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慢性疲労症を抱えて亡くなった人を調査ーー見えてきた「4つの共通点」とは

  • 2026.4.24
Credit: canva

「ただの疲れ」と思われがちな症状が、人生そのものを崩してしまうとしたらどうでしょうか。

慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎、Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome:ME/CFS)は、絶えず続く疲労感や倦怠感、体の痛み、思考力の低下、睡眠障害などを引き起こす病気として知られています。

しかしその実態は、長らく十分に理解されてきませんでした。

そんな中、米アイオワ州立大学(ISU)の研究チームは、慢性疲労症を抱えたまま亡くなった505人の追悼記録を分析するという、これまでにない方法で研究を行いました。

その結果、患者たちの人生に共通して現れる「4つのテーマ」が浮かび上がってきたのです。

研究の詳細は2026年4月22日付で学術誌『PLOS One』に掲載されています。

目次

  • 調査から浮かび上がった「4つの共通点」
  • 病気そのもの以上に深刻な「見えない負担」

調査から浮かび上がった「4つの共通点」

研究チームは、National Chronic Fatigue and Immune Dysfunction Syndrome Foundationが公開している追悼ページをもとに、家族や友人が残した文章を分析しました。

これは数値データではなく、「言葉」から実態を探る質的研究です。

その結果、次の4つの共通点が明らかになりました。

1つ目は「制度的な無視と失敗」です。

慢性疲労症の患者たちは、正式な病気としての認知の遅れ、慢性疲労症を研究するための資金不足、制度的な支援の乏しさに直面していました。

障害認定や保険の問題など、社会の仕組みが十分に機能していない様子が浮かび上がっています。

2つ目は「医療現場での無視と失敗」です。

適切な診断が得られない、症状を軽く扱われる、専門的な知識を持つ医師が少ないといった問題が繰り返し語られていました。

患者は医療を受けているにもかかわらず、理解されない状況に置かれていたのです。

3つ目は「社会的孤立」です。

友人関係の喪失や、家族からの理解不足がしばしば記録されていました。

体調の問題で外出や活動が制限される中で、社会とのつながりが徐々に失われていく様子が見えてきます。

そして4つ目は「個人的な負担」です。

慢性的な疲労や痛みだけでなく、経済的な困難や精神的な苦痛が重なり、生活の質が大きく低下していました。

病気そのもの以上に深刻な「見えない負担」

重要なのは、これらの人々が必ずしも慢性疲労症そのものが直接の死因で亡くなったわけではないという点です。

しかし追悼記録には、病気が生活全体に及ぼす影響の大きさが繰り返し描かれていました。

強い疲労によって働けなくなり、収入を失い、社会との接点も減っていく。

その結果、精神的な負担がさらに増していくという連鎖が見えてきます。

研究者は、こうした状況が自殺リスクにも関係している可能性を指摘しています。

実際に追悼記録の中には、絶望感や孤立、痛み、医療機関での不適切な対応などが重なった結果、自ら命を絶ったケースについて言及されていました。

さらに、この病気が長年「生物学的な疾患ではない」と誤解されてきた歴史も、問題を深刻化させてきました。

症状が心の問題として扱われることで、適切な治療や支援につながらなかったのです。

現在では、慢性疲労症が脳や身体に明確な影響を与える生物学的疾患であることが示されています。

しかし、研究資金や医療体制は依然として不十分であり、患者数や負担の大きさに見合っていないと指摘されています。

見えてきたのは「病気」ではなく「構造」の問題

今回の研究が明らかにしたのは、単なる病気の実態ではありません。

患者たちの人生に共通していたのは、症状そのものに加えて、社会や医療、制度の中で十分に支えられなかったという現実です。

つまり、慢性疲労症の問題は「体の中」だけで完結するものではなく、「社会の中」で生まれ、増幅されているとも言えます。

追悼の言葉から浮かび上がった4つの共通点は、この病気をどう理解し、どう支えるべきかを問いかけています。

見えにくい病気だからこそ、見ようとする姿勢が求められているのかもしれません。

参考文献

500 People Who Died With Chronic Fatigue Syndrome Shared 4 Major Life Themes
https://www.sciencealert.com/500-people-who-died-with-chronic-fatigue-syndrome-shared-4-major-life-themes

元論文

Investigating the ME/CFS experience through qualitative analysis of memorial entries
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0343374

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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