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「79万5000円→109万6700円」直近15年で100万円以下の軽自動車が消えた…?その裏に隠された“意外な事情”

  • 2026.9.30
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

かつて79万5000円から買えた手頃な新車の代名詞、ダイハツのミラ イース。2026年8月の一部改良で、最も手頃なグレードでも109万6700円となり、100万円以下の新車が姿を消しつつあります。なぜ15年間でここまで価格の入口が上がったのでしょうか。

単なる値上げでは片付けられない価格のカラクリと、安全や環境性能を含めた時代の変化を数字とともに紐解きます。

ついに100万円超え?2026年モデルのミラ イースの現在地

2026年8月27日、ダイハツからミラ イースの一部改良モデルが発売されました。今回の改良では、燃費性能の向上や予防安全機能であるスマートアシストの進化など、日々の移動を支えるクルマとしてさらに磨きがかけられています。

そうした機能向上が図られる一方で、筆者が今回の発表で最も驚いたのは価格表の数字でした。新しく設定されたグレード構成のうち、最も手頃なLの2WDモデルの価格が109万6700円になっていたのです。

数年前まで、ベーシックな軽自動車といえば100万円以下で買えることが珍しくありませんでした。日々の足として気軽に購入できる価格帯であることが、こうしたクルマの大きな魅力でもありました。しかし現在、公式に確認できる範囲で主要な低価格軽自動車を見てみると、トヨタのピクシスエポックが109万6700円、スバルのプレオプラスが110万7700円、スズキのアルトが114万2900円となっています。

このように、他の主要モデルも軒並み100万円を超えており、かつて当たり前だった100万円以下で買える軽自動車という選択肢が、実質的に消えつつあるのです。

一気に10万円の値上げ?その裏に隠された意外な事情

では、最近の物価高に乗じて、いきなり10万円も値上げされてしまったのでしょうか。入り口の価格が100万円を超えたと聞くと、軽自動車も随分と高くなってしまったとため息をつきたくなるかもしれません。実はこの価格設定には、少し意外なカラクリが隠されています。

改良前となる2024年モデルの価格表を振り返ってみましょう。当時、最も安かったBというグレードは99万2200円に設定されていました。これに対して今回の最廉価モデルは109万6700円ですので、数字だけを見ると10万4500円も一気に上昇したように見えます。

しかし、今回の改良に伴い、従来設定されていた最廉価グレードのB自体が廃止されました。その結果、ひとつ上のLが最も手頃なグレードとしてスライドしてきた形になります。同じLグレード同士で比較してみると、改良前の価格は102万5200円でした。現在の109万6700円との差額は7万1500円となります。

つまり、入り口の価格が約10万円上がって見える数字の内訳は、Lグレード自体の約7万円の価格上昇と、従来の最廉価グレードがなくなったことによる約3万円の差が合わさったものだと整理できます。単なる大幅な値上げではなく、グレード構成の変更が価格の底上げを強調しているという事情がありました。

15年前の記憶と現実の差

いきなり10万円の値上げではないと分かっても、やはり昔と比べるとずいぶん高くなったと感じる方も多いのではないでしょうか。ここで時計の針を、初代ミラ イースが登場した2011年に戻してみます。

当時、第3のエコカーとして鳴り物入りで登場した初代モデルは、最も手頃なDグレードの価格が79万5000円でした。現在の109万6700円と比較すると、額面上の差は30万1700円となり、割合にして約38%も上昇しています。15年前は80万円を切っていたことを思い出すと、この価格差は非常に大きく感じられるかもしれません。

もちろん、ここで公平に考慮すべきは消費税率の違いです。2011年当時は5%でしたが、現在は10%となっています。当時の税抜価格を現在と同じ10%で計算し直すと約83万3000円相当になりますが、それでも現在の価格とは約26万円の開きがあります。

このことから、消費税率の違いだけでは価格差をすべて説明することは難しく、やはり、車両そのものの価格がしっかりと上がっているのは事実のようです。

約30万円の差額で私たちが手に入れた新しい常識

それでは、この約30万円の差額分、私たちはただ高いクルマを買わされているだけなのでしょうか。その答えを探るためには、クルマの装備がこの15年間でどのように進化してきたのかに目を向ける必要があります。

初代が登場した頃のベーシック軽自動車は、装備を極限まで削ぎ落とすことで圧倒的な低価格を実現していました。しかし現在、私たちが新車に求めるものは当時と大きく異なっています。

たとえば、今回の2026年モデルには、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などを備えた予防安全機能が標準的に搭載されています。さらに、路側逸脱警報機能やふらつき警報が追加され、夜間の歩行者や横断自転車への対応力も強化されました。かつては高級車にしかなかった先進安全技術が、今や一番手頃な軽自動車にも備わっているのです。

環境性能についても同様の進化が見られます。今回の改良では最新エンジンなどの採用により、2WD車で約8%の燃費向上が図られています。ガソリン価格が高止まりする現代において、日々の燃料代を抑える技術は欠かせません。かつての安くするために装備を省いたクルマから、先進の安全技術と低燃費が最初から備わったクルマへと、商品としての前提が大きく異なっていると言えそうです。

変わったのは価格だけではなく新車の最低ライン

このように数字の背景や装備の進化を追っていくと、見えてくるものがあります。

昔は80万円を切る新車が存在し、気軽に乗り換えられる感覚がありました。それが今や100万円を超えることが珍しくなくなった事実は、お財布事情を考えると少し寂しく感じるかもしれません。

しかし、その価格差の内訳を冷静に紐解いていくと、単なる軽自動車の高級化やメーカーの値上げで片付けられる話ではないことが分かります。今回の一部改良で最廉価グレードが廃止され、充実した装備を持つモデルからスタートする構成になったことも、ある意味で象徴的です。快適装備を省いたストイックな仕様よりも、日常的な使い勝手と最新の安全性能をしっかり備えたクルマが、現代の基準として求められているのでしょう。

109万6700円という新しい入り口の価格。それは、安全と環境への配慮が欠かせない現代社会において、私たちが新車に求める最低限の安心のハードルが引き上げられた結果と言えるのかもしれません。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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