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エンジニアから転身。アシュリン・カンプスが創造する、進化系ニットウェア【若手デザイナー連載】

  • 2026.3.14

アシュリン・カンプスは、一風変わった経歴の持ち主だ。トリニダード島生まれの彼女は、すでにFashion Trust U.S. Award (2023)とCFDA Frazier Family Foundation Empowered Vision Award(2024)を受賞しており、自身のブランドを立ち上げている。しかし、デザイナーになる前は、全く異なる分野でキャリアを積んでいた。

コロンビア大学の機械工学学科で持続可能性を中心に学んだカンプスは、2008年にリーマン・ショックのさなかに卒業。エンジニアとして就職できたものの、昔からクリエイティビティを発揮したいという衝動に駆られてきたため、このころは「漠然とした不安や焦りを感じていた」と笑う。そこで、思い切ってニューヨークファッション工科大学の夜間クラスに入学。その後、ビザの関係でトリニダードに戻り、アシュリン カンプス(AISLING CAMPS)を設立した。

トリニダードでニットウェアデザイナーとして活動し始めたカンプスは、新たな課題の数々に直面した。1年を通して暑い現地では、クラシックなニットウェアを着る習慣がない。また、昔ながらのニットを作るのに必要な素材を入手するのも困難だった。「毎日35℃になるので、ウールやカシミアではなく、リネン、きつく撚られた粗いコットン、かなりドライな質感の糸を買いつけていました」と彼女は説明する。だが、従来とは違う素材を使うことが思わぬ突破口となり、革新的なニットウェアの誕生につながった。その一例が、2026-27年秋冬コレクションに登場した、たっぷりとしたボリュームのチャンキーなデザインや、ロング丈のタンクトップといった、シルエットを自在に操り、体に巻きつけることができるレイヤードピースだ。

クリエイティブな思考と技術的なノウハウが大いに役立ち、素材面などの課題を乗り越えていったカンプス。エンジニアとしての技術も、想像以上に簡単にニットウェア作りに応用できた。「ニットウェアを極めることに、とにかく熱中しました」と彼女は言う。織機のプログラミングはエンジニア時代を彷彿とさせる勝手知ったる作業で、扱う機械は多少違うものの、言語の多くは同じだった。また、機械の仕組みを深く理解していることが、生産の一部をイタリアに移す際に有利に働いた。

現在も製品の20パーセントはカンプスが手作りしている。ニューヨークの高級百貨店バーグドルフ・グッドマンやノードストロム、その他多くのリテーラーで扱われている駆け出しのブランドにとっては相当なことだ。それもあり、カンプスは生産の一部を海外で行うことを通じて、ビジネスの拡大に取り組んできた。1年間イタリアを行き来した彼女は、世界最大規模のニットウェア糸の見本市ピッティ・フィラーティを見学し、イタリア語を学び、工場のリード・プログラマーとの生産まわりのやり取りに必要な言語の理解を深めた。それ以降、ブランドは急成長している。

そして今年に入り、カンプスは満を持してニューヨーク・ファッションウィークでデビューを果たした。初のプレゼンテーションはサロンのような親密な空間で行われ、彼女のニットウェアのビジョンを存分に表現。ミニマリズムが圧倒的な人気を誇るニューヨークで、実用的でありながらファッション性と華やかさを備えた彼女のピースは、新鮮に映った。「ニットといえば、ほとんどの人はクラシックな形やステッチを思い浮かべると思います。私はそのイメージを根底から覆したかったのです」

Text: Alexandra Hildreth Adaptation: Anzu Kawano

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