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駅徒歩4分、築5年、家賃8万円の1Kも「1階が居酒屋」→入居5ヶ月後、30代女性が68万円を失ったワケ

  • 2026.3.3
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

物件探しをしていると、「駅近」「築浅」「相場より安い」という三拍子がそろった部屋に出会うことがあります。

「これは早く決めないと、他の人に取られてしまうかもしれない」

そんな焦りを感じた経験はないでしょうか。

ただ、不動産の世界で“少し安い”物件には、理由があるものです。その理由が「間取り」や「日当たり」ならまだ受け入れられるかもしれません。

しかし、それが「生活環境」に関わるものだった場合、住み始めてから気づいても取り返しがつきません。

今日は、好条件に見えた物件に惹かれて即決した結果、わずか5ヶ月で約68万円を失うことになった30代女性の実例をご紹介します。

昼の内見では見えなかった“夜の顔”

今から10年前、私がまだ新人で、先輩社員のもとで賃貸仲介を担当していた頃の話です。

30代前半の会社員Aさんは、駅徒歩4分、築5年、家賃8万円の1Kを見つけました。周辺相場より月5,000円ほど安い条件です。立地と築年数を考えれば魅力的で、問い合わせも多い物件でした。

「1階が居酒屋なんですよね?」とAさん。

「はい、営業は夜12時までです」と私は説明しました。

内見は平日の昼間。店は営業前で、においも音もありません。建物周辺も静かでした。Aさんは室内を一通り確認し、その場で申し込みを決めました。

しかし、入居後に現実を知ります。

夜12時まで営業というのは、あくまで営業終了時刻という意味でした。閉店後の片付けや清掃は、深夜1時近くまで続きます。

  • ビールケースを積み上げる衝撃
  • 金属製の看板を畳む摩擦音
  • 厨房の洗浄作業の水音や食器のぶつかる音

それらが、天井を通じて想像以上に響いてきます。さらに週末になると、酔客が店前で立ち話を始めます。

「もう一軒行く?」「タクシーまだ来ないな」

そんな会話が深夜帯まで続く光景。Aさんは金曜と土曜のたびに眠れなくなり、徐々に生活リズムが崩れていきました。

においは“想像”ではわからない

問題は音だけではありませんでした。1階の居酒屋から出る排気ダクトのにおいが、上階の換気口を通じて室内に入り込んでいたのです。焼き物や揚げ物の油のにおいは想像以上に強く、時間がたっても室内に残りました。

さらに、建物脇にはゴミの一時保管場所がありました。飲食店の生ゴミも含まれるため、夏場はにおいが強くなりやすく、コバエが発生しやすい環境でした。

Aさんが管理会社に相談すると、次のような説明を受けます。

営業時間は守っていること、そして用途地域(その土地で建てられる建物や営業内容を定めたルール)上も適法であるため、営業を制限することはできないという内容でした。

つまり、違法ではない以上、強制的に改善させることは難しいということです。月5,000円安い理由は、生活のしづらさという形で存在していました。

我慢の末、5ヶ月で退去

Aさんは生活リズムが乱れ、頭痛や倦怠感が増えていきます。それでも、最初のうちは「時間がたてば慣れるかもしれない」と、自分に言い聞かせていたといいます。

しかし、3ヶ月を過ぎても状況は変わらず、5ヶ月目に限界を迎えます。Aさんは退去を決断しました。

退去時にかかった費用は次の通りです。

  • 違約金1ヶ月分:約8万円
  • 引越し費用:約12万円
  • 新居の初期費用:約48万円

合計で約68万円の持ち出しとなりました。月5,000円安い家賃に惹かれて選んだ結果、わずか5ヶ月で家賃8ヶ月以上に相当する金額を失った計算になります。

金銭的な負担だけでなく、積み重なったストレスも決して小さくありませんでした。

安さの裏にあるものを見る

1階にテナントが入っている物件でも、昼営業のカフェや事務所であれば生活への影響が少ない場合もあります。ただし、夜に営業する居酒屋やバーが入る物件は注意が必要です。音やにおい、酔客の滞留といったリスクを抱えている可能性があります。

今回のケースも、事前の確認で防げた可能性がありました。

  • 夜間に物件周辺を訪れ、閉店後の様子まで確認する
  • 建物構造を確認する(木造や軽量鉄骨は音が伝わりやすい)
  • 排気ダクトやゴミ置き場の位置を見る
  • 金曜や土曜の夜に周辺を歩いてみる

家賃が相場より少し安い物件には、必ず理由があります。その差額は、入居後に別のかたちで負担として返ってくることもあります。

駅近や築浅といった条件だけで判断せず、夜の環境や周囲の様子まで確認することが重要です。物件選びは単なる条件比較ではなく、自分の生活を守るための選択です。

目先の安さだけで決めないようにしてください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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