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「ハンドルを切らない」は誤解?元MotoGPライダーが解説するプッシングステアの本質|プッシングステアで鋭く曲がる Vol01

  • 2026.6.25

ライディング中にハンドルへ入力するのはNGだと思っていないだろうか。しかし実際には、多くのトップライダーが無意識のうちにハンドルへ入力し、バイクの旋回力を引き出している。今回は中野真矢が、スポーツライディングの重要なテクニックである「プッシングステア」の考え方と、その本質について解説する。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA

取材協力/本田技研工業 0120-086-819

https://www.honda.co.jp/motor/

プッシングステアで鋭く曲がる

これはライダーによって感覚が異なるかもしれませんが、プッシングステア、あるいはさらに発展した旋回中のハンドル入力について解説する前提として知っておいてほしいことがあります。

それは、ハンドルへの入力による舵角の調整は、ごくわずかなレベルで行われているということです。

例えば、肉眼で確認できるほど大きくハンドルにカウンターを当てれば、マシンのバランスは一瞬で崩れ、転倒につながってしまうでしょう。しかし一方で、バイクが自然に保とうとしているバランスをわずかに崩すことが、高い旋回力を生み出すことも事実です。

また、プッシングステアはプロライダーであっても無意識に行っているケースが多く、幼少期からバイクに乗り続けてきた僕自身も同じです。例えるなら、呼吸の仕方を言葉で説明するようなもので、とても伝えるのが難しいテーマです。実際に検証しようとして意識的にハンドル操作を行うと、かえってライディングのリズムが崩れてしまうこともあります。

そのため、スポーツライディングのスキルアップを目指している人も、ステアリングの押し引きだけを過度に意識するのはおすすめできません。

とはいえ、トップライダーの多くが走行中に何らかのハンドル入力を行っているのも事実です。プッシングステアを理解し、適切な入力とは何かを知ることは、ワンランク上のライディングへ進むための大きなヒントになるはずです。

曲がる方のグリップを押すと重心バランスが崩れてバンクする

直進状態で左側のハンドルグリップをわずかに押すと、車体とライダーを合わせた重心位置は、本来の重心三角形の中心から右側へ移動する。すると車体は、そのズレを打ち消そうとするように反対側である左方向へ傾き始める。

このとき重要なのは、ライダーがハンドルを大きく切って曲がっているわけではないということだ。ごく小さな入力によってバランスを崩し、その結果として車体をリーンさせているのである。

さらに入力を緩めると、バイク本来の特性であるセルフステアが働き、前輪は自然に左へ転舵する。こうして車体の傾きと前輪の向きが一致し、安定した旋回状態へと移行していく。

つまりプッシングステアとは、ハンドルで曲がるための操作ではなく、車体を傾けるきっかけを与えるための操作なのである。

セルフステアにするとバイクは直立したがる

セルフステアとは、直進中のバイクが左右どちらかへ傾いた際、その傾いた方向へ前輪が自然に切れ込む現象のことを指す。バイクはこの働きによって旋回を開始し、バランスを保ちながら走行している。

一方で、セルフステアが強く働くと、前輪が進行方向へ戻ろうとする力も発生するため、結果として傾いた車体を起こそうとする力につながる。つまりセルフステアは、旋回を生み出すだけでなく、車体の安定性を維持する重要な役割も担っているのだ。

なお、セルフステアによって発生する舵角は非常に小さく、とくに中高速域では肉眼で確認できないほど微少なケースがほとんどである。

中野真矢のライテクベーシックス
その直後に車体自身が左に転舵させてバランスを保つ
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