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賀来賢人「日本の映画では不可能なのか?」疑問を突き詰めるためプロデューサーへ。新作ホラーで徹底した「ルック」への執念

  • 2026.6.5

Netflixドラマ『忍びの家 House of Ninjas』で話題を呼んだ俳優・プロデューサーの賀来賢人さんとデイヴ・ボイル監督が共同設立した映像制作会社、「SIGNAL181」の長編映画第1作となる『Never After Dark/ネバーアフターダーク』。本作のプロデュースだけでなく、出演もしている賀来さんは、亡霊が出る洋館のオーナーの息子役を演じている。

映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』をプロデュース&出演した賀来賢人さん 撮影=久保田司
映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』をプロデュース&出演した賀来賢人さん 撮影=久保田司

インタビューでは、戦慄のホラー作品を制作するうえでこだわった点や、主演の穂志もえかさんについて、さらにプロデューサーとして作品を手がけることに対する熱い思いなども語ってくれた。

プロデューサーとして関わる作品は「絶対にルックはこだわろうと決めていました」

――死者の姉と生者の妹による霊媒師コンビが、山奥の洋館に巣食う凶悪な亡霊に立ち向かう姿を描いたホラー作品の本作。物語を作るうえでこだわった点を教えていただけますか。

【賀来賢人】可能な限り説明を省いて、画だけでストーリーを展開させたかったので、監督と脚本を手がけたデイヴ(・ボイル)とはそこの共通意識を持って打ち合わせを重ねていきました。本作はオリジナルストーリーなので、どこまでお客さんをハラハラドキドキさせられるか、どうやったら最後まで緊張感を途切れさせることなく楽しませられるかということも相談しました。

――恐ろしい映像描写はもちろん、美術、小道具などにもこだわりを感じて、作品の世界観に引き込まれました。

【賀来賢人】映像作品である以上、視覚的効果はすごく重要だと思ったので、衣装やメイク、特殊メイク、美術といったルック(映像の色味や作品全体の雰囲気、世界観)はかなりこだわって作りました。僕はこれまで俳優として活動をしてきた中で、“もっとルックを追求して映画を作ることはできないのだろうか?”と、心のどこかでずっと疑問に感じていたんです。

だから自分がプロデューサーとして関わる作品は、絶対にルックにはこだわろうと決めていました。今回はゼロから衣装を製作し、美術もすべてCGじゃなくアナログで作り、ほかにもいろいろ試したかったことにチャレンジできたので、自分にとって大きな経験になりましたね。

映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』の場面写真 (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』の場面写真 (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
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――これまで疑問に感じたことを、現場で監督やプロデューサーに聞く機会はあったのでしょうか?

【賀来賢人】ありました。監督やプロデューサー、カメラマンに「なぜ、これはこうなんですか?海外の作品ではこういうことができているのに、日本の映画では不可能なんですか?」と、率直に聞くこともあったのですが、一番肝心な“なぜ”の部分はいくら説明してもらっても本当の理由はわからないんです。だけど、今回プロデューサーとしてならそういう疑問を突き詰めていけるんじゃないかと、そういう思いを持って挑んでいました。

撮影=久保田司
撮影=久保田司

――デイヴ・ボイル監督とは『忍びの家 House of Ninjas』でタッグを組まれたあと、映像制作会社「SIGNAL181」を共同で設立されていますが、デイヴさんのどんなところに人間的な魅力を感じていらっしゃいますか?

【賀来賢人】彼の脳みそは一体どうなっているんだ?っていうぐらい、アイデアの宝庫なんです。休みの日も「何に使うかわからないシナリオを書いてる」って教えてくれました(笑)。とにかく“物語”を愛している方なので、そこがデイヴの魅力なんじゃないかなと思います。

――お休みの日にもシナリオを書いているというのは驚きですね。

【賀来賢人】きっと書くこと自体が楽しいんだと思います。そこまで熱意のある人と組めたら、こんな幸せなことはないですよね。『忍びの家 House of Ninjas』のときに、デイヴと「次はこういうのを作りたいね」なんて話していたんです。それを夢物語で終わらせたくなかったので、「パートナーとして一緒に会社をやろうよ」ってアプローチしたらすぐに「いいよ」と返事をくれて。それで会社を設立して企画を進めていきました。

――『忍びの家 House of Ninjas』が配信されたのが2024年で、そこから2年ちょっとでお二人の手がけた映画が公開されるのがすごいですよね。企画を実現していくスピード感に驚きます。

【賀来賢人】でも全部ノープランなんです。今回でいえば、東宝とアメリカの「XYZ Films」という素晴らしい会社のおかげで映画制作が実現することになり、さらに素晴らしいキャストとスタッフが集まってくれたので、自分の運のよさだけは信じています(笑)。

撮影=久保田司
撮影=久保田司

俳優の経験を積んでいくうちに「自然とプロデュース力みたいなものが備わってくる」

――主人公の霊媒師・愛里を演じた穂志もえかさんのお芝居で印象に残っていることを教えていただけますか。

【賀来賢人】穂志さんは毎テイクお芝居が違うのですが、それがすごくよくて、デイヴも彼女のお芝居を見て楽しんでいました。いろいろなテイクがあると、編集時の選択肢が増えるのでとても助かるんです。穂志さんが意図してお芝居を変えているのかどうかはわからないのですが、そのアグレッシブなやり方が、愛里というキャラクターに非常にマッチしていると現場で感じました。穂志さんに愛里を演じていただけて本当によかったです。

――愛里は物語が進むうちにどんどんチャーミングな部分というか、意外な一面を見せていくので、そこがすごく魅力的だなと思いました。

【賀来賢人】本作のジャンルはホラーですが、登場人物が少ないし、“ちゃんと人間を描きたい”という思いが実はあったんです。穂志さんが演じた愛里はとても人間味があるので、ホラーと人間ドラマの両方をバランスよく描けたんじゃないかなと思います。

【写真】霊媒師の一族に生まれた愛里(穂志もえかさん)と霊の存在に懐疑的な群治(賀来賢人さん) (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
【写真】霊媒師の一族に生まれた愛里(穂志もえかさん)と霊の存在に懐疑的な群治(賀来賢人さん) (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
 (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
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――賀来さんが演じた群治の母親で洋館のオーナー・禎子を木村多江さんが演じています。『忍びの家 House of Ninjas』でも親子役で共演されていましたが、改めて木村さんの俳優としての魅力もお聞かせください。

【賀来賢人】多江さんは、これから手がけるであろう全作品に出演してもらいたいと思っているぐらい、すごく信頼している方です。お芝居がすてきなのはもちろんですが、現場を和ませる能力にも長けてらっしゃる。今回の禎子は少し情緒がおかしくて、クセ強なキャラクターではありますが(笑)、それを絶妙な塩梅で演じてらっしゃったのでさすがだなと。普段はチャーミングでユーモアのある方なので、現場のスタッフも含めみんな多江さんに癒やされていました。

 (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
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撮影=久保田司
撮影=久保田司

――プロデューサーとして映像作品を作り、それを世に出すという経験は賀来さんご自身にどのような影響を与えましたか。

【賀来賢人】俳優は、役を与えられた瞬間から脚本に書かれているセリフや心情について深く考えて、それを監督やスタッフさんとディスカッションして自分の中に落とし込んでいく作業をしますが、それと同時に物語全体を俯瞰で見ることも必要だったりするんです。

だから経験を積んでいくうちに、自然とプロデュース力みたいなものが備わってくるというか。ただ、実際に作品をプロデュースするとなると、資金集めから売り込み先までいろいろなことを総合的に考えて、計算してやらなければいけない。大変なこともありますが、今回、僕みたいな素人でも無理せずに映画を完成させることができたので、すごく自信になりました。

――プロデュース業に興味を持っている俳優仲間から相談をされることもあるのでは?

【賀来賢人】それが…業界の友達が数えるぐらいしかいないので、そういう相談をされることもないんです。

――柄本時生さん、落合モトキさん、岡田将生さんは長年のお付き合いがある俳優仲間ですよね?

【賀来賢人】そうそう…でも4人しか……いや、仲野太賀も親しいですね。あと小栗旬さん、山田孝之さんといった先輩とも仲良くさせてもらっていますが、確かにもっといろいろな俳優と作品をプロデュースすることについて語り合えたら楽しいかもしれないですね。

撮影=久保田司
撮影=久保田司

米マネジメント会社との契約後「今まで聞いたこともないような規模の企画が動いたりして驚いています」

撮影=久保田司
撮影=久保田司

――映像作品のプロデュース、映像制作会社設立に続いてロサンゼルスを拠点とする大手エンターテインメント・マネジメント会社「Artists First」と契約されるなど、どんどん新しいことにチャレンジされている印象があります。

【賀来賢人】「Artists First」と契約したのは、海外の作品に出演したいという願望だけではなく、やはりプロデュース業をサポートしてくれるというのが僕にとってすごく大きかったです。アメリカのマネジメント会社のコネクションは本当に広いので、ハリウッドのスタジオとも直接コンタクトを取れたりするんです。だから話が早いですし、今まで聞いたこともないような規模の企画が動いたりして驚いています。このチャンスを活かして、しっかりと実績を作っていきたいですね。

――今後お仕事でご一緒してみたい方はいらっしゃいますか?

【賀来賢人】日本の文化や背景をちゃんと受け入れて尊重してくれる海外の会社やチームと作品を作れたら最高だなと。それは日々思っています。日本を描く場面に関してはこちらに任せてもらって、相手側の方が詳しいことだったらアドバイスをしてもらって、お互いに対等な関係で打ち合わせができるような環境、かつ規模の大きい作品を作ることができたら、また違うフェーズに行けるんじゃないかなと思います。

撮影=久保田司
撮影=久保田司
撮影=久保田司
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――配信作品と劇場公開作品の両方をプロデュースされていて、それぞれのよさを感じてらっしゃるかと思います。今回はホラー作品なので、映画館の大きなスクリーンで鑑賞すると圧倒的な没入体験ができそうですよね。

【賀来賢人】そう思います。没入体験といえば、少し前に映画館で『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を鑑賞したのですが、大きなスクリーンに宇宙空間が映し出されて、その迫力に圧倒されました。最近は映画館に足を運ぶ人が増えているらしいので、それを文化的にどう根付かせるのかが課題ですよね。それはもっと前からいろいろな人たちが考えてらっしゃるんでしょうけど、僕も微力ながらそのお手伝いができたらいいなと思っています。

――最後に、思い出に残っている映画館での鑑賞体験を教えていただけますか。

【賀来賢人】なんの映画だったか覚えていないのですが、劇場でお目当ての映画を観る前の待ち時間にクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』のトレーラーがスクリーンに流れたんです。その映像を観た瞬間に“この映画、絶対に初日に観に行く!”と決めて、ちゃんと公開初日に行って、鑑賞後に拍手をした思い出があります。予告編を観てから映画が始まるまでドキドキワクワクが続いた作品って、あとにも先にも『インセプション』しかなくて。その体験がすごく思い出に残っています。

撮影=久保田司
撮影=久保田司
映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』のメイン写真 (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』のメイン写真 (C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.

取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:小林新

◆ヘアメイク:西岡達也

(C)2025 Signal181, Inc. All rights reserved.

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