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築40年超マンションで…高齢者「厳しい」たった5,000円の値上げが“否決”された深いワケ

  • 2026.2.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。マンション管理士で不動産ライターのS.Kです。分譲マンションに住んでいると、年に一度必ず開催されるのが「管理組合の総会」です。

普段は委任状を出して欠席する方も多く、平穏に進むことが多い総会ですが、あるテーマが議題に上がった途端、会場の空気が一変することがあります。

それは、マンションの寿命を左右する「お金(修繕積立金)」の話です。

今回は、ある築古マンションで起きた、修繕積立金の改定をめぐる「世代間の意識ギャップ」と、合意形成の難しさについてお話しします。

「年金暮らしには厳しい」5,000円の値上げ案に上がった反対の声

それは、都内にある築40年超の「ヴィンテージマンション(築年数は古くても、立地や管理の良さで高い資産価値を保っている物件)」での出来事です。

立地もよく、重厚感のあるタイル貼りの外観は魅力的ですが、実は長年の積立金不足により、給排水管の更新や外壁補修などの計画が後ろ倒しになっている状態でした。

将来の資金不足を懸念した若手の理事長が、総会で「各戸月額5,000円の修繕積立金値上げ」を提案したときのことです。会場に集まった高齢の居住者(区分所有者)たちから、次々と不安と反対の声が上がりました。

「年金だけでギリギリの生活をしているのに、これ以上の負担は難しい」「あと何年住めるかわからないのに、将来のための投資と言われても…」

資産価値を維持して長く住み続けたい現役世代と、現在の生活費を少しでも抑えたい高齢世代。それぞれの切実な事情がぶつかり合い、議論は平行線をたどりました。

結局、この値上げ案は反対多数で否決。必要な工事を行うための資金確保は、先送りにされることになったのです。

優先順位の違いが招く管理不全

なぜ、自分たちの資産であるマンションを維持するための提案が、拒絶されてしまうのでしょうか。背景には、建物の老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」の問題があります。

30代、40代の現役世代にとっては、20年、30年後も快適に住めるよう、今のうちにコストをかけてでも資産価値を維持することが合理的です。一方で高齢者にとっては、数十年先の資産価値よりも「今の生活の安定」が優先されやすい傾向があります。

管理組合の決議は「多数決」が原則です。そのため、高齢者が過半数を占める築古マンションでは、将来への投資よりも「現状維持」が選択されやすく、結果として必要な修繕が行われないまま建物が傷んでいく「管理不全」の状態に陥るリスクがあるのです。

重要なのは「今の残高」より「未来の収支」

こうして適切な修繕が行われないと、マンションがの老朽化が深刻化するリスクが高まります。これから中古マンションの購入を検討される方は、不動産会社を通じて「総会議事録」を取り寄せ、以下の2点をチェックしてください。

  • 資金不足を理由に、必要な工事が延期されていないか
  • その不足を補うための「値上げ案」が、総会で否決されていないか

もし「値上げが否決された」という記録があれば、それは居住者たちが「建物の維持」よりも「目先の負担増の回避」を選んだという証拠かもしれません。合意形成が機能不全に陥っているマンションを買ってしまうと、個人の力ではどうにもならない泥沼に巻き込まれることになるでしょう。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


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