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「新種の深海生物」31種をブラジル沖で発見

  • 2026.6.12
Credit: ROV SuBastian / Schmidt Ocean Institute

ブラジル沖の海で、まるで別の惑星から来たような生き物たちが次々と見つかりました。

米シュミット海洋研究所(SOI)の調査船「Falkor (too)」に乗り込んだ国際研究チームは、熱帯南大西洋のブラジル沖で行った2週間の探査により、31種の新たな海洋生物を確認したと報告。

舞台となったのは、太陽光が届く海面近くと海底のあいだに広がる「中層水域」です。

ここは地球上で最大の生息域でありながら、暗く、広大で、調査が難しいため、まだ多くが謎に包まれています。

今回の発見が特に注目されるのは、単に新種が多く見つかったからではありません。

研究チームは、最新の撮影技術やゲノム解析を組み合わせることで、通常なら何年、場合によっては何十年もかかる新種確認を、わずか数日のうちに進めることに成功したのです。

※ 今回、発見された新種生物たちの画像一覧はこちらのURLからご覧いただけます。

目次

  • 新発見されたユニークな生物たち
  • 生き物を傷つけずに調べる技術が、深海研究を変え始めた

新発見されたユニークな生物たち

ブラジル沖の中層水域では、透明なクラゲや粘液の家を作る生物など、31種の新種候補が確認されました。

今回確認された31種には、

・カニやロブスターに近い甲殻類であるヨコエビの一種

・透き通った体をもつ海洋ワーム

・9種のクラゲ

・7種のクダクラゲ

・7種のクシクラゲ

・4種のオタマボヤ

・2種の巨大リザリア

が含まれています。

新たに見つかったクシクラゲの一種/ Credit: ROV SuBastian / Schmidt Ocean Institute

なかでも印象的なのが、クシクラゲやクダクラゲのような、現実離れした姿の生き物たちです。

クシクラゲは、きらめく繊毛を使って泳ぐことで知られています。

クダクラゲは一見すると1匹の生き物のように見えますが、実際には役割の異なる小さな個体が集まってできた群体生物です。

オヨギゴカイ属の新種、水深4000m付近で発見/ Credit: ROV SuBastian / Schmidt Ocean Institute

また、オタマボヤ類はオタマジャクシのような姿をした生き物で、粘液で作った「家」の中に暮らし、流れてくる小さな餌の粒子を捕まえます。

さらにリザリア類は、単細胞生物でありながら肉眼で見えるほど大きいという、常識を揺さぶる存在です。

主任研究者であるスミソニアン国立自然史博物館のカレン・オズボーン博士は、中層水域を「私たちがようやく理解し始めたばかりの驚くべき動物たちに満ちた場所」と表現しています。

実際、チームは予想以上に多様で豊かな生物相を目撃しました。

そこにはガラスイカ(glass squid)や、鮮やかな赤いクラゲを捕食する外洋性のタコも含まれていたといいます。

こうした生物たちの多くは、柔らかくゼラチン質の体をしています。

これは水圧の高い環境で生きるうえでは有利ですが、従来の採集方法では簡単に傷ついたり、形が崩れたりしてしまいます。

つまり中層水域の生物は、そこに行くだけでも難しく、たとえ見つけても、壊さずに調べることが非常に難しい存在だったのです。

生き物を傷つけずに調べる技術が、深海研究を変え始めた

今回の探査では、レーザー撮影、シャドウグラフ、顕微鏡、ゲノム解析を組み合わせ、生物をできるだけ傷つけずに新種確認が進められました。

この課題を乗り越えるため、チームは遠隔操作無人探査機「SuBastian」に複数の先端装置を取り付けました。

そのひとつが、モントレー湾水族館研究所が開発したDeepPIVとEyeRISです。

これらはレーザーを使って海中の生物を非侵襲的にスキャンし、3D画像を作成する装置です。

こうした画像により、研究者たちは生物をすぐに採集しなくても、外見や内部構造を詳しく調べることができました。

新発見されたクダクラゲ目の一種/ Credit: ROV SuBastian / Schmidt Ocean Institute

また、船上では採集された標本のゲノム配列解析も行われました。

画像情報と遺伝情報を組み合わせることで、チームは新種である可能性を素早く確認できたのです。

さらに、チームはバーチャルリアリティ・チャンバーや、微生物用の流体力学的トレッドミルとして機能する「グラビティ・マシン」も使用しました。

これにより、生物の自然な環境に近い条件を再現しながら、行動や生理を調べることが可能になりました。

ガラスイカの幼体も発見、水深779m付近/ Credit: ROV SuBastian / Schmidt Ocean Institute

これまで深海や中層水域の研究では、「知るために採る」ことが避けられない場面が多くありました。

しかし今回の探査は、「できるだけ傷つけず、生きた姿のまま理解する」方向へ、海洋科学が進み始めていることを示しています。

地球最大の生息域である中層水域には、まだ名前すら持たない生き物が数多く残されているはずです。

そしてこれからの海洋探査は、網ですくい上げるだけでなく、レーザーや顕微鏡、VRを使って、海の中の生命をその場で見つめる時代へ進んでいくのかもしれません。

私たちの足元の海には、宇宙よりも身近で、宇宙のように奇妙な世界がまだ広がっているのです。

参考文献

31 Haunting New Deep-Sea Species Discovered Off The Coast of Brazil
https://www.sciencealert.com/31-haunting-new-deep-sea-species-discovered-off-the-coast-of-brazil

31 New Species Discovered in Two Weeks of Deep Sea Exploration
https://sites.google.com/schmidtocean.org/31-new-species-discovered/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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