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【黒柳徹子】24歳で、名実ともにトップ女優に躍り出た「夏目雅子」の魅力とは

  • 2026.6.16
黒柳徹子さん
©Kazuyoshi Shimomura

私が出会った美しい人

【第49回】女優 夏目雅子さん

最近は、サブスクっていうのかしら? ドラマや映画を観ることが、自宅にいながら、ずいぶん手軽にできるようになりました。10年ぐらい前までは、アメリカのドラマなんかは、本国で放送されて話題になって、日本に来るのは何ヵ月後みたいな感じで、シーズンものをまとめて観るためには、DVDをわざわざレンタル屋さんで借りたりしていたのに。今は世界中の新しいもの、面白いものが観られる世の中になったんだから、技術の進歩ってすごいと思います。NHKのテレビ女優第1号だった私は、若い頃、「テレビは、恒久の平和に貢献する」という話を聞いて、やりがいのある仕事だと胸をワクワクさせました。

新しい作品が次々に配信になることも素晴らしいことですけれど、昔の名作が手軽に家で観られるようになったことも見逃せません。私の若い頃と違って、最近は実写映画でも、ハリウッドのものより、日本の映画のほうが人気だったりするんですってね。今年は「徹子の部屋」が50周年を迎えたので、1月に、話題になった放送回のダイジェスト記事と、全ゲストのリストを掲載した本を出版したんですけど、そのとき「ぜひ載せてください!」とリクエストが多かったのが夏目雅子さんでした。

1982年11月放送の回で、夏目さんは当時24歳。主演をなさった「鬼龍院花子の生涯」が話題になった直後のことだったと思います。私がスタジオのお花を指さして、「ここにいろんな種類のお花があります。あなたもいろんな面をお持ちですね?」と聞くと、「そうかもしれないです。寡黙でしっかりしていて耐える役が多かったけれど、普段は口数が多くて、全然しっかりしていないんです」と。その1年前に甲状腺の病気で入院していたときに他の患者さんたちとおでんパーティをしようとして失敗。別の日にラーメンパーティをしたけれど、看護師さんに見つかってしまい大目玉を頂戴した話をしてくださいました。あとは、蚕(かいこ)の顔のモノマネなんかも(笑)。透き通った肌にピンクの頰、大きな目が表情豊かで、完璧な美人だけれど、その性格は少年のように無邪気でした。

私のよく知る人たちとの共演も多くて、たとえば、私が「お姉ちゃん」と呼んでいた山岡久乃さんは、夏目さんと「野々村病院物語」という医療もののドラマで共演したとき、親しいプロデューサーに、「あなた、夏目雅子にだけ、特注の白衣を着せているわけじゃないでしょうね」って聞いたそうです。「そんなこと、あるわけないでしょう!」とプロデューサーが突っぱねると、山岡さんは、「そうよね。当たり前よね。でもね、そう思ってしまうぐらい素敵なのよ、彼女」って言ったんですって。そのドラマに出ていた津川雅彦さんも宇津井健さんも、「パート2では、自分と夏目雅子との芝居をもっと増やしてほしい」と言ったそうですし、誰もが、「この人のお芝居をもっと観たい」とか「この人と共演したい」と思うような存在だったのでしょうね。

夏目さんは、デビューした当初、たとえば週刊誌などで、「お嬢さん女優」というような呼ばれ方をしていました。高校生のときに、ソフィア・ローレン主演の映画『ひまわり』を観て女優を志し、家族の反対を押し切って、ドラマのオーディションを受けてデビュー。そのとき、そのドラマの撮影で何十回もNGを出してしまったことが、そういうレッテルを貼られることに繋がったみたい。負けず嫌いの夏目さんは、親に自分の仕事を認めてもらうためにも、必死に精進して、『鬼龍院花子の生涯』でブルーリボン賞主演女優賞を受賞します。その授賞式では、「これからもお嬢さん芸で頑張りたいと思います」というコメントを残したりして。CMやドラマや映画に次々に起用されはするけれど、本人の努力や実力を認めてもらえないことが、よっぽど悔しかったんでしょう。自分の力で確固たる評価を勝ち取ったなんて、本当に強くて逞しい女性なのです。

それなのに。弱冠24歳で、名実ともにトップ女優に躍り出た夏目さんは、2年後に急性骨髄性白血病を患い、7ヵ月の闘病の末、27歳でこの世を去ってしまいます。夏目さんのご遺族は、1993年に抗がん剤治療の副作用に悩む人に無償でかつらを貸与する基金活動「一般財団法人夏目雅子ひまわり基金」を設立されました。才能あふれる女優が、道半ばにして亡くなってしまったことは残念ですが、夏目さんの遺した作品の数々は、今も誰かの心を揺さぶることができています。ご遺族の善意もまた、夏目さんと同じ病気で苦しむ人たちの、心の支えになっているのです。

夏目雅子さん

女優

夏目雅子さん

なつめ・まさこ 1957年東京都生まれ。77年カネボウ化粧品のキャンペーンガールとなり、日焼けした姿で健康的に海岸沿いを走る「Oh!クッキーフェイス」のCMで注目を集める。翌年ドラマ「西遊記」の三蔵法師役で一躍人気女優に。「虹子の冒険」「野々村病院物語」、大河ドラマ「徳川家康」、映画『鬼龍院花子の生涯』『時代屋の女房』『瀬戸内少年野球団』などに出演。85年舞台『愚かな女』を体調不良により途中降板。公演は打ち切られた。急性骨髄性白血病を発症し7ヵ月にわたり闘病。抗がん剤治療の副作用による肺炎を併発し、同年9月、27歳で逝去。

─ 今月の審美言 ─

これからもお嬢さん芸で頑張りたいと思います。

取材・文/菊地陽子 写真提供/時事通信フォト

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