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なぜ映画『プラダを着た悪魔』は20年経っても愛され続けるのか。単なる“お仕事映画”を超えた魅力を考察

  • 2026.4.13
Aflo

間もなく待望の続編が公開される『プラダを着た悪魔2』。2006年に公開され世界中で大ヒットしたが、公開から20年経っても多くのファンに愛されている。何度もリピート鑑賞し、その度に勇気と元気をもらっている人も多いはず。さらにこの作品がすごいのはこれだけの年月が経っても色褪せず、新しいファンを獲得していること。そこで今回は、なぜこの作品がここまで多くの人を虜にするのか、その理由を分析してみたい。

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1.甘っちょろさ皆無な状況に全女子が共感

この作品のヒロインはジャーナリストを目指すアンディ(アン・ハサウェイ)。あらすじは、幸運なことに世界的なファッション誌『ランウェイ』の編集長、ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタントに採用されるが、おしゃれにまったく興味のないアンディだが日々奮闘する中で、仕事の面白さに目覚めていくというストーリー。これだけなら単なる夢物語、楽しいサクセスもので終わってしまうけれど、アンディの置かれた環境はとにかく過酷。編集部の仕事はなかなかブラックなのである。

ミランダはプライベートなことまでアンディに頼むパワハラ系ボスだし、先輩のエミリー(エミリー・ブラント)も意地悪。それまでのラブコメ映画のヒロインにありがちな、ちょろっと仕事をして、残りの時間は恋に悩んでいるような甘っちょろい境遇ではない。散々こき使われ、24時間上司に振り回される様子に、働く女子の多くが深く共感した。

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2.本物のおしゃれが持つ力を教えてくれる

ファッション誌の編集部に、おばあちゃんが着ているようなケーブルニットのセーターで出勤してしまうアンディはどちらかというとダサい女の子。その彼女がエディターのナイジェル(スタンリー・トゥッチ)の助けを借りてどんどん垢抜けていく。生まれ変わった彼女を象徴するブランドは「シャネル」。この誰もが認めるハイブランドのツイードのジャケットにブーツという姿でオフィスに入ってきた彼女の姿は、先輩のエミリーも息を飲むほど生き生きと輝いている。

「シャネル」はご存知の通り1909年に誕生したブランド。古い価値観を打ち壊しつつ、新たな女性像を作り出してきた歴史を持つ。ちなみにそれまで長年、文字通り女性を締め付けてきたコルセットを使うのをやめたのもシャネルである。つまり自由な女性、新しい女性のためのブランドなのである。

そのブランドを着たアンディは、最初に編集部にやってきたときのどことなくオドオドとした彼女とはまったく違う。自信に満ちていて、堂々としている。そのアンディの姿にファッションがくれる力、本物のおしゃれの持つかっこよさを見た人も多いはず。いつか私も着てみたい、そしてアンディみたいに自信に満ちた女性になりたいと思った人も少なくないだろう。ファッションはいつの時代も、その人の内面まで変える力を持っている。そんな普遍的なパワーを、華やかさと歴史を併せ持つブランドで表現しているからこそ、この作品は20年経った今もおしゃれなのである。

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3.がむしゃらなあなたを認めてくれる

この作品に出てくる女性は、みんな真面目で真剣。アンディはもちろんジャーナリストになるために日々頑張っているし、エミリーも同様。ミランダのアシスタントとしてパリコレに行くため必死にダイエットしている(それが正しい方法かどうかはさておき)。また恐ろしい上司のミランダも、離婚する羽目になるほどプライベートを犠牲にして仕事に頑張っている。ちなみにこの映画が公開された2006年は、世界的に「ワークライフバランスが大切」という考え方が定着してきた頃。日本ではその翌年に政府が「仕事と生活の両立」を打ち出すようになる。

もちろんワークライフバランスは大切だけれど、ただただ夢に向かってがむしゃらに頑張りたいと思う女性たちがいたのも事実。だからこそパートナーに「ライフ」の部分、つまり家事とか育児とかを担ってほしいと望んだ女性も多い。また突然プライベートを大切にすべきと言われ、それまで仕事に打ち込んできた自分を否定されたような気分になってしまったキャリア女性だっていたはず。そんな女性たちにとって、ひたすら頑張る3人の姿は「こういう生き方もあっていい」と改めて思えるものだった。がむしゃらに頑張る生き方があってもいい。3人の姿は世界中の女性たちにそう示してくれたのである。

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4.恋を選ばない生き方もありだと教えてくれる

アンディは最後、『ランウェイ』の編集部を去ることを決める。でもそれは大学時代に目指していたジャーナリストの道を目指すため。仕事に夢中になっているアンディに不満たらたらだった恋人のネイトとの交際を優先するためではない。今では自分の推し活や仕事を優先し、おひとり様ライフを楽しむ女性はまったく珍しくない。女子同士で推し活を楽しむ生き方だってある。でも2006年当時の状況はちょっと違う。ハリウッド映画の中で、女性はまだまだ恋と仕事の間でどちらを取るかで悩み、「失恋=人生の終わり」といった生き方をさせられていた。

たとえば同じ2006年公開の『ホリデイ』は、失恋がきっかけで外国に旅行に行ってしまう女の子たちの話。また『プラダ〜』の前にドラマ版、後に映画版がヒットした『セックス・アンド・ザ・シティ』も同じようなもの。キャリーはキャリアウーマンという設定だけれど仕事をしているシーンはあまり出てこないし、悩みのメインは恋。そんな恋愛至上主義な体質についていけなくなったり、疑問を感じたり、そこまでいかなくてもちょっとモヤモヤしていた女性たちの心にこの作品はぴったりフィット。恋愛を優先しなくていい、自己実現を楽しんでもいい、そういう生き方を教えてくれた画期的な作品なのである。

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5.人生って笑えるものかもと思わせてくれる

この作品がすごいのはおしゃれ心を刺激し、勇気とやる気をくれるだけではなく、笑わせてくれるところ。たとえばアンディがミランダに『ハリー・ポッター』シリーズの発売前の新刊を手に入れてこいと指示されるシーンがある。『ハリポタ』の無邪気な雰囲気と、ミランダの恐ろしいオーラがアンバランスでくすっと笑ってしまう。ミランダのために走り回っていたエミリーが車にはねられるシーンもコメディタッチである。

もちろんどちらも極めて大変な状況。でもそれをこの作品は面白おかしく見せてくれるのである。それに右往左往するアンディやエミリーを見ているうちに、「人生の悩みって笑えるものなのかも」と思わせてくれるポジティブなパワーも、この作品は兼ね備えているのである。

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6.本当の悪役はミランダではない

ハリウッドを席巻したフェミニズム運動「Me Too」には問題点もあったといわれているけれど、あのムーブメントがあったおかげで女性と女性の連帯が意識され、大切にされるようになったのも事実。女性同士を張り合わせる構図を男性が作り、それによって一部の男性たちが得をしていることを見抜く女性も増えた。それはさておき、この作品は「Me Too」よりもずっと前に、女性を女性と張り合わせないストーリーを作っていた。

たとえばエミリーはアンディにきつく当たるけれど、きちんと彼女の才能を認めている。後任のアシスタントにプレッシャーをかけるとき「埋めるべき穴は大きい」と言っていることからも、アンディの仕事ぶりを評価しているのは明らか。ミランダもアンディに厳しい態度を取り続けていたけれど、編集部を離れる決意をしたアンディには最高の推薦状を用意する。

ライバルであり、厳しい師匠ではあるけれど2人ともアンディの敵ではない。女性同士は競い合いつつも助けあっていけるし、女性は女性の味方になれる。どんなムーブメントよりも早く、この作品はそのことを示してくれた。女性の敵が男性であろうと女性であろうと、そもそも敵がいると考えるだけで殺伐とした気分になるはず。それよりも女性たちがリスペクトし合う映画を見て、ほんのりとではあっても希望を持った方がいい。だからこの作品は日曜日の夜に見るのにぴったりな1本として、女性たちに愛されてきたのではないだろうか。

ちなみにそれでは本当の悪役は誰なのかという問いへの答えは人によって分かれるところ。頑張るアンディを前に「自分を応援してほしい」とゴネる恋人、ネイトが真の悪役だと考えるファンも多い。

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7.音楽を聴くだけで名シーンが思い浮かぶ

この映画の魅力の1つとして忘れてはいけないのはサウンドトラック。マドンナの『Vogue』やアラニス・モリセットの『Crazy』など名曲がたくさん使われているが、多くの人の耳に強烈に焼き付いているのはケイティ・タンストールの『Suddenly I See』ではないだろうか。ケイティのハスキーボイスを聞くだけで、ニューヨークの街を急ぎ足で歩くアンディの姿が目に浮かぶ人も多いはず。さらにあの曲が流れてくると、まるで自分がアンディになったかのような気持ちになる人もいるのではないだろうか。

世界中で愛され、時を超えて多くの人の心を掴む映画作品には、パワフルなサウンドトラックを持つものが多い。たとえばセリーヌ・ディオンの『My Heart Will Go On』を聞けば『タイタニック』のあのシーンが思い浮かぶし、エルヴィス・コステロの『She』を聞けば『ノッティングヒルの恋人』のラストシーンが脳裏をよぎる。『アナと雪の女王』から『アルマゲドン』まで、名作には名曲が欠かせない。『プラダ〜』もその流れを汲む1作なのである。ちなみに『Suddenly I See』はサントラのアルバムを買っても収録されていないので要注意。新作ではどんな素敵なナンバーがアンディやミランダ、エミリーの再会を彩ってくれるのか、公開を楽しみにしたい。

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