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「DV加害者に女性みんなで復讐」これって是か否か!? 【吉岡里帆】映画『シャドウワーク』インタビュー

  • 2026.9.20

作家・佐野広実の衝撃作が映画化! 配偶者や恋人、親から暴力を受けた女性たちを匿うシェルター<おうち>が舞台。一見、それぞれが平穏な時間を取り戻すべくひっそり暮らしていると思いきや……お互いのパートナーを持ちまわりで「始末」していた!?
 
ある事件を追うことで<おうち>の存在を知ることになった女性刑事・薫を奈緒さん、DVから逃れて<おうち>にたどり着き、私たちと同じ目線でその謎を目撃する紀子を吉岡里帆さん、のダブル主演! 女性たちによるサバイブクライムサスペンスの名作が2025年9月25日に公開されます。オトナミューズウェブは主演のひとり、吉岡里帆さんにお話を聞かせていただく機会を得ました。聞き手の映画ライター・よしひろまさみちさんは創刊からオトナミューズのカルチャーコーナーを担当。実は吉岡さんと10数年来のお仕事でのつながりがあり……インタビュー後半では貴重なお話も聞かせていただきました。映画ともども、最後までじっくりお楽しみください♡

『シャドウワーク』
story 夫の暴力から逃れた紀子(吉岡里帆)は、看護師の路子(美保純)に誘われてシェルター<おうち>にたどり着く。昭江(風吹ジュン)が率いるそこでの穏やかな共同生活で自分を取り戻していく紀子は、次第にそこで行われている犯罪の実態を知ることに……。
監督:吉野竜平/出演:吉岡里帆、奈緒、美保純、酒井若菜、ファーストサマーウイカ、佐月絵美、北村匠海、風吹ジュン ほか/配給:ショウゲート/公開:9月25日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
© 佐野広実/講談社 ©2026「シャドウワーク」製作委員会

――DV被害から逃れた女性たちが身を寄せ合い復讐計画を……とは、すごい設定かつ重いテーマですよね。脚本を最初に読んでどう感じました?
 
吉岡 まず女性に限らずですがDVに関する問題はとても重い社会的テーマだと思いますし、女性たちの秘密を抱えたシェルター、という設定がすごく興味深かったです。そこにかなりアグレッシブなエンタメ性も加えており、そのバランスのよさに引き込まれました。それに読み進めていくと、3段階くらいの多層的な構造になっていて、いい意味で予想を裏切られていくんです。これが映画になったらどんなふうになるんだろう、と思いました。
 
――演じられた紀子も夫のDV被害から逃れて<おうち>にたどりつきます。役作りに関してはどのようなプロセスを?
 
吉岡 監督と話し合いながら作っていきました。監督は私たち俳優だけでなく、他の部署の方の意見を取り入れながら作っていきたいとおっしゃられてたので、私も率直に感じたことや思ったことを提案するようにしていました。私自身は、紀子を含め、DV被害者の女性たちが「弱い存在」で終わらず、物語の中で変化と成長を遂げていくことで、人として魅力的に輝いていく、ということを念頭に考えました。<おうち>の組織犯罪は倫理的にダメなんですが、そこを清々しく感じていただけるようになればいいんじゃないかと思ったんですよね。

――紀子ってもともとどういう人だったか、考えました?
 
吉岡 最初に監督からオーダーされたことがあったんです。紀子は暴力のありなしに関係なく、社会不適合な部分があって、人とはうまくなじめないし、生活をうまく営むことができないキャラクターだ、と。そこを大事にしてほしい、とうかがいました。キャラクターのプロフィールも監督が用意してくださったのですが、紀子は学生のころから周囲に微妙になじめていなくて、自分を押し殺すことでなんとかやってきた女性。本音で人と向き合えていないから、深い人間関係を構築できていない。だからこそ、同じような傷を抱えている<おうち>の人たちと出会ったことで、初めて人と分かり合う歩み寄りができて、かけがえのない関係性を築くことができる。そんないびつなバックボーンを知れたおかげで、紀子のキャラクターを理解することができました。
 
――復讐のために似た痛みを抱える人たちがタッグを組んで……って、それだけだと薄気味悪いですものね。スパイ小説みたいな。
 
吉岡 そうなんですよ。たしかに気持ち悪さは残ると思うんですけど、彼女たちの正義にフォーカスすることで観た人たちはなぜか「善行」と錯覚しちゃう。それで観た人同士が違和感やその原因について語り合ってくれればいいな、と思います。
 
――役作りで大きな作用をするはずの衣装やメイクに頼れないのも、この作品らしさでしたね。
 
吉岡 原作でもそうなんですが、紀子を含めて逃げてきた人たちはみんなとにかく荷物が少なく、着の身着のままなんです。どうにかしようというやる気も起きないんです。それが裏テーマとしてもあって、新しい服を買いに行ったり美容室で身なりをきれいにしたり、っていう気力がないし、食べものにもこだわりがなくなっていたり、ツメも伸び放題だったりとか……それが自然に見えるようにしていたので、メイクも衣装のパターンも、ほぼなかったんです。

――リサーチはどのようなことを?
 
吉岡 原作小説と監督が事前に当事者の方にインタビューされていたお話をうかがうところから始めました。私自身もそのあとで当事者の方とお話する機会を設けたり、資料を読んでみたり。それで知ったのは、DV被害者自身は悪くないのに、なぜか自分を責めてしまう感情から逃げられない人が多いということ。これが一番印象に残っています。これってDV以外でも当てはまるシーンがありますよね。たとえば、知らない間に自分の意見を言えない雰囲気、思っていることを口にすらできない空気とか。そういうものが続くと、意見や考え自体がなくなってしまう。でもそうじゃないですよね。人は言葉を持っていて、発する権利もあって、思ったことを相手にぶつけていい。その感情を思い起こしてもらえるように、観た人に感じてもらいたいよね、ということは監督ともお話していました。
 
――演じていて辛くなることも多そうですね……。
 
吉岡 オンカメラのときはかなり重々しかったです。とくに暴力シーン。分かりやすく血や傷があればそれほど感じなかったかもしれませんが、心の傷を見せるために、逆に、血をほとんどつけない方針だったんです。だからお芝居とはいえ、振りや悲鳴だけで表現していかないといけなかったぶん、実際には暴力を受けていないはずなのに本当にボコボコにされている圧迫感みたいなものを感じてました。それに、紀子が無気力な状態から<おうち>の人たちに心を次第に開いて、持ちまわりに関わる決心をつけていく変化を出していくのは本当に大変で……。物語の中で出てくる問いかけは、ご覧いただくお客さんにも「これって正しいことなんでしょうか」っていう問いかけにつながっていきますが、倫理的には、間違っているんですよ。でもここまでしないと乗り越えられない、理不尽な暴力って世の中には存在しているだけに、この訴えかけは大事に打ち出していきたいと思って挑んでました。
 
――つら……。そうすると吉岡さん自身にも<おうち>のような拠りどころが必要ですよね。どこかあります?
 
吉岡 マネージャーさんとの帰りの車です(笑)。
 
――え(笑)?
 
吉岡 その日にあったことでちょっと違和感を抱いたことをお話するんですよ。それを共有できる存在なので、私にとっては<おうち>になりましたね。それに<おうち>のメンバーを演じた共演の皆さんとはすごく自然に心を開き合っていました。

――シーンは重くても、オフカメラでは和気あいあい?
 
吉岡 そうです。カットがかかってからはホームって感じでしたし、皆さん話し合いを大事にされる方ばかりだったので、撮影についてだけでなく、物語に出てくる描写などをどう感じているかとか、率直に意見交換できました。皆さん脚本の読み取り方が違うので、違った視点を共有できるのは助かりました。
 
――とくに参考になったことをうかがったのは?
 
吉岡 皆さんそれぞれから勉強させていただきましたが、とくに共演シーンが多かった風吹ジュンさんはありがたかったです。ドシッと構えて、自分が演じる役を一番解釈できているのは自分、ということを教わりました。私がちょっとシーンで迷っていたときにご相談したんですが、「里帆ちゃんはどう思うの?」とまずは聞かれたんです。それで私は自分が考えていることをお話したんですが、「それでいいじゃない」と。私は性格上、自分で導き出した答えが正しいかどうか迷ってしまって、人の意見を取り入れようとするくせがあるんです。が、風吹さんは「あなたがそうしたならそれで大丈夫」とそっと後押ししてくれる方で。こういうふうになりたい、と心から思ってしまいました。

――え、もうすごいキャリアを積んでいる吉岡さんが、まだ迷うこと多いんですか?
 
吉岡 悩みますよ〜(笑)。私が決めたことよりも、人から意見を聞いてそれを集約したほうがいいものになる、って考えがちなんです。これは私の性分なんでしょうね。でも、ときには人を引っ張り、安心してついてきていただくときには、自分の考えをはっきりと伝えてどっしり構えるのも必要だ、と考えられるようになったんです。どっしり構えた風吹さん、ムードメーカーはファーストサマーウイカさん。
 
――ウイカさん、どんなでした?
 
吉岡 圧倒的話術で場を盛り上げてくれるんですよ。演じられた役柄はぜんぜん違うので、オンとオフのギャップがすごい。オフのときに、姉御肌。「本当に難しいことあったらマジ全部言って。私たちでやれること全部やるから!」って引っ張ってくださるんです。その現場で入るスイッチ、私にもください……って思ったくらい。
 
――吉岡さんはオンオフのメリハリとか、心のバランスってどうとってます?
 
吉岡 以前は仕事のことをずっと考えてしまうくせがあったんですが、変わりました。メリハリをあえてつけるために、好きなところに行くときは絶対に仕事を持ち込まない。たとえば映画館とか、お風呂とか。バス用品にこだわって、部屋でくつろげる部屋着にもこだわって。そうしていないと、いつかパンクしちゃうだろうな、と思って意識的に変えてます。そうし始めてからは、以前よりもタフになったな、と思ってます(笑)。

奈緒さん演じる薫の夫、北川晋一役は北村匠海さん。怖過ぎるエリート警察官……!

――ほかに共演者から学んだことは?
 
吉岡 美保純さんには度肝を抜かれました。
 
――自由でした?
 
吉岡 とにかく軽やか。それに、直接お会いになったら絶対にわかっていただけると思うんですけど、とにかくケタ違いに可愛いんですよ! こんな可愛い人、いるの!? って思っちゃったくらい。何をやっていても、軽やかで妖精みたいで。こういう存在感を出せる方は初めて。ぜんぜんまだまだの私ですら、美保さんが妹キャラに見えてくるくらいで、実際「美保さん、そっちじゃないですよ、こっちこっち!」みたいなことが多々。愛され上手ですよねー。憧れます。
 
――え、吉岡さんも現場からは愛されてますよね。しかもこの作品は奈緒さんとW主演だから、単独主演のように座長のプレッシャーを痛み分けできますし。
 
吉岡 いやいや……美保さんの天性の可愛らしさを見て、最強の人類出現した、と思いました(笑)。座長的な責任感は今回はそれほど重くのしかかってこなかったんですが、それは奈緒さんががんばっているのを知っていたからです。ただ、一緒のシーンがほとんどなくて、ほぼ最後のシーンでようやく、で。だから、会えていないときは「今、奈緒ちゃんも別のシーンでがんばってるから、私も!」という気持ちでした。

主演の吉岡里帆さんと奈緒さん。

――じゃあ、奈緒さんとの共演シーンで会えたときは。
 
吉岡 共闘シーンの撮影終了がクランクアップだったんですが,奈緒ちゃんにハグして、泣いちゃいました。普段クランクアップで泣くことなんてないんですけど、ハグした瞬間に涙が出ちゃって。撮影中に会う機会がほとんどなかったけど、別のところでがんばっている奈緒ちゃんがいることを知っていたし、いてくれたことが多分、心強かったんですよね。
 
※編集部注……ここからは、実は旧知の仲である映画ライターよしひろまさみちさんと、吉岡さんとのお久しぶりトークをどうぞ!

吉岡 いやー、嬉しいですー。オトナミューズ、出たかったんですよ!
 
――いやいや……それこそもうそろそろ世代だから、こちらからお願いを。
 
吉岡 なんかオトナミューズって「壁」があるんですよね。ここは選ばれた方が出られる場所、みたいな。
 
――いやいや、今後ともぜひ。
 
編集部 いつからお知り合いだったんです?
 
――もう、干支はひとまわり前ですよ。『カルテット』で吉岡さんが大ブレイクする直前、ある番組でご一緒してまして。
 
吉岡 まだ実家から東京に通っているときに、当時の事務所の先輩だったDAIGOさんと3人で映画番組をやっていたんです。最近は私が司会しているラジオ番組にいらしていただいたり。
 
――ぎゃー……お世話になっております〜〜! だもんで、主演作でインタビューしたかったんです〜!
 
吉岡 そう言ってくださって嬉しいです(笑)。
 
――だって、あの番組のとき、吉岡さんと控室まで一緒だったんですよ。懐かしい……。
 
吉岡 映画のお話はもちろん、そもそもお仕事がぜんぜんなかったときだったから、相談に乗っていただいたり。
 
――当時はそうだったかもしれませんが、今、こうしてやりがいある役を次々チャレンジできているのは、そもそもの才能と実力ですよ〜。ご安心!
 
吉岡 ほんと、30代になってからすごくいいご縁を感じるようになりました。やりがいがある役や、頑張りがいがある仕事や。20代のころは頑張ろうとして頑張ってしまって、まわりから「そんな頑張らなくていいよ」みたいな空気を感じることがあったんですが、そこで温めてきたことがちゃんと実っていっている、っていう実感があります。

――もうね……親戚のおばさんみたいな気分なんです。俳優さんの醍醐味、めちゃ感じますね。それに、いつかやってほしかったシスターフッド映画。この作品って、シスターフッド映画でもあるじゃないですか。
 
吉岡 そうなんですよ。そこも私にとって重要なポイントだったんです。女性が団結して、ここまで女性の関係性にフォーカスできる日本映画って少ないですし。
 
――洋画だと『オーシャンズ8』のようにあっけらかんとできてるんですけどね。
 
吉岡 そうですね。日本映画でも『オーシャンズ8』みたいな作品、いつかやってみたいです。女性だけの詐欺師集団とか。今作も計画的組織犯罪ではあるんですが。
 
――いや、マジやってほしいです。が、今作もラストの不思議なすがすがしさが素晴らしいですけど。あれがあるからエンタメとしてもスッと入ってくる。
 
吉岡 謎のカタルシスありますよね。女性の敵は女性だ、っていう方いらっしゃるじゃないですか。そういう方にこそご覧いただきたいです。女性が連帯することで生まれる独特の清々しさや面白さがあるので。
 
――ほんともっとやってもらいたい、こういうタイプの映画。ちなみにやりたいことってあります?
 
吉岡 映画、テレビ、舞台、それぞれに魅力があって、勉強になるんです。それぞれにそれが好き、という方がいらっしゃるので、オールラウンドに板に立てる俳優になりたい、と思っています。そのための努力はこれからも変わらずにやっていきたい……ですが、英語がね〜。
 
――おっと、国際舞台!
 
吉岡 何度もトライしているんですけど、ぜんぜん身につかなくて。それこそ仕事を思いきって休んで海外で生活しないと私はマスターできない、って痛感してます。
 
――まじめな吉岡さんなので、お仕事で英語劇が入ったら夢中で学びそうですけど。
 
吉岡 うわ……たしかに。でも怖いですね。とにかくあぐらをかかずに努力し続けるのが私のシャドウワーク(笑)。
 
――うまいことを……(笑)。
 
吉岡 根っから長女タイプなので、甘えベタなんですよね……。私にとっての妹的な存在が渡辺えりさんですから。
 
――ちょっと待って。なにそれ。
 
吉岡 えりさんから「同級生みたい」って言われて、そこからずっと仲よしなんです。実際一緒にいるとホッとするんですよね(笑)。

Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA【MAKIURA OFFICE】
Styling_ MAKIKO IWATA
Hair & Make-up_Hitoshi NOBUSAWA
 
衣装クレジット:
ショートジャケット¥154,000、ドレス¥71,500(共にアンナ チョイ/アンナ チョイ クライアントサービス)、ピアス¥20,900、リング¥23,100(共にジュエッテ)、イヤカフ¥13,200、 バングル¥29,700(共にエテ)、シューズはスタイリスト私物

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