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「知りませんでした」100対0のもらい事故なのに“代車費用”が全額出ない…40代女性被害者を救った“意外な選択肢”

  • 2026.9.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「部品が届くまで、3週間ほどかかりそうです」

修理工場からそう連絡が入ったのは、事故の相手方であるBさん(40代・女性)の車が入庫した後のことでした。修理が終わるまでの間は、代車に乗っていればいい。そう考えている人もいるのではないでしょうか。

しかし、保険会社が代車費用を負担できる期間は、修理完了まで無制限に続くわけではありません。たとえ部品が届かないという被害者に責任のない理由であっても、期間によっては難しいケースもあるのです。

今回は、私が損害保険会社で担当した事故のうち、部品待ちで代車の期間を工夫しなければならなかった事例をお話しします。

100:0の事故と「届かない部品」

事故は100:0。契約者のAさん(30代・男性)が加害者側、Bさんは被害者という立場です。私はAさんの担当として、Bさんへの全面賠償対応を進めていました。

修理工場が決まり、Bさんの車は入庫。修理の間の足として、代車も手配を済ませていました。Bさんの車は輸入車で、修理には海外からの部品の取り寄せが必要です。

しかし、部品の到着に遅れが発生。届くまでに3週間かかることになってしまいました。さらに、部品が届いてからも修理そのものに日数がかかります。

工場から見通しを聞いた時点で、私の頭に浮かんだのは代車の期間でした。

部品待ちの3週間が意味するもの

代車の費用は、事故で車が使えない間の損害として、Aさんの対物保険から支払われます。ただし、代車費用が修理完了まで無制限に認められるわけではありません。実際には修理に必要な期間をもとに判断され、私が担当していた当時は20〜30日程度が一つの目安でした。

部品待ちの3週間に修理の日数が加われば、その目安を超えてしまう見通しです。目安を超えた分については、代車費用として認められない可能性がありました。

もちろん、部品の遅れはBさんの責任ではありません。こうしたケースでは、目安を超えた期間の代車費用が裁判で認められた例もあります。延長を求めて話し合うという道も、正当な選択肢の一つです。

ただ、どこまで認められるかは個別の事情で判断されるため、すべての期間が認められるとは限りません。結論が出るまでの間、Bさんは超えた分がどうなるのか分からないまま過ごすことになります。

Bさんにとって、もっと確実な方法はないか。そう考えて、私は電話をかけました。

担当者として伝えた“もう一つの方法”

「一度、代車を返却しませんか」

私の提案に、Bさんはこう答えます。

「え、戻していいんですか?」

代車は、事故車が手元にない間の足を補うものです。事故車を一度Bさんの手元に戻せば、その間の代車は必要ありません。代車をいったん引き上げ、部品が届いて修理を再開するときに改めて手配すれば、部品を待つ3週間には代車費用が発生しません。

ただし、この方法は被害者であるBさんが、修理前の車を一時的に使用するということでもあります。

そこで私は、まずBさんの車が走っても安全かどうかを修理工場に確認してもらいました。見た目には大きな凹みがあるものの、ライト類の破損や鋭利な突起などはないため道路交通法上の整備不良にあたらず、走行に支障はなく、自走できる状態です。損害を広げないためにも使用はできるだけ控えたい一方で、部品が届くまでの間、必要な範囲で使う分には問題ないとのことでした。

Bさんにはその確認結果に加えて、代車の延長を求めて話し合う方法もあることを説明しました。どちらを選ぶかは、Bさん自身で決めてよいこともお伝えしています。

「被害にあったうえに、部品の到着が遅れたことについてもBさんに落ち度がないのは重々承知しているのですが、いかがでしょうか」

私は説明をしたうえで、Bさんにそう言いました。

「普段から頻繁に車を使用しているわけではありませんし、部品が届くまでは自分の車を少し使う程度で大丈夫です」

私の説明を聞いたBさんはそう答えて、続けました。

「より確実に支払ってもらえる方が、私にとってもいいでしょうし」

3週間を外した結果

Bさんの車は一度手元に戻り、代車は引き上げとなりました。部品が届き、修理を再開できるタイミングで再び入庫し、代車も改めて手配しています。

結果として、代車の利用期間は目安の範囲内に収まり、Bさんの持ち出しは発生しませんでした。

「代車費用が支払われない可能性があるのも、そんな方法があるのも知りませんでした」

Bさんは、そう話していました。

延長の話し合いがまとまるかどうかを待つより、走行できる車を一度Bさんの手元に戻し、自己負担の心配をせずに済む方法を選ぶ。車の状態やBさんの使用頻度も踏まえると、このケースにおいては、それがもっともBさんのためになる選択だったと私は考えています。

修理の見通しは早めに確かめておく

今回のように海外からの部品取り寄せが必要な場合、入荷の遅れによって修理期間が延びることがあります。

修理が長引きそうなときは、事故車を一時的に使える状態かどうかを、修理工場や保険会社に相談してみるのも一つの方法です。一時的な使用に問題がなく、保安基準を満たしていて公道走行に法的な問題がない状態であれば、代車をいったん返し、再入庫にあわせて手配し直すことで、部品を待つ間の代車費用を発生させずに済みます。

今回この方法をとれたのは、工場から早い段階で見通しを聞けたからでした。代車の期間が残り少なくなってからでは、車を戻しても効果は小さくなります。

修理の遅れは、自分では止められないこともあります。それでも、遅れを知ったタイミングで動けば、打てる手は残っているかもしれません。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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