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「嘘かと思うくらい」アニメ声優“初挑戦”の【坂道アイドル】  『劇場版 転スラ』で光る、“観る者を引き込む”芝居に圧倒

  • 2026.2.18

日向坂46の小坂菜緒と藤嶌果歩が、2026年2月27日公開の『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』で声優に初挑戦する。二人が演じるのは、海底の国カイエン国で巫女ユラに仕える侍女、ミオとヨリだ。人気シリーズの劇場版に、しかもオリジナルキャラクターとして参加するとなれば、まず気になるのはどのように作品に溶け込めるかだろう。

筆者は事前に試写で観ているのだが、それは杞憂にすぎなかった。二人の声は必要以上に目立たず、会話の流れにすっと溶け込んでいたのだ。きっと『転生したらスライムだった件』のファンはもちろん、おひさま(日向坂46のファン)もすんなりと二人の声を受け入れられるのではないかと思う。

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映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』の公開記念舞台あいさつに登壇した後列左から平岡海月、平尾帆夏、竹内希来里、清水理央、宮地すみれ、山下葉留花、前列左から熊切和嘉監督、小西夏菜実、正源司陽子、藤嶌果歩、石塚瑶季 (C)SANKEI

劇場版ならではのスケール感と映像の見どころ

『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』は、海底の国カイエン国に異変が起きるところから物語が動き出す。水竜を守り神として崇めるその国で不穏が広がり、巫女ユラは救いを求めて地上へ向かう。辿り着いた先には、開国祭を終え、束の間の休暇を過ごすリムルたちの姿がある。祝祭の余韻が残る時間の中に、海の底から持ち込まれた問題が重なり、地上と海の二つの世界が交差することで、新たな局面が開かれていく。

シリーズの魅力は、スケールの大きさと人間関係の細やかさが同時に描かれる点にある。主人公リムル=テンペストは、異世界に転生した存在でありながら、仲間と対話を重ね、国を築き、少しずつ世界を広げてきた。強さを誇示するだけでなく、相手の立場を理解し、共存の道を探る姿勢が物語の軸になっている。

『蒼海の涙編』が面白いのは、物語のスケールが海へ広がる点だ。劇場版ならではの壮大なアニメーションも大きな魅力となっており、海の表現が増えることで、光の揺れ方や質感の違いが画面の情報量を押し上げ、戦いや移動のシーンも見応えが増している。その一方で、個人的に印象に残ったのがゴブタの恋模様だった。『転スラ』はシリアスな局面の合間に、仲間たちの素朴な感情や小さな騒動をきちんと挟んでくる作品だが、今回のゴブタもまさにその役回りで、場の空気をふっと緩めながら、物語のテンポを整えてくれていた。

映像の芝居経験が活かされた小坂菜緒と藤嶌果歩の演技

1月に都内で行われた完成披露試写会の舞台挨拶では、小坂が「昔から『転スラ』の大ファン」で、オファーを受けた瞬間は「嘘かと思うくらい嬉しかった」と語っていた。声優は今回が初挑戦で、アフレコには緊張しながら臨んだという。藤嶌も、個人で演技の仕事を受けたのは今回が初めてで、しかも初めてが声優だったことに緊張したと明かしつつ、先輩の小坂と一緒に出演できたこと、決まったときにファンやメンバーから祝福されたことが心に残っていると話していた。

小坂が演じるミオと、藤嶌が演じるヨリは、巫女ユラに仕える侍女という立場にある。物語の中心で感情を大きく揺らす役というより、ユラのそばで状況を見守り、ときに言葉を添える存在だ。海底の国の事情を観客に伝える役割も担うため、台詞は決して多くはないが、事前に試写で観た印象を率直に言えば、二人の声は場面の中にきちんと収まっていた。台詞の語尾が浮かず、相手の声を受けてから返す間も落ち着いている。初挑戦ということでどう溶け込むのかは気になっていたポイントだったが、第一声を聞いたときに、まず安心できた。

小坂は映画『恐怖人形』や『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』、ドラマ『DASADA』(日本テレビ系)などで、演技経験を重ねてきた。藤嶌も四期生主演の映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』でスクリーンの現場を経験している。声優は表情や視線、動きで補える部分がないため、声と言葉だけで、感情や関係性、場の空気まで伝えなければいけない。まったく違う表現が求められると言っていい。とはいえ二人の自然な演技を見ていると、こうした映像の演技経験が活かされていると感じる部分があるように感じた。

舞台挨拶で小坂は、ミオについてやわらかな雰囲気を持ちながら芯のある侍女だと語り、藤嶌もヨリを元気で活発なキャラクターとして演じたと話していた。試写で観た印象も、その説明から大きくずれない。小坂が演じるミオは、声のトーンが落ち着いている。感情が大きく動く場面でも声が前のめりにならず、言葉を丁寧に運ぶので、場面の緊張感が崩れない。ユラのそばで支える立場らしい、控えめだけれど芯のある話し方が印象に残った。一方、藤嶌のヨリは、声にやわらかさがあり、場の空気をふっと和らげる。明るさはあるのに軽くなりすぎず、相手の言葉に寄り添う距離感がちょうどいい。緊張する場面では自然にトーンが落ちて、シーンの温度にきちんと合わせてくる。その切り替えが滑らかで、ヨリという人物が無理なく伝わってきた。

日向坂46ファンにとっても、シリーズファンにとっても楽しみにしてほしい理由

日向坂46は近年、個々の活動の幅を着実に広げている。だからこそ今回の声優初挑戦も、その流れの延長線上にある一歩と言えるだろう。グループの名前を背負いながらも、役としてきちんと成立させる。その経験を経た二人が、これからどんな表現を見せていくのか。声優への挑戦は、その可能性を示す最初のページになるだろう。日向坂46のファンにとっても、シリーズのファンにとっても、二人のこれからを見届けたくなるきっかけになるはずだ。


※記事は執筆時点の情報です

ライター:川崎龍也
大学卒業後にフリーランスとして独立。現在はアイドル雑誌を中心に、取材・インタビュー/コラム執筆を主軸に活動している。主な執筆媒体は『BOMB』『MARQUEE』『EX大衆』『音楽ナタリー』『RealSound』など。
X(旧Twitter):@ryuya_s04