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絶滅した肉食哺乳類「ベアドッグ」の新種化石をスペインで発見

  • 2026.6.16
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

クマのようでもあり、イヌのようでもある――そんな不思議な通称を持つ絶滅動物が「ベアドッグ」です。

スペイン科学技術最高評議会(CSIC)らの研究チームは、スペイン北東部カタルーニャのエルス・カソッツ化石産地で見つかった化石を調査。

その結果、化石は約1590万年前に生きていた新種のベアドッグと判明。

学名は新たに「パルドキオン・モヤソライ(Paludocyon moyasolai)」と命名されました。

この新種は、アンフィキオン科と呼ばれる絶滅した肉食哺乳類の一群に属します。

アンフィキオン科は「ベアドッグ」と呼ばれ、クマとイヌの中間のような姿をしていましたが、実はどちらの直接の祖先でもありません。

では、今回見つかったP. モヤソライは、どのような動物だったのでしょうか。

研究の詳細は2026年6月6日付で『Journal of Mammalian Evolution』に掲載されています。

目次

  • 歯の形が決め手となった「新種のベアドッグ」
  • 新種発見が示す「ベアドッグ進化」の複雑さ

歯の形が決め手となった「新種のベアドッグ」

P. モヤソライが発見されたエルス・カソッツは、スペイン北東部にある中新世の重要な化石産地です。

この場所では、これまでに5000点以上の大型脊椎動物の化石が回収されており、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を含む多数の動物が確認されています。

年代は約1590万年前と推定されています。

当時のこの地域は、現在とはかなり違っていました。

海岸に近い浅い淡水湖が広がり、周囲には温暖な森や湿地があったと考えられています。

今回、新種記載の中心となった化石は、横方向につぶれているものの保存状態のよい部分的な頭蓋骨です。

実際の頭蓋骨の画像がこちら

そこには、ほぼ完全な上顎の歯列が残っていました。

チームが注目したのは、主に臼歯の形と比率でした。

P. モヤソライでは、上顎の第2大臼歯が第1大臼歯よりも幅広く、第3大臼歯も非常に大きく発達していました。

さらに、第3大臼歯には前方の咬頭(こうとう、噛み合わせの面にある「山」のように突出した部分)がはっきり見られます。

こうした特徴は、同じグループの既知種では確認されておらず、新種と判断する重要な根拠になりました。

つまり今回の発見は、全身骨格から姿を丸ごと復元した研究というより、頭骨と歯、とくに臼歯の形態から分類を見直した研究です。

そのため、P. モヤソライの生活像については慎重に扱う必要があります。

ただ、歯の特徴から見ると、比較的肉食性の強い中型の捕食者だった可能性があります。

同じ産地には、ヒョウほどの大きさの別のアンフィキオン科動物もいたとされますが、P. モヤソライはそれより小さく、より敏捷なハンターだったかもしれません。

小型から中型のシカ類、ウシ科動物、小型のイノシシ類などを狙っていた可能性があります。

新種発見が示す「ベアドッグ進化」の複雑さ

P. モヤソライの重要性は、「新しいベアドッグが見つかった」という点だけではありません。

チームは、この新種をヨーロッパや北米の近縁種と比較し、歯の形質にもとづいて系統解析を実施。

その結果、P. モヤソライは、この属の中でもっとも基盤的、つまり初期に分かれた位置に置かれる可能性が示されました。

これは、約1590万年前のスペインにいたこの新種が、ベアドッグ全体の初期進化を考えるうえで重要な手がかりになることを意味します。

また、北米産の一部のベアドッグ種は、ヨーロッパ産の種よりもP. モヤソライの属に近い位置にあったといいます。

しかし、これら北米産の種の正確な分類はまだ解決されていません。

新種ベアドッグの復元イメージ画像がこちら

チームは、北米の種がヨーロッパの種とは独立して進化した可能性や、アジア経由で広がった可能性、あるいは北米固有の系統から発展した可能性を挙げています。

ただし、この部分はまだ化石記録が十分ではなく、今後の研究を待つ必要があります。

ベアドッグは、名前だけ聞くと「クマとイヌを足したような動物」に思えるかもしれません。

しかし実際には、新生代の生態系で多様な形に進化した、独自の肉食哺乳類のグループでした。

P. モヤソライの小さな歯の違いは、その進化の枝分かれが、私たちの想像以上に複雑だったことを静かに物語っています。

参考文献

New Species of Ancient Bear-Dog Identified in Spain
https://www.sci.news/paleontology/paludocyon-moyasolai-14840.html

元論文

A new species of Paludocyon (Carnivora: Amphicyonidae) from the early Middle Miocene of els Casots (Vallès-Penedès Basin, Barcelona, Spain)
https://doi.org/10.1007/s10914-026-09814-6

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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