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「おしっこだけでなく、便まで……」薬を飲んでもトイレが間に合わない72歳女性→主治医に勧められた“予想外の治療法”とは?

  • 2026.11.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。

「薬を飲んでいるのに、トイレが間に合わない」

過活動膀胱の治療を続けていても、思うように症状がよくならない方は少なくありません。年齢のせいだから仕方ない、とあきらめてしまう方もいらっしゃいます。でも、薬以外にも選べる治療があることは、あまり知られていません。

今回は、薬が効きにくい過活動膀胱に悩み、「仙骨神経刺激療法」を受けられた女性のエピソードをご紹介します。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した架空のものです。特定の個人を指すものではありません。

薬を飲んでも、週に何度も漏れてしまう

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Dさん(72歳・女性)は、数年前から過活動膀胱の薬を飲み続けていました。

それでも、急に強い尿意(尿意切迫感)に襲われ、トイレまで間に合わないことが週に何度もあったそうです。

「外出先ではまずトイレの場所を確認して。パッドも手放せませんでした」

さらにDさんを悩ませていたのが、便も同じように我慢できず、漏れてしまうことでした。

「おしっこだけでなく、便まで……。恥ずかしくて、誰にも言えなかったんです」

旅行の誘いも断るようになったDさん。そんな様子を見ていた娘さんは、「お母さん、最近ぜんぜん出かけないね」と心配していたといいます。

「難治性過活動膀胱」とは

過活動膀胱は、膀胱が自分の意思とは関係なく縮んでしまい、急な尿意や頻尿、尿もれが起こる病気です。治療の基本は、水分のとり方やトイレの習慣を見直す行動療法と、膀胱の過剰な動きをおさえる内服薬です。

ただし、薬を12週間以上続けても効果が不十分な場合や、口の渇き・便秘などの副作用で薬を続けられない場合があります。こうした状態を「難治性過活動膀胱」と呼びます。

診断にあたっては、排尿日誌(尿の回数や量、尿もれの有無を記録するもの)で症状を確かめたり、尿検査や残尿測定(排尿後に膀胱に残った尿の量を超音波で測る検査)を行います。膀胱炎や膀胱がん、尿が出しきれていない状態など、ほかの病気が隠れていないかを確認することも大切です。

膀胱の「ペースメーカー」のような治療

主治医から勧められたのは、「仙骨神経刺激療法(せんこつしんけいしげきりょうほう)」でした。

「膀胱や腸の働きを調整している神経に、弱い電気の刺激を送る治療です。実は過活動膀胱だけでなく、便もれ(便失禁)に対しても保険適用が認められている治療なんですよ」

背骨のいちばん下にある仙骨(おしりの上にある平たい骨)のあたりからは、膀胱や腸、肛門の働きをコントロールする神経が出ています。この神経のそばに細い金属のリード(電極)を入れ、心臓のペースメーカーのような刺激装置とつなぎます。装置はおしりの皮膚の下に埋め込みます。神経に一定の刺激を送り続けることで、膀胱や腸への信号のバランスを整え、尿もれや便もれを減らす仕組みです。膀胱を直接どうにかするのではなく、指令を伝える「神経」に働きかける——そこが、薬とは大きく違う点です。

一般的には、まずリードを入れて体の外の装置で1〜2週間ほど試験的に刺激し、効果が確認できた場合に装置を本格的に埋め込みます。効果を事前に確かめてから埋め込みに進めるのも大きなメリットです。治療を行っている医療機関は限られるため、Dさんは専門の病院を紹介されました。

「入院が必要と聞いて、少し迷いました。でも、このまま我慢し続けるのはもう嫌だと思ったんです」

尿もれも便もれも減って、外出が楽しみに

治療後、Dさんの尿もれと便もれは、どちらも大きく減りました。刺激の強さは、医師が決めた範囲の中で、専用のコントローラーを使って自分で調整できます。

「その日の調子に合わせて調整できるので安心です。娘と久しぶりに温泉旅行にも行けました」

装置の電池には寿命があり、使用状況に応じて数年から十数年での交換が必要になることもあります。また、条件付きでMRI検査を受けることは可能ですが、検査前には専用コントローラーで設定を変更するなどの特別な安全確認が欠かせません。他の診療科を受診する際や健診を受けるときは、必ず植込みカード(手帳)を提示するよう注意が必要です。

「しばらくこの治療を続けていこうと思っています」と、明るく話してくださいました。

薬で治らない尿もれも、あきらめないで

過活動膀胱の治療は、薬だけではありません。仙骨神経刺激療法のほかにも、膀胱の筋肉に注射をして過剰な動きをおさえる治療(ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法)などもあります。特に「尿だけでなく便もれにも同時に悩んでいる」という方には、ひとつの装置で両方の改善が期待できる仙骨神経刺激療法が有力な選択肢になります。

薬を続けても症状が残る、副作用で薬が続けられない、便もれもある——そんなときは、主治医に相談してみてください。必要に応じて、専門の医療機関を紹介してもらえます。

「年だから仕方ない」と思っていた毎日も、治療次第で変えられるかもしれません。


執筆・監修:小内友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士 女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。 【資格】医師 / 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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