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名作ドラマ枠“ブランド復活”の予感…!実話ベース“14年の物語”で若手女優の活躍、唯一無二の【月9】に

  • 2026.6.1

夢を追うことは素晴らしいと言うけれど、それは誰かに強制されず、自分の意志で掴みにいくからこそ価値がある。フジテレビ系で放送中の『サバ缶、宇宙へ行く』は、福井県小浜市のサバ缶を宇宙食にするという壮大な夢を抱いた高校生たちが、何世代にもわたってその夢をリレーのように繋いでいく物語だ。原作は実話をもとにした、14年にも及ぶ長い挑戦の記録である。

その挑戦を静かに見守るのは、北村匠海演じる新米教師・朝野峻一。そして物語の幕を開け、やがて教師として戻ってくる菅原奈未を演じる出口夏希。出口をはじめとする若手俳優陣のフレッシュな輝きが、この作品を唯一無二のものにしている。このドラマのクオリティにかつて名作ドラマのブランドとして名をはせた“月9”の復活を感じる視聴者の声もSNSに見受けられる。

※以下、本文には放送内容が含まれます。

「やってみなきゃわからない」から始まった物語

物語は2005年、統廃合の危機に直面する若狭水産高校に朝野が赴任してくるところから始まる。海が好きだからというふんわりとした動機でこの町にやってきた朝野峻一(北村匠海)は、授業を聞かない生徒たちや、もうすぐ廃校になる噂があることでやる気のない生徒や教師に戸惑う。そんなとき、彼は海岸でひとり踊る生徒・菅原奈未(出口夏希)を見かける。

ダンスが好きで東京に行きたいが、実家の仕事を継がなければならないことにジレンマを抱えている奈未に、朝野は「やってみなきゃわからない」と言葉をかける。

地元で誰からも期待されないまま大人になっていく若者の一人だった奈未は、この言葉に背中を押されて地域の課題である大型クラゲからコラーゲンを抽出して豆腐を作ることを思いつく。「期待されない厄介者にだって価値がある。それを証明したかった」という奈未の言葉には実感がこもっている。そこから、高校生たちによる、地元のサバ缶を宇宙食にする挑戦が始まる。
さまざまな困難を乗り越えて一歩ずつその夢の実現に近づいていく生徒たちだが、高校3年間の短い期間では時間が足りない。奈未たちは卒業の時を迎えるが、その想いは次世代の生徒たちに引き継がれ物語は続いていく。

2期生は“宇宙キャラメル”への転換を模索し、東日本大震災を経た3期生は“災害食”としてサバ缶を活用することを思いつくなど、先輩の想いが世代をまたいで紡がれていく。
特徴的なのは、どの世代も最初はやる気のないところから始まることだ。そのたびにまたイチからやり直しかと思えるが、代々受け継がれている“黒ノート”の存在によって、サバ缶を宇宙食にする試みは少しずつ前進していく。先輩たちの実験と挑戦が継承されていくこの構造そのものが、本作の最大の発明と言っていいだろう。

“時の流れ”を実感させる第7話

5月25日に放送された第7話は、これまで以上に時間の流れを強く実感させるエピソードだった。奈未が教師として赴任し、その同級生だった寺尾創亮(黒崎煌代)の妹・瑠夏(伊東蒼)が入学してくるのだ。

物語はこの時点で10年目。まっさきに宇宙サバ缶プロジェクトを再開させた彼女は、海洋科学科から普通科への編入をぼんやりと考えている同級生から「宇宙に飛ばしたからって何の意味があるん?」と問いかけられると、「夢は役に立つか立たんかで見るものじゃない」と答える。
この回答からは、第1話で描かれた、奈未たちが役に立たないクラゲから豆腐を作るプロジェクトを思い出さずにはいられない。兄から受け継いだ意思を持ってサバ缶作りに挑む瑠夏を、教師となった奈未が見守る。時の流れと継承される思いが、見事に重なる構図だ。

北村匠海が体現する“見守る力”

朝野は、宇宙サバ缶への想いは人一倍強いはずなのに、自分から積極的にプロジェクトを推し進めようとはしない。常に生徒たちの自主性を尊重し、迷ったときにだけそっと手を差し伸べる。新米教師として赴任してきた当初の頼りなかったところからの成長もまた物語の大きな軸になっている。北村匠海の柔らかな佇まいが、この“見守る教師”像に説得力を与えている。このドラマの主人公は教師の彼だが、サバ缶プロジェクトの主役は生徒たちであるべきというのが、このドラマをユニークなものにしている。

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出口夏希(C)SANKEI

何世代に渡って登場する若手俳優陣のなかで最も輝いているのは、やはり出口夏希だろう。最初の生徒として、夢を掲げ仲間を引っ張る存在として登場し、そして今度は教師となって戻ってくる。彼女の前向きなエネルギーがこのドラマ全体の推進力になっている。

寺尾役の黒崎煌代も素晴らしい。地元を愛する芯のある好青年で、車いすの妹のことをいつも気にかけ、卒業後もサバ缶への想いを持ち続けながら地元で漁業に従事している。その朴訥とした佇まいが、町に根を張って生きる人間のリアリティを体現している。

そして神木隆之介演じるJAXAの木島の存在も忘れがたい。いくつになっても夢を諦めない姿勢を体現すると同時に、たとえ一度夢破れても別の場所で新たな生きがいを見つけられるということを表現するポジションだ。最新話では自身の夢だった宇宙飛行士の募集再開を知るが、彼はすでに宇宙食の開発にもやりがいを見出し始めていた。彼がこの先どちらを取るのかも物語の大きなポイントになりそうだ。

夢は誰かから手渡され、また誰かへと手渡されていく。役に立つかどうかではなく、挑戦すること自体に意味がある。しかもこれが実話ベースだというのだから、さらに胸が熱くなる。14年に渡る想いのリレーがどう結実するのか、最後まで目が離せない。


出典:月9ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』フジテレビ公式サイトより

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi

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