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サハラ砂漠で「新種のスピノサウルス」の化石を発見

  • 2026.2.20
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

灼熱の砂漠の下に、まだ見ぬ怪物が眠っているとしたらどうでしょうか。

中央サハラの内陸部・ニジェールで、これまで100年以上新種が見つかっていなかったスピノサウルス科の新種が発見されました。

その名は「スピノサウルス・ミラビリス(Spinosaurus mirabilis)」

研究を主導したのは米シカゴ大学(University of Chicago)の研究チームで、研究の詳細は2026年2月19日付で学術誌『Science』に掲載されています。

目次

  • 砂漠の奥地で見つかった「刃のトサカ」
  • 完全水生ではなかった?内陸に暮らす「地獄のサギ」

砂漠の奥地で見つかった「刃のトサカ」

物語は2019年、中央サハラの調査から始まります。

研究チームが砂漠から掘り出したのは、巨大で湾曲した骨でした。しかしその正体はすぐには分かりませんでした。

再調査でさらに2つのトサカ骨が見つかり、現地ニジェールの砂漠で太陽光発電を用いて骨の3次元デジタルモデルを作成し、頭骨を仮想的に組み上げたところ、初めて全体像が明らかになります。

それは既知のどのスピノサウルスとも異なる、まったく新しい種の頭部でした。

【発見された新種のスピノサウルスの頭骨復元の画像がこちら

この恐竜の最大の特徴は、三日月刀(シミター)形の巨大な頭頂トサカです。

骨の表面の質感や内部の血管の通り道から、研究者らはこの構造が生前はケラチン(角質)に覆われ、鮮やかな色彩を帯びていた可能性を指摘しています。

つまり、このトサカは単なる骨ではなく、視覚的なディスプレイ構造だった可能性があるのです。

【新種の復元画像がこちら

さらに注目すべきは歯の構造です。

上下の歯が互いにかみ合う「インターロッキング構造」を持ち、下顎の歯が外側に張り出し、上顎の歯の間に入り込む仕組みになっています。

これは滑りやすい魚を逃がさないための適応で、魚食性動物に見られる特徴です。恐竜の中ではスピノサウルス類に特有の進化といえます。

スピノサウルス・ミラビリスは、大型の魚食性捕食者でしたが、その頭部はこれまで知られている近縁種とは明確に異なっていました。

研究者らは、この発見がスピノサウルス科の進化の最終段階を理解するうえで重要だと位置付けています。

完全水生ではなかった?内陸に暮らす「地獄のサギ」

これまでスピノサウルス科の化石は、海岸近くの地層から見つかることが多く、一部の研究者は「完全水生だったのではないか」と考えてきました。

しかし今回の発見地は、当時の海岸線から約1000キロメートルも離れた内陸です。

化石は河川堆積物中から発見され、近くには長い首を持つ植物食恐竜の骨格も保存されていました。

これらは森林に覆われ、川が流れる内陸環境を示唆しています。

チームはこの恐竜を「地獄のサギ」のような存在だったと表現しています。

【新種の復元画像がこちら

頑丈な脚で水深2メートルほどの場所に入り、しかし多くの時間は浅瀬で大型魚を待ち伏せしていたのではないかと考えられています。

つまり、スピノサウルス・ミラビリスは、完全に水中を泳ぎ回る捕食者というよりも、川辺を歩きながら魚を狙う半水生のハンターだった可能性が高いのです。

論文では、スピノサウルス科の進化が段階的に進んだことが示唆されています。

初期には魚食性への適応が始まり、次に沿岸環境で広がり、そして最終的に内陸の河川環境へ進出した段階にこの新種が位置づけられると考えられています。

砂の下にまだ眠る進化の物語

サハラ砂漠は現在こそ乾ききった砂の世界ですが、白亜紀には川が流れ、森林が広がる生態系が存在していました。

その川辺に立ち、空へと湾曲する鮮やかなトサカを掲げながら魚を狙っていた巨大な捕食者。それがスピノサウルス・ミラビリスだったのかもしれません。

100年以上新種が見つからなかったスピノサウルス科に、再び大きな光が当たりました。砂の下には、まだ私たちの想像を超える進化の物語が眠っている可能性があります。

サハラは、過去の世界への巨大なタイムカプセルなのです。

参考文献

Astonishing Spinosaur Unearthed in The Sahara Is Unlike Any Seen Before
https://www.sciencealert.com/astonishing-spinosaur-unearthed-in-the-sahara-is-unlike-any-seen-before

‘Hell-heron’ dinosaur discovered in the central Sahara
https://news.uchicago.edu/story/hell-heron-dinosaur-discovered-central-sahara

元論文

Scimitar-crested Spinosaurus species from the Sahara caps stepwise spinosaurid radiation
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adx5486

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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