り場で品出しをしていると声をかけられた。

「水曜ってさ、仕事終わったあと何してるの?」

「別に何も。普通に帰りますけど」

「そっか。いや、ちょっと気になっただけ」

その質問も、日を置いてもう一度された。

ただの世間話かもしれない。それでも、日曜日のことを言い当てられてからは、以前なら気にしなかった質問まで引っかかるようになっていた。

二度目に水曜日の予定を聞かれた日の休憩前、同じシフトのパートの女性が僕に声をかけてきた。

「さっき、先輩と何話してたの?」

「水曜の夜は何してるのって聞かれてました」

「へえ。ずいぶんプライベートなこと聞くのね」

少し迷ったが、以前のことも話してみた。

「この前は、日曜日に駅の北側で買い物してたでしょって言われたんです。僕、行くなんて話してなかったんですけど」

女性は少し驚いた顔をした。

「それは急に言われたらびっくりするね。でも、本当にたまたま見かけただけかもしれないしね」

「そうですよね。僕も考えすぎかなって」

女性は「気になるなら無理に答えなくてもいいんじゃない」とだけ言って、売り場へ戻っていった。

僕も、自分が気にしすぎているだけなのかもしれないと思った。

ひとりで休憩室に入り、奥の椅子に座る。紙コップのお茶に口をつけたところで、ドアが開いた。

入ってきたのは先輩だった。

「あ、いた。探したよ」

思わず紙コップを持つ手が止まった。

「どうしました?」

「午後の品出しの場所、先に伝えておこうと思って。あとでバタバタしそうだから」

先輩はいつもどおり向かいに座り、午後の段取りを丁寧に説明してくれた。

話している内容は、ただの仕事の話だった。

あれから先輩が何かしてきたわけではない。困ったことが起きたわけでもなく、仕事では今も教えてもらうことが多い。僕も同じ店で働き続けている。

あの日のことも、本当に偶然だったのかもしれない。

それでも、休憩室のドアが開くたび、僕は反射的に顔を上げるようになった。

昨日もお茶を飲みかけたところでドアが開き、紙コップを持ったまま、入ってくる人の顔を確かめていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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