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歌舞伎町の夜明けに差し出される、一杯の味噌汁。ホストやキャバ嬢が安らぎを求めて訪れる小さな定食屋【書評】

  • 2026.3.15

【漫画】本編を読む

ネオンの光が煌めく欲望の街・歌舞伎町。多種多様な人々が入り乱れ、夜通し明かりが消えることのない街。ここで朝を迎えるとき、自分ならどんなものが食べたいだろうと考える。

さまざまな選択肢が頭の中に思い浮かぶなか、漫画『29時の朝ごはん~味噌汁屋あさげ~』(佐倉イサミ/KADOKAWA)を読んだあとは、素朴で温かい味噌汁の温もりを欲している自分に気づく。

物語の舞台となるのは、眠らない街と呼ばれている歌舞伎町の片隅で、朝の5時半に開く小さな定食屋「あさげ」。メニューは日替わりの味噌汁と握り飯のみにもかかわらず、若い姉妹が作る味噌汁の美味しそうな匂いに誘われて、安寧を求める人々が次々と店を訪れる。

田舎から上京してきた新人ホスト、オフモード全開のキャバ嬢、修羅場のカップルなど、お店の客層はふつうの街とは少し異なる。そもそも「あさげ」の外観自体も、きらびやかな歌舞伎町にはミスマッチなほどに飾り気がない。

不規則な日常を過ごして食生活が乱れてしまう人も多いこの場所だからこそ、具沢山の味噌汁から栄養をとってほしいという優しさが「あさげ」の料理には込められている。2人が提供する滋味深いお味噌汁の温かさが疲れた心と体に染み渡っていく様子は、登場人物たちのほっとした表情からも見てとれる。

そして、何よりも魅力的に映し出されるのが、お店を切り盛りする姉妹2人と常連客たちの会話の数々だ。適度な距離感で交わされるやりとりは、どこか実家のような安心感がある。穏やかな空気を醸し出す2人の前では、誰もが歌舞伎町での着飾った顔を脱いで、ありのままの自分で寛いでしまう。味噌汁をすすった登場人物たちに感情移入していると、いつの間にか、彼らと同じ空腹感を共有している自分に気づかされる。

本当に歌舞伎町にこんな場所があったなら……。噂が噂を呼び、根強いファンを増やしながら、末長く繁盛するに違いない。

文=ネゴト / ばやし

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