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築45年の木造2階建てが「700万円も安い…」購入後、30代夫妻を襲った“ワケアリ物件の落とし穴”【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

家を探しているとき「え、安い」と思わず情報を二度見した経験はありませんか。

同じエリアなのに、周辺の物件より数百万円も安い。「これは掘り出し物では」と心が動くのは自然なことです。

特に、築年数は古いものの「リフォームすれば十分住めそう」と感じる物件ほど、価格の魅力が強く映ります。価格のインパクトが大きいほど、人は“見えない部分”への警戒心を後回しにしてしまいがちです。

今日お伝えするのは、築45年の旧耐震戸建てを1,180万円で購入した30代ご夫婦のエピソードです。

当初は、相場より大幅に安く買えて喜んでいたものの、最終的な総額は予算を大きくオーバー。決して「お得な買い物だった」とは言えない現実が待っていました。

「700万円も安い」その一言で始まった決断

今から2年前のことです。相談に来られたのは、30代後半のAさんご夫婦でした。

目を付けたのは、築45年の木造2階建て。1979年に確認済証(建築計画が法令の基準に適合していることを証明する書類)が交付された建物です。つまり、新耐震基準(1981年6月施行)より前に建てられた旧耐震の物件でした。販売価格は1,180万円。

一方で、同じエリアにある築20年前後の物件は1,800〜1,900万円台です。

「700万円も差があるなら、多少リフォームしても十分安いですね」

Aさんはそう言って、前向きに検討を進めていました。資金計画はフラット35(長期固定金利型の住宅ローン)を利用。「とにかく購入価格を抑えられたことが大きい」と、満足そうな表情でした。

しかし、その安さはあくまで入口の数字にすぎませんでした。

評点0.38。耐震診断で突きつけられた現実

購入手続きが進む中、融資条件として金融機関から耐震診断の実施を求められました。耐震診断とは、建物が地震にどれだけ耐えられるかを数値で評価するものです。評点1.0以上で「一応倒壊しない」とされる水準になります。

そして出た結果は評点0.38。

「このままでは、大地震が起きたときに倒壊する危険性が高い状態です」

診断士の説明を聞いた瞬間、ご夫婦は言葉を失いました。調査で明らかになったのは、次のような状態です。

  • 基礎が無筋コンクリート(鉄筋が入っていない基礎)
  • 基礎に複数のクラック(ひび割れ)が確認されている
  • 壁量不足(地震に耐えるための壁の量が足りない)
  • 筋交い(柱と柱の間に斜めに入れて建物を支える部材)に接合金物(柱と固定する金具)がない

見た目に大きな傷みがなくても、構造の状態までは分かりません。提示された耐震補強の見積額は約350万円。

工事内容は、以下のとおりです。

  • 基礎の補強
  • 耐力壁(地震の揺れに耐えるための壁)の増設
  • 接合金物の設置
  • 工事に伴う内装の復旧

さらに、工事期間中は居住できないため仮住まいが必要です。家賃と引越し費用で約60万円が追加となりました。補強後の想定評点は、ようやく1.0ギリギリ。

「これで、やっと一般的な安全水準です」

診断士のその一言が、ご夫婦には重くのしかかっていました。

それでも終わらない“見えないコスト”

耐震補強を決断した時点で、購入費用と補強費、仮住まい費用を合わせた総額は約1,590万円に達していました。しかし、負担はそこで終わりません。

火災保険料は、築20年前後の物件と比べて年間約2万円高い設定。さらに、金融機関からはこう説明されました。

「担保評価(金融機関が見込む資産価値)はどうしても低くなります。将来売却される際も、価格は伸びにくいでしょう」

つまり、買った瞬間から売却時に不利な状態です。Aさんご夫婦は、途中で建て替えも検討しました。

  • 解体費 約190万円
  • 新築費 2,500万円超

数字を並べた段階で、現実的ではないと判断。断念せざるを得ませんでした。

最終的に、諸費用も含めた総額は1,700万円超。改めて比較すると、同じエリアの築20年前後の物件との差はわずか100〜200万円程度です。

Aさんが小さくつぶやきました。

「リスクが織り込まれた値段だから安かったんですね…」

プロだけが知る極意。「住める」状態になるまでにいくら必要か

私は旧耐震物件を見た瞬間、必ず3つを計算します。

  • 耐震補強費はいくらか
  • 金融機関の評価はどうなるか
  • 補強後の総額で割安かどうか

今回のケースでは、購入前に次の準備をするだけで防げた可能性があります。

  • 簡易耐震診断を実施する
  • 補強費の概算を取る
  • 築20年前後物件との総額比較をする

価格が安い物件ほど、冷静に“最終的にいくらになるか”を出してください。

差額が100万円程度しかないなら、安全性・資産性・将来売却の自由度まで含めて判断するべきです。私なら迷わず、築年数が浅い方を選びます。

判断基準は一つ。補強後の総額で、本当に割安かどうか。

その計算をせずに購入すると、後から負担が積み重なります。そして気づいたときには、売るに売れず身動きが取れない状況に陥ります。

安さは“武器”にもなりますが、計算を怠れば“凶器”にもなる。それが、プロが手を出さないラインの正体です。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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