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「私は豆にこだわってる店がいいな」350円のブレンドを笑ったママ友。だが、マスターの一言で黙った理由

  • 2026.9.21

保護者会の帰りに寄った喫茶店

子どもが同じクラスだったころ、保護者会で知り合ったママ友がいました。

その日は会が長引き、帰りに何人かで商店街の小さな喫茶店へ寄ることになりました。

木のカウンターと数席のテーブルだけの店で、私たちが座ったのはカウンターに近い席でした。奥では白髪まじりのマスターが一人でコーヒーを淹れていました。

私はメニューを開き、ブレンドを頼むことにしました。

「私はブレンドにしようかな」

すると向かいに座っていたママ友が、私の見ているメニューをのぞき込みました。

「え、350円のコーヒーでいいの?」

少し笑いながら言われ、私は一瞬返事に詰まりました。

「うん。私、ここのブレンド好きだから」

「そうなんだ。私はせっかく飲むなら、豆にこだわってるところがいいな」

そう言って、雑誌などでも見かける焙煎所の名前を口にしました。

「あそこの豆、おいしいんだよ。知らない?」

「名前は聞いたことあるよ」

私が答えると、ママ友はもう一度メニューに目を落としました。

「でも本当に350円のでいいの?せっかくみんなで来たのに」

また笑いながら言われ、今度はさすがに少し居心地が悪くなりました。

隣にいた他のママ友も困ったように笑っただけで、誰もその話を広げませんでした。

「うん、私はこれでいいよ」

そう答えて、私はお冷やのグラスに手を伸ばしました。

マスターがカップを置きながら言ったこと

しばらくすると、マスターが注文した飲み物を運んできました。

私の前にブレンドを置き、ほかのカップも順番にテーブルへ並べていきます。

そして最後のカップを置いたところで、ふと思い出したように口を開きました。

「さっき焙煎所のお話が聞こえたんですけど」

ママ友がマスターを見上げました。

「うちも、そちらから豆を分けてもらってるんですよ」

「え?」

ママ友の顔から笑みが消えました。

「このブレンドもですか?」

「はい。使っていますよ」

マスターはそれだけ答えると、「どうぞごゆっくり」と軽く頭を下げてカウンターへ戻っていきました。

私のカップをちらりと見ました。

「へえ…そうなんだ。知らなかった」

さっきまでの勢いはなくなっていました。

私はブレンドを一口飲みました。値段を笑われたあとだったので少し気まずさは残っていましたが、味はいつもと変わりません。

すると隣のママ友が、自分のカップを口元へ運びながら言いました。

「これ、おいしいね」

「うん。私、この味が好きなんだ」

そう答えると、向かいのママ友もうなずきました。

ママ友は何も言わず、自分の飲み物に口をつけていました。

帰り道、同じ方向だったママ友がぽつりと言いました。

「さっきはちょっとびっくりしたね」

「うん。でも、あの焙煎所の豆だったのは私も知らなかった」

「値段だけじゃ分からないものだね」

「ほんとだね」

二人でそんな話をしながら駅まで歩きました。

高いものや有名なものを選ぶ楽しさもあると思います。ただ、自分が好きで選んだものを値段だけで笑われるのは、やっぱり気持ちのいいものではありません。

それ以来、その喫茶店の前を通るたびに、あの日マスターが何気なく教えてくれた一言を思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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