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ホテルで予約ミスが発覚→フロントには客の怒鳴り声が響き渡り…その後、スタッフが思いついた“提案”に「逆に恐縮されるほどでした」

  • 2026.2.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターの月虹です。

旅行の醍醐味は、計画を立てる段階から始まっていると言われます。しかし、もし楽しみにしていた宿に到着して「予約が入っていない」と言われたら……?

これは、私がかつて地方の離島にあるリゾートホテルで働いていた頃、ゴールデンウィークを間近に控えた週末に起きた「あわや大惨事」の出来事です。

繁忙期のフロントに響いた怒号。新人のミスと、重なる悪条件

そのホテルは、本館・新館・別館に加え、10棟のコテージを擁する島内の宿泊施設でした。事件が起きたのは、研修中の新人スタッフが慣れない予約業務に当たっていた時期のこと。

島への交通手段は本土からの高速船のみ。船の到着に合わせ、1時間ごとにチェックインの波が押し寄せます。土曜日の16時、ロビーが賑わう中で「あるはずの名前がない」お客様がいらっしゃいました。

事件のあった日は土曜日でした。

16時のチェックインに来られた数組のお客様の中に、土曜日の宿泊者名簿に名前がない30代のカップルがいました。ホテルの予約システムは、お客様のお名前を入力すると該当するお名前の宿泊日、コース等が見られるようになっています。

チェックイン名簿に名前のないお客様はシステム上では翌日の日曜日に宿泊されることになっていました。

予約は電話で受けていて、予約担当者は研修中の新入社員の名前が書かれてありました。研修中の新入社員が予約日を間違えてしまったのでした。

さらに悪いことに、前日まで修学旅行生を受け入れていた影響で客室稼働率は100%。当日の飛び込み客も多く、すぐに案内できる予備の部屋が一つもなかったのです。

予約ミスに当然お客様は怒り、フロントには怒号が響き渡りました。当然のことだと、フロントスタッフ一同で謝罪しました。

タイムリミットは30分。サンセットツアーに託した一縷の望み

フロントスタッフ一同で謝罪する中、責任者が「一縷の望み」をかけてある提案をしました。

それは、ちょうど出発時刻を迎えていた「サンセットツアー」への参加です。

「お部屋の準備を整える間、ぜひ島の夕日を見てきていただけませんか」

怒りの収まらないお客様でしたが、責任者の懸命な説得により、渋々ながらもツアーの送迎車に乗り込んでくださいました。

猶予は、ツアーが終わるまでのわずか30分ここからホテルマンたちの意地をかけた逆転劇が始まります。お客様が不在の間に、全スタッフが一丸となって動きました。

お客様が戻ってくるまでに、お客様の申し込んでいたプランよりもアップグレードしたお部屋の準備と、レストランでの食事の時にプラス一品をお願いし、ホテル内のお土産屋で使える無料チケットを用意しました。

30分後、戻られたお客様の表情を見て私たちは驚きました。先ほどまでの険しい表情が嘘のように、興奮気味に輝いていたのです。その日は運良く、水平線に沈む夕日とともに、めったに見られないイルカの群れが現れたとのこと。島が持つ圧倒的な自然の美しさが、お客様の心を解きほぐしてくれた瞬間でした。

改めて総支配人とスタッフで謝罪し、アップグレードの対応を伝えると、お客様は逆に恐縮されるほどでした。

ミスを責めずにカバーする。リゾートのプロが守るべき「初心」

この事件をきっかけに、私たちのホテルでは「ミスを周囲がいかにカバーするか」という意識がより強固になりました。慣れない業務には必ずベテランがダブルチェックを行う体制を徹底し、二度と同じ過ちを繰り返さない仕組みを整えたのです。

あの時のお客様は、その後、島の美しさと私たちの対応を気に入ってくださり、何度も足を運んでくださるリピーターとなりました。

「リゾートホテルとは、お客様に非日常の感動を持ち帰っていただく場所である」

忙しさの中で忘れかけていた大切な初心を、島の自然とお客様が思い出させてくれたのです。


ライター:月虹

1970年代生まれ。生まれも育ちも関東でしたが都会のしがらみに囚われず生きたいと思い誰も知り合いのいない地方の小さな島へ移住。島へ移住したと同時に島内のリゾートホテルで働くことに……。リゾートホテルではフロント、お土産屋、予約、レストランでの配膳、結婚式やディナーショーのクローク、経理と多岐にわたる業務を担当。


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