1. トップ
  2. 「とんでもない作品」“NHK史上初の快挙”が証明する“並外れたクオリティ”…放送から10年 “評価され続ける”至高ドラマ

「とんでもない作品」“NHK史上初の快挙”が証明する“並外れたクオリティ”…放送から10年 “評価され続ける”至高ドラマ

  • 2026.2.22

歴史に名を刻む偉人たちも、その時代を生きていた頃はきっと私たちと変わらない悩みや葛藤を抱えていたはずです。スランプに苦しみ周囲に文句を言われ、それでもどうにか次の一手を見出そうともがいていた——。NHK制作の時代劇『ちかえもん』は、人間らしい魅力に満ちた文豪の姿を、笑いとぬくもりを織り交ぜながら鮮やかに描き出した名作です。

江戸時代の大文豪・近松門左衛門が代表作『曾根崎心中』を生み出すまでの奮闘を、大阪弁の軽妙な言葉遊びとコメディタッチで描いた本作は、時代劇の枠を超えた新感覚エンターテインメントとして視聴者の心を掴みました。脚本を手がけた藤本有紀さんが紡ぎ出す、誰も知らなかった傑作誕生秘話の結末とはーー。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です 
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

undefined
TV番組のイベントに出席した青木崇高(C)SANKEI

作品名(放送局): ドラマ『ちかえもん』(NHK総合)
放送期間: 2016年1月14日〜3月3日
主な出演者: 青木崇高(万吉 役)、松尾スズキ(近松門左衛門 役)

元禄16年(1703年)、大坂。江戸時代を代表する浄瑠璃作家・近松門左衛門(松尾スズキ)は深刻なスランプに陥っていました。竹本座の座主・竹本義太夫(北村有起哉)からは「当たる筋を書け」と怒られ、母の喜里(富司純子)からは呆れられる日々。筆は一向に進まず、近松は堂島新地の遊郭「天満屋」に入り浸る毎日を送っていました。

そんなある日、近松は「不孝糖」という奇妙な飴を売り歩く渡世人・万吉(青木崇高)と出会います。親孝行が奨励される世の中で、あえて親不孝を勧める万吉。その自由奔放な生き様に振り回されながらも、近松は次第に創作のヒントを得ていくのでした。

万吉は天満屋で支払いができず、そのまま店に残って働く羽目になります。そこで彼は、新しく入った遊女・お初(早見あかり)と、彼女に心を奪われている豪商の道楽息子・平野屋徳兵衛(小池徹平)との恋の行方を間近で見守ることになるのです。しかし、お初には徳兵衛の父への復讐という隠された目的があり、さらに油問屋・黒田屋九平次の陰謀が平野屋を襲います。万吉の奔走により徳兵衛とお初は再会を果たしますがーー。

「完成度が異常に高い」と称されるNHKならではの作品力

放送当時、SNS上では本作の完成度を絶賛する声が相次ぎました。「異常な完成度「完成度が桁違い」「ベストマッチの配役とクオリティの高さ」「とんでもない作品」といった驚きの声が、視聴者から次々と上がったのです。

その完成度の高さは、まず脚本の妙にあります。連続テレビ小説『ちりとてちん』や大河ドラマ『平清盛』で知られる藤本有紀さんが、史実をベースにしつつも大胆なアレンジを加え、「曾根崎心中」がいかにして生まれたのかという知られざる物語を描き上げました。大阪弁の言葉遊びを巧みに使い、テンポよく進むストーリーは、時代劇に馴染みのない視聴者でも引き込まれる面白さ。近松が心の声で現代的な言葉遣いをする、「大阪で生まれた女」などのフォークソングの替え歌を口ずさむ、アニメーションを挿入するなど、従来の時代劇の枠を超えた演出も視聴者を楽しませました。

さらに、人形浄瑠璃の場面には人形遣いの桐竹勘十郎さんらが参加。三味線奏者の竹澤團七さんは、義太夫三味線を創始した竹澤権右衛門に扮して出演しました。

こうした努力が実を結び、本作は第34回向田邦子賞を受賞。NHKの番組としては初の快挙でした。選考委員の池端俊策氏は、今回の審査では『ちかえもん』が群を抜いて面白く、他に匹敵する作品がないほどだったと高く評価しました。また、第71回文化庁芸術祭賞のテレビ・ドラマ部門でも優秀賞を受賞するなど、作品評価は非常に高いものとなりました。

青木崇高の快演が生み出す「万吉」というキャラクター

本作の成功を語る上で欠かせないのが、青木崇高さんが演じた万吉の存在です。「不孝糖」という奇妙な飴を売り歩く渡世人・万吉は、空気を読まず一言多く、思い込みも激しいアホなキャラクター。しかし、その自由奔放な生き様と真っ直ぐな行動力が、スランプに苦しむ近松を動かしていきます。

青木さんは、この万吉というキャラクターに底抜けの明るさと人間味を吹き込みました。近松に才能があることを気づかせ、竹本義太夫を思い止まらせるなど『曾根崎心中』完成のためにあらゆる手で奔走する万吉。SNS上でも「青木さん上手いなぁ」といった声が多数寄せられました。

そして最終回で明かされる万吉の正体と驚きの展開も、視聴者に深い感動を与えました。万吉の姿は、近松の創作の原点であり、失われていた“物語を紡ぐ喜び”そのものだったのです。

視聴者の心を掴んだ豪華キャストと演出の妙

本作のもう一人の主役である近松門左衛門を演じたのは、劇作家・演出家・俳優として多彩な才能を発揮する松尾スズキさんです。歴史に名高い大文豪を、妻に逃げられ、筆が進まず、母に説教される冴えない中年スランプ作家として描くという大胆な設定。松尾さんは、この愛すべきダメ人間ぶりを、ユーモアたっぷりに演じきりました。

SNS上では「松尾スズキさん萌え」といった愛情あふれる声が多数。劇作家としての経験を持つ松尾さんだからこそ、スランプに苦しむ創作者の心情をリアルに表現できたのでしょう。

また、小池徹平さん演じる徳兵衛と早見あかりさん演じるお初の悲恋、北村有起哉さんが演じた竹本義太夫の近松への複雑な思いなど、脇を固める俳優陣の演技も高く評価されました。視聴者からは「脚本もキャストも最高」といった熱い支持が寄せられました。

ドラマ『ちかえもん』は、時代劇という枠を超えて、創作に関わるすべての人々へのエールとなる作品です。スランプに苦しみながらも創作意欲を取り戻していく近松の姿は、「自分も頑張ろう」と思わせてくれます。向田邦子賞、文化庁芸術祭賞という栄誉に輝いた本作は、軽妙な大阪弁、痛快な笑いと深い感動、そして人情喜劇を描き、時代劇の新たな可能性を切り拓きました。多くの視聴者の心に何度も見返したくなる愛すべき名作として残り続けています。


※記事は執筆時点の情報です