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朝、洗面所へ向かった40代男性→鏡を見ると「顔の片側が下がっている…」慌てて受診すると医師から告げられた“恐ろしい病名”

  • 2026.9.25
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こんにちは。周術期管理や救急・全身管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「最近仕事が忙しくて疲れているだけ。週末にしっかり休めば治るだろう」そういってご自身の体の疲れを後回しにしていたJさん(40代男性)。毎日遅くまで働き、多少の体調不良はいつもやり過ごしていました。しかしある朝、洗面所に向かったJさんは鏡を見て驚愕します。

「顔の片側が下がっている…うまく笑顔を作れない。うがいの水も口角からこぼれ落ちてしまう…」激しい不安に襲われました。慌てて受診した結果、顔面神経麻痺(ベル麻痺)と診断されました。次第に改善していますが、怖い思いをしたと振り返ります。

今回は、顔の麻痺を引き起こす「ベル麻痺」のメカニズムについて解説します。

ベル麻痺は耳の奥の「狭い骨のトンネルでの物理的圧迫」

突然顔の半分が動かなくなる「ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)」は、脳の中で起きているのではなく、「耳の奥の神経」で起きています。

【顔面神経が圧迫されるフロー】

  1. ウイルスの再活性化:疲労やストレスで免疫が低下し、神経内に潜伏していたヘルペスウイルスなどが活性化します。
  2. 骨のトンネル内での炎症:耳の奥にある、直径わずか1mmほどの非常に狭い骨のトンネル(顔面神経管)の中で、神経が炎症を起こして腫れ上がります。
  3. 物理的な圧迫と信号の遮断:逃げ場のない硬い骨のトンネルの中で神経が強く締め付けられ、表情を作る筋肉への電気信号が途絶えてしまうのです。

「脳卒中」の不安と「ベル麻痺」の決定的な境界線

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

突然顔が動かなくなれば、「脳卒中ではないか」と激しい不安に襲われるのは当然です。痛みを伴わないことも多いため、「少し休んで様子を見よう」と判断してしまう気持ちも無理のないものです。

脳卒中(中枢性の麻痺)と、ベル麻痺(末梢性の麻痺)を見分けるポイントは、「おでこのシワが寄せられるか」です。
脳の血管のトラブルではおでこのシワ寄せが保たれることが多いのに対し、ベル麻痺は耳の奥で神経そのものが圧迫されるため、麻痺側の「おでこのシワが消え、目も閉じ切らなくなる」のが大きな特徴です。

ただし、顔の麻痺に加えて手足のしびれ・力が入らない、言葉が出にくい、激しいめまいなどを伴う場合は脳卒中などの中枢性疾患が強く疑われますので、ただちに救急受診してください。

そして最も重要なのは、「発症後早期(できれば72時間以内)の治療」です。骨のトンネル内での圧迫を放っておくと神経のダメージが進み、治癒が遅れるだけでなく、顔のこわばりなどの後遺症が残るリスクが高まります。早期にステロイド薬などで神経の腫れを抑えることが、元の笑顔を取り戻すための最大の分岐点なのです。

悪化する前に確認すべき3つのサイン

神経への深刻なダメージや後遺症を防ぐため、ご自身で確認すべき初期サインは以下の3つです。

1. おでこのシワが片側だけ寄らない・片目が閉じ切らない

麻痺した側のおでこの筋肉や、目の周りの筋肉が働かず、洗顔時にシャンプーや水が目にしみるといった症状として気づかれることもあります。

2. うがいや食事のときに口角から水や食べ物がこぼれる

口の周りの筋肉に信号が届かず、口をしっかりと密閉できなくなる症状です。

3. 麻痺の直前や同時に「耳の奥の痛み」や「味覚の違和感」がある

顔面神経が通る耳の奥の炎症や、併走する味覚神経への影響によるサインです。なお、耳の強い痛みや周囲の水疱、聞こえづらさ(難聴)、めまいを伴う場合は「ハント症候群」の可能性があり、より早期かつ専門的な治療が必要となります。

聞こえに不安がある場合にはまず耳鼻科受診の検討を

「疲れているだけだから」と様子を見てしまうのはごく自然なことです。もし気になる症状がある場合は、ぜひ鏡の前でおでこにシワを寄せ、顔の左右差をチェックしてみてください。

異変を感じたら、様子を見ずに72時間以内を目指して耳鼻咽喉科や脳神経内科を受診しましょう。その迅速な対応が、後遺症のリスクを軽減することにつながるかもしれません。


※プライバシー保護のため、実際の症例をもとに一部の設定やエピソードを改変・再構成しています。

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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