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「自分を責める癖」は親の影響?2タイプの完璧主義とインポスター症候群

  • 2026.2.1
Credit:Google Gemini

仕事で成果を上げたり、周囲から高く評価されても、心のどこかで「自分にはそんな実力はない」「たまたま運が良かっただけだ」と感じてしまうことはないでしょうか。

客観的な実績があるにもかかわらず、自分をまるで周囲を欺いている「詐欺師(インポスター)」のように感じ、いつか実力不足が露呈してしまうのではないかと不安に駆られる心の状態は、心理学で「インポスター症候群(またはインポスター現象)」と呼ばれています。

この上手く自分を評価できない感覚に悩んでいる人は意外と多いかも知れませんが、インポスター症候群はどういった背景で起きる心理なのでしょうか?

アメリカ、アイダホ大学(University of Idaho)のコリン・シュー(Colin Xu)氏らの研究チームは、これがいくつかのタイプの完璧主義と関連づいていることを報告しています。

完璧主義はよく聞く言葉ですが、これは一つの心理特性を指す言葉ではなく、これには異なる理由で生じるいくつかのタイプが存在します。

研究によるとインポスター症候群は、硬直的(融通が効かない)なタイプと、自己批判的なタイプの完璧主義と特に関連が強く、これらは主に親の影響が大きいとされているようです。

自分の能力を過小評価してしまう人の背景には、一体何があるのでしょうか?

この研究の詳細は、科学雑誌『Personality and Individual Differences』に掲載され、2025年12月29日付けでオンライン公開されています。

目次

  • 完璧主義に潜む「3つのタイプ」とその形成背景
  • インポスター症候群を動かす「性格のエンジン」

完璧主義に潜む「3つのタイプ」とその形成背景

1978年に心理学者のクランス(Pauline R. Clance)博士らは優秀な実績があるのに「自分の実力ではなく運が良かっただけ」と感じてしまう傾向を発見し、インポスター症候群という概念で報告しました。

インポスターとは詐欺師という意味で、この傾向を持つ人達は、自分には実力がないのに周りを騙して評価されたという感覚があり、いつかそれがバレるのではないかという不安を抱いています。

そしてクランス博士らは、この傾向が強い人ほど、嘘がバレないようにしなければという不安から「なんでも完璧にこなさなければならない」という完璧主義志向が強くなり、その反動として「過剰に準備」をしたり、逆に怖くて動けなくなり「先延ばし」する傾向が出てくると指摘しました。

そのため、インポスター症候群には、同時に完璧主義志向を持つ人が多く、自分は偽物だと感じる不安から逃れるための「防衛策」として機能していると考えられているのです。

しかし、一口に完璧主義と言ってもその内容は一様ではありません。 そこで今回の研究チームは、既存の心理学研究で提唱されている完璧主義を3つのタイプに分類したモデルを用いて、インポスター症候群との関連を分析しました。

この分類の1つ目は、融通が利かないタイプの「硬直的完璧主義(Rigid perfectionism)」です 。

このタイプは、状況に合わせて「今回は8割で十分」などの調整ができず、常に100点を狙い少しでも届かないと失敗だと認識しやすい傾向があります。

既存の研究では、主に親自身が持っている高い基準を子供がそのまま受け継ぐ「モデリング(社会的学習)」によって形成されやすいことが報告されています 。

2つ目は、不安と不信感が根底にある「自己批判的完璧主義(Self-critical perfectionism)」です。

これは単に自分に厳しいだけでなく、ミスへの過度な懸念や、自分の能力に対する絶え間ない疑念を特徴とします。

この背景として先行研究でよく語られるのが、親が「良い結果を出したときだけ子供を褒める」という、条件つき承認(parental conditional regard)との関連です。

成果と引き換えにしか承認が得られない環境では、「失敗すれば自分は価値を失う」「周囲が自分に完璧を求めている」という恐怖を抱きやすくなります

3つ目は、他者にも完璧さを求める「自己愛的完璧主義(Narcissistic perfectionism)」です。

これは「自分は完璧であり、他人も完璧であるべきだ」という特権意識が特徴で、他者にも非現実的に高い基準を求めやすいタイプです。

このタイプについても、先行研究では親の「条件つき承認」との関連が示唆されています。

ただし自己批判的完璧主義のように不安と自己否定へ向かうのではなく、「自分は有能だ」という誇示を通じて自尊心を保とうとする方向に発達したのがこのタイプです。

このように完璧主義には、育った環境や親の態度などの影響によって、「融通が効かず常に完璧を求める」「承認を得るためミスを恐れて完璧を求める」「自分を含め周囲も完璧であるべき」という異なるタイプに分かれて形成されるのです。

今回の研究は、こうした“3つの完璧主義”のうち、どれがインポスター症候群と特に結びつくのかを、データから整理しその背景を探りました。

インポスター症候群を動かす「性格のエンジン」

シュー氏らの調査により、インポスター症候群という「偽物感」が、どの完璧主義のタイプと結びつきやすいのかが検討されました。

統計的な分析の結果、インポスター症候群は「硬直的完璧主義」と「自己批判的完璧主義」の両方と強く関連していることが示されました。

当然ながら、「自己愛的完璧主義」については、インポスター症候群との関連は認められませんでした。

ここで重要なのは、インポスター症候群が単に「自分を偽物だと感じる」だけではなく、成功の受け止め方そのものがねじれやすい点です。

インポスター症候群には、自身の能力に対する偽物感に加えて、成功を過小評価したり、成功を運のせいにしてしまったりする側面が含まれます。

このとき、硬直的完璧主義が強い人は「成功」の判断基準が高くなりやすく、十分な成果を上げても満点以外は不足だと感じやすくなります。

そのため自身への採点が厳しくなり、また減点方式になりやすいため、自身を過小評価しやすくなります。

しかし、インポスター症候群と特に関連が強かったのは自己批判的完璧主義の方です。

このタイプになると、その不足感は単なる反省では終わらず、「ミスをしてはいけない」という恐怖を抱くようになります。

ミスへの警戒が強まり、評価の目を過剰に意識し、自分の出来を疑う癖が深まっていきます

すると成功しても、その成功が自信の材料になりにくくなります。

成功は「たまたま運が良かった」「今回は何とか実力不足を隠し通せた」と解釈され、成果そのものが自分の力として認識されません。

この受け止め方が続く限り、実績が積み上がっても自己評価だけが追い付かず、「いつか見抜かれる」という緊張が温存されやすくなります。

さらに、この構造は行動面にも影響します。

不安が高まるほど「完璧でなければならない」という考えに縛られ、過剰な準備に向かいやすくなります

ところが準備で一時的に乗り切れてしまうと、「準備がなければ失敗していた」という感覚が強まり、次はさらに準備を積み増す方向へ進みやすくなります。

こうして努力の量が増えるほど、成功が偶然や準備の産物に見えてしまい、偽物感がほどけにくい循環が生まれます。

またこうした不安から「十分な準備が出来た」と感じるまで身動きが取れなくなり、「先延ばし癖」に繋がる可能性も指摘されています。

自己愛的完璧主義の結びつきが弱かったことも、ここから理解しやすくなります。

自分は特別で有能だという感覚が前面に出るタイプでは、成功が「運」ではなく「当然」として解釈されやすく、偽物感が入り込む余地は小さくなります。

今回の結果が示しているのは、インポスター症候群を強めやすいのが、完璧主義の中でも特に「硬直」と「自己批判」という組み合わせだという点です。

この2つは、先にも述べた通り、幼少期の親の評価基準が影響しやすいようです。

周囲に“高い基準で生きる大人”がいて、それが当たり前の姿として見えていると、「ちゃんとやるなら満点であるべきだ」という価値観が生まれやすくなり、これが硬直的完璧主義の形成に関連します。

また、結果が良いときは認められるのに、うまくいかないときは関心が薄れたり、厳しい反応が返ってきたりする環境では、「失敗してはいけない」「完璧を求められている」という警戒が強まり、自己批判的完璧主義が形成されやすくなります

もちろん、親の影響は形成要因の一つであり、これですべてが説明されるわけではありません。

しかし、こうした要因が示されることで、うまく自分を認められないという問題の解消に役立つ可能性があります。

価値観は一朝一夕で形成されるものではありません。もし自分を正しく評価出来ていないと感じるなら、その要因を自覚して呪縛を断ち切る必要があります。

インポスター症候群は、就職や転職などで不利に働く恐れがあり、生活の基盤を上手く築けないという問題につながる可能性があります。

こうした問題に悩む人は、主観的な評価が歪んでいるので、日々の実績について、主観を除いた「事実」だけを記録することが有効だとされています。

あまりに実績を誇示するのも考えものですが、実績があるのに自分を認められないというのは歪んだ心理の現れでしょう。

素直に自分の能力を認められるようになれば、ずっと生きやすくなるかもしれません。

元論文

Imposterism and perfectionism: Imposterism predicts rigid and self-critical perfectionism, but not narcissistic perfectionism
https://doi.org/10.1016/j.paid.2025.113628

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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