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「肩書はあまり好きじゃなくて、私は私」【榮倉奈々インタビュー完全版】10月から12年ぶりの連ドラ主演

  • 2026.9.22

肩書に縛られることなく、目の前のことに感動していたい

12年ぶりとなる連続ドラマ主演。それでも榮倉奈々さんから気負いは感じられなかった。目の前の作品に誠実でありながら、自分を肩書で定義しない軽やかさ。仕事も、家族も、新しい挑戦も、その時々の自分に正直に選び取っていく。
 
ファッション感度の高さにも定評のある榮倉奈々さんのハイエンドな日常着の着こなしとともにインタビューをお送りします。

戻ってきたのではなく、新しい一歩という感覚でした

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「本当にご縁だなと思っていて」
 
開口一番、そう笑う。榮倉さんはこの秋、ドラマ『あにいもうと』で実に12年ぶりに連続ドラマの主演を務める。
 
「家族との時間との兼ね合いもあるので、連ドラはどうしても引き受けるのが難しくて。お話をいただいても、タイミングが合わず見送ることが続いていました」
 
それだけに、縁とタイミングの貴重さは誰よりも知っている。
 
「今年は俳優のお仕事ができたらと思っていた次の日ぐらいに、たまたまドラマのプロデューサーさんからご連絡をいただいたんです。連ドラの主演は12年ぶりなので、私もすっかり大人になって、環境も大きく変化しました。今は、すごく新鮮な気持ちでお芝居をしています。今まで過ごしてきた懐かしい場所に戻るというよりは、新しいことに挑戦している感覚に満ちています」
 
演じるのは、高い志を持ちながらも、過酷な現実の中で少しずつ心をすり減らしていく医師・奈緒。医師としては優秀でありながら、人との距離の取り方にはどこか不器用さを抱える。その人間らしいアンバランスさに、榮倉さんは強く惹かれたという。
 
「奈緒だけではなく、人は誰しも不器用なところを持っていると思うんです。これは得意だけれど、これは苦手、というでこぼこがある。それが人間らしさなんじゃないかなって。奈緒は医師としてはとても優秀だけれど、人との関わり方には少し不器用なところがあるんです。お医者さんを理想化された存在として描くドラマではなく、そういう人間らしさに目を向けているところが、とても素敵だなと思いました」

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重厚な人間ドラマだからこそあえて飛び込んでみたい。その気持ちのほうが勝っていた。
 
「ヘビーな作品だからこそ、四の五の言わず、助走なしで臨んでみようと覚悟を決めました。逃げ場もないし、ごまかしもきかない。本当に、自分で自分を追い込んでいます(笑)」
 
それでも、出演を迷うことはなかった。
 
「出演するかしないかで悩むことはありませんでした。まずは挑戦してみよう、と。その先は脚本とちゃんと向き合っていこうと決めていました」
 
役と自分を重ねることは、あえてしない。目の前の相手を、自分の物差しで決めつけない。その柔らかなまなざしもまた、榮倉さんが長年大切にしてきたスタンスのひとつ。
 
「重ね始めてしまうと、『この人はこんなことはしない』『こんなことは言わない』と、自分の中で人物像を限定してしまう気がするんです。でも、自分と役柄とは違う他者だと思えば、もっと自由に受け入れられる。ずっとそんなスタンスで役と向き合っています」
 
その原点にあるのが、19歳で出会った廣木隆一監督の存在だ。
 
「愛情のある厳しい言葉を、本当にたくさんいただきました。何を言われたかというより、それまで当たり前だと思って疑いもしなかったことが、必ずしも正解ではないと気づかせてもらったことのほうが大きくて。自分が正しいと思っていることも、違う見方があるんだと学びました」

以来、その感覚は、役と向き合うたびに立ち返る原点になっている。ただ、キャリアの初期は、その考えを実践する余裕はなかった。
 
「当時は何本も作品が重なることもあったので、役作りに思うように時間を割くことができないことも。その時々で最善は尽くしてきたつもりですが、しっかりひとつひとつの役と丁寧に向き合えていたのかなと振り返ることもあります。今回はありがたいことに、このドラマに向き合う時間を作れているので、ある意味、逃げ場がないんです」
 
現場に立つ緊張は、20年以上経った今も変わらない。一方で、積み重ねた時間をふと実感する瞬間も増えた。
 
「作品が変われば顔ぶれも一新されるので、毎回初めましてですし、いまだにすごく緊張します。20年以上やっていても、そこは変わらないですね。でも、照明さんや音声さんと『10年ぶりですね』なんて再会があって。そういう機会が少しずつ増えていくと、長く仕事を続けてきたからこそだなと実感します」

今の私には何が見えるのか? ちょっと冒険に出たくなった

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撮影期間中は、家族の協力もあり、仕事に向き合える環境を整えて現場に入る。その潔さが、かえって榮倉さんのしなやかさを際立たせる。とはいえ、心の葛藤が消えたわけではない。
 
「自分のためだけに仕事はできなくなりました。現場では子どものことが頭をよぎるけれど、なるべく考えないように気をつけています。常にせめぎ合いですね。子どもが赤ちゃんから幼児へと変わっていく、かけがえのない時間を一緒に過ごしたい気持ちも、仕事に向き合いたいという思いも、どちらも偽りのない本音です。その間で揺れながら、自分なりの最適解を探し続けています」

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そのせめぎ合いの中で、今回、背中を押したのは、今の自分だからこそ見えるであろう景色への好奇心だ。
 
「今の自分がどんな感じか試してみたい、という気持ちも少しあります。果たして社会復帰できるのかなと思いつつ(笑)。同じ場所に戻っても、見えている世界はきっと違うんだろうなという期待も込めつつ、ちょっと冒険に出たくなりました」
 
また、仕事に限らず、榮倉さんの興味はいつも新しいほうへ向いている。休みの日はジムやマッサージでからだを整えて、子どもと休みが重なれば公園へ出かける。健やかな日々の中で、今一番始めたいと思っているのは、弦楽器の琵琶。
 
「子どものころから三味線を習っていたので、日本の弦楽器に親しみがあるんです。琵琶を教えてくださる先生とのご縁もあって、『ぜひ』というところまでは進んだのですが……。実際に始めるところまではいけなかったので、よきタイミングでできたらいいなと思っています」

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俳優として活躍を続けながら、2023年にはアパレルブランド「newnow」を立ち上げ、CEOにも就任。現在は二児の母でもある。肩書を挙げようと思えばいくつもある。それでも、本人はそれらをひとつひとつ数えることに、あまり興味はないようだ。
 
「肩書……。あまり好きではないかもしれないです。俳優と言われても『そうなのかな?』と思いますし、社長と言われても『そうなのかな?』と戸惑いがあります。私は私ですというのが一番気が楽ですし、心地がよい。ラベリングはしなくていいと思うんです。何にでもなれると思うから、誰だって」
 
最後に、この先も大切にしていきたいことを尋ねてみた。返ってきたのは、シンプルだけど揺るぎない言葉。
 
「目の前のことに、感動していたいですね。その感動はいつか忘れてしまうかもしれないけれど、その瞬間の手触りや心の動きみたいなものを大切にできる人でありたいです」

Profile_榮倉奈々(えいくら・なな)/1988年生まれ、鹿児島県出身。2002年、ファッション誌『SEVENTEEN』の専属モデルとして芸能界入りし、2004年に俳優デビュー。主な出演作に、映画『余命1ヶ月の花嫁』『図書館戦争』シリーズ、ドラマ『Nのために』『東京タラレバ娘』など。2023年にアパレルブランド「newnow(ニューナウ)」を立ち上げ、CEOに就任。10月より、主演を務めるサタデードラマ10『あにいもうと』(テレビ朝日系、毎週土曜夜10:00~10:54)が放送予定。

photograph:YUSUKE YAMATANI[ende] styling:MEGUMI YOSHIDA hair:TOMOKO SATO
make-up:YUMI ENDO[eight peace] model:NANA EIKURA
text:HAZUKI NAGAMINE

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