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築23年、駅徒歩10分の“優良”物件で「利回り9%が…」2年後、40代会社員を襲った“大誤算”【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

「表面利回り(年間の家賃収入を購入価格で割り、100を掛けた数値)9%の不動産投資」と聞いて、魅力を感じる方は多いのではないでしょうか。

銀行に預けてもほとんど増えない時代に、年9%の収益。毎月のローン返済や諸経費を差し引いても、数万円が手元に残るなら老後資金の足しになるかもしれない。そう考えてしまうのも自然なことです。たしかに、数字だけを見ると魅力的に映ります。

しかし、その9%の利回りを信じて物件を購入し、後悔することになった知人がいます。本来は資産になるはずの物件が、毎年お金を持ち出す存在へと変わってしまいました。

今日は、魅力的な利回りに惑わされた結果、出口を失った区分マンション投資の実例をご紹介します。

年金不安から始まった9%物件との出会い

私の知人でもある40代の会社員Aさんは、将来の年金に不安を感じ、区分マンション投資(マンションの一室だけを所有して家賃収入を得る投資)を検討していました。

紹介された物件の概要は、次のとおりです。

  • 築23年ワンルーム
  • 駅から徒歩10分
  • 価格1,300万円
  • 想定家賃97,500円

年間家賃は約117万円。1,300万円で割ると、表面利回りは約9%になります。Aさんは少し興奮気味に言いました。

「このエリアなら需要は安定していますよね?」
「ローンを払っても毎月5万円くらいは手元に残りますよね?」

数字だけを見ると、たしかに夢があります。しかし私は、その場で電卓を取り出しました。表面利回り9%の裏に、まだ一度も差し引かれていない現実があると分かっていたからです。

利回り9%が3.8%に化ける瞬間

ワンルーム投資で多くの人が見落とすのが、「経費を引いた後の数字」です。Aさんの物件でかかる毎月の費用は、次のとおりでした。

  • 管理費 19,400円
  • 修繕積立金 22,000円
  • 固定資産税 年12万円(約10,000円/月)
  • 管理委託手数料 家賃の5%(約4,900円/月)

合計すると、月約56,300円。

家賃97,500円から差し引くと、手元に残るのは約41,200円。年間では約494,000円です。

494,000円÷1,300万円=約3.8%。

表面利回りは9%。しかし、経費を引いた瞬間に3%台まで下がります。「9%あれば安心」と思っていた数字は、実際にはこれだけしか残らないのです。

しかしAさんはまだ前向きでした。

「それでも、空室にならなければ大丈夫ですよね?」

その一言が、この投資の分かれ道でした。

空室4ヶ月。想定外は必ず起きる

購入から2年目のことでした。近隣に新築マンションが完成。同じような間取りで、設備は最新。家賃はほぼ同額。当然、新規の入居者はそちらへ流れました。Aさんの部屋も、更新のタイミングで退去。

次の入居者が決まるまで、4ヶ月の空室が発生しました。その間も、ローンの返済は毎月きっちり引き落とされます。管理費も修繕積立金も、待ってはくれません。

さらに追い打ちがかかりました。

  • 原状回復費(退去後の室内リフォーム):28万円
  • 給湯器の故障による交換費用:18万円

合計46万円の突発支出。家賃を下げてようやく決まったものの、その年の収支はマイナス。Aさんは力なく笑いながら言いました。

「通帳を見るたびに、投資じゃなくて仕送りをしている気分ですよ…」

出口が塞がれた。査定1,050万円の現実

赤字が続き、Aさんはついに売却を考えました。しかし、現実は厳しいものでした。

査定額は1,050万円。ローン残債は約1,200万円。つまり、売れても150万円の持ち出し。持ち続ければ毎年赤字。どちらを選んでも、楽にはなりません。

「こんなはずじゃなかったんですけどね…」

Aさんは、そう言って言葉を失いました。表面利回り9%という入口の数字を信じた結果、出口は完全に塞がれていました。

投資で怖いのは、損をすることではありません。やめたくても、やめられなくなることです。

プロだけが知る極意「表面利回りは鵜呑みにしない」

私は不動産投資をするとき、表面利回りだけで判断することはありません。見るべきなのは、「最悪に近い想定でも回るかどうか」です。販売資料の数字をそのまま信じるのではなく、あえて厳しめに計算します。

必ず行うのは、次の3つです。

  • 家賃を相場から5%下げて計算する
  • 年間2ヶ月は空室になる前提で試算する
  • 管理費・修繕積立金・固定資産税など、毎月確実に出ていく費用をすべて差し引く

それで数字が合わなければ、買いません。

さらに重要なのは、「5年後にいくらで売れるか」を先に考えることです。出口が読めない投資は、そもそも成立していません。そして、安定した長期運用を重視する多くのプロはワンルームよりもファミリータイプを選びます。

理由はシンプルです。

  • 入居期間が長い
  • 家賃下落が緩やか
  • 回転(退去→空室→再募集)の回数が少ない

“高利回り”という言葉の裏には、たいてい理由があります。価格が安いのは、リスクが織り込まれているからです。

数字そのものは正直です。ですが、見せ方はいくらでも演出できます。

失敗する人の多くは「いくら入るか」だけを見て「いくらで終われるか」を考えていません。表面利回り9%。それは「何も起きなければ」成立する数字です。空室も修繕も家賃下落も起きない世界は、存在しません。

投資で“地獄”を見たくないなら、表面利回りという甘い数字を、まず疑うことから始めてください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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