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高齢者講習「機械が悪い」70歳以上の運転免許更新で言葉を失う受講者も…指導員が現場で見た光景

  • 2026.9.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

70歳以上の運転免許更新では、高齢者講習の中で動体視力や夜間視力、視野を確かめる適性検査が義務づけられています。検査結果を見て、「ここまで見えていなかったのか」と言葉を失う受講者も少なくありません。

中でも見落とされがちなのが、視野(見える範囲)が少しずつ欠けていく「緑内障」(りょくないしょう)。もう一つ、加齢とともに進む夜間視力の低下も見逃せません。

本記事では、指導員が現場で見る見え方の変化と事故のリスク、視力の低下に伴う免許継続・返納を見極めるポイントを紹介します。

「ここまで見えていなかったのか」と驚く受講者

高齢者講習の適性検査には、動く対象を見分ける「動体視力」や、暗い場所での見え方を測る「夜間視力」があります。見える範囲を調べる「視野検査」も、その一つ。普段の生活では気づきにくい視覚の変化が、数値となって突きつけられます。

「若い頃と変わらないつもりだった」と、結果にショックを受ける受講者も珍しくありません。しかし、こうした変化には、自分では気づけないことも少なくありません。

緑内障 自覚のないまま視野が欠けていく病気

緑内障は、眼圧の上昇などによって視神経がダメージを受け、視野が少しずつ欠けていく病気です。2023年発表の全国調査(岡山大学など、2019年度実施)では、緑内障が視覚障害の原因疾患の40.7%を占め、第1位。40歳以上でみると、緑内障の発症はおよそ20人に1人というデータがあります。

症状が進んでも自覚しにくいのが緑内障の厄介な点で、理由は主に二つです。一つは、健康なほうの目が視野の欠けをカバーしてしまうこと。もう一つは、欠けた部分の景色を脳が補正してしまうことです。

視野は、中心よりも周辺から欠けていくケースが多く、運転中に大きな危険につながる可能性が出てきます。
車線変更の際、視野の欠けた部分に隣の車が入り込んでいると、直前までその動きに気づけません。交差点で横から近づく歩行者や自転車も、同様に見落としやすいものです。

実際に視野検査で極端に視野が狭い受講者に出会い、聞いてみると緑内障を患い眼科に通院しているという事例もありました。

夜間視力の低下 眩しさと暗闇に弱くなる目

視野の変化に加えて進むのが、加齢による夜間視力の低下です。暗い場所に目が慣れる「暗順応」のスピードが遅くなり、夜間は視認性が大きく低下します。私自身が夜間視力を計測してみても、やはり数値の低下を実感するほど。

高齢者講習で測ると、驚く受講者も少なくありません。機械や測り方が悪いと言い出す方もいるほど。そんな時は「急に暗い部屋などへ入ったとき、目が慣れるまでの時間が若い頃と比べて遅くなっていませんか?」と尋ねてみます。すると、納得していただける方が多いです。

自分の車と対向車のライトが交錯した先で起きるのが、歩行者の姿が一瞬消える「蒸発現象」。加齢とともに、まぶしさへの耐性も落ちていきます。

「照明のない道のカーブが分かりづらい」
「突然、目の前に歩行者が現れた」

若い頃と同じ感覚で夜間走行を続けていると、このような危険な場面に遭遇するかもしれません。

見えにくさは危険信号 相談と選択肢を

「夜間やトンネル内が極端に見えにくくなった」と感じたときが、危険信号。「以前は気づけていた横からの飛び出しに、ヒヤッとする場面が増えた」という経験も相談すべき合図です。

講習を実施していて、心配な方には夜の運転を控えることや、夜間視力を補う眼鏡の使用を勧めることもあります。眼科での定期検診も欠かせません。症状によっては、家族や眼科医と相談したうえで、早期の免許返納を検討する選択肢もあるでしょう。

返納をためらう理由として多いのが、身分証明書として使えなくなるという不安。ただし、ご安心ください。返納から5年以内に申請すれば「運転経歴証明書」の交付を受けられます。これは身分証明書として運転免許証と同等に使える証明書で、有効期限はありません。

運転を完全にやめず、条件付きで継続する方法もあります。自動ブレーキなどを備えた車に限って運転できる「サポートカー限定免許」への切り替えも選択肢です。

視力などの感覚的な部分は、自分ではなかなか気がつきません。ご家族は日常の小さな違和感を見逃さないようにしましょう。「見えているつもり」を過信しないことが、事故を防ぐ第一歩です。


参考:
新たに高度化した高齢者講習の内容(警察庁)
高齢者講習等について(岡山県警察)
視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位は緑内障~高齢者に多く、増加傾向であることが判明~(岡山大学)
日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)の結果について(日本眼科学会雑誌)
加齢による視覚の変化、4つの特徴を知ろう~暗闇が苦手な高齢者~(JAF)
蒸発現象(群馬県警)
運転経歴証明書とは(青森県警察)
サポートカー限定免許について(警察庁)


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。


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