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客「楽しみに来ました」旅館でチェックイン→しかし、予約帳に名前がなく…その後ホテルが取った“行動”に「来てよかったと思えた」

  • 2026.2.13
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

旅館にとって予約ミスは、単なる事務的な手違いでは済みません。何ヶ月も前から楽しみにされていた「旅の計画」を根底から壊してしまう、あってはならない失態です。

特に、代わりの宿が見つからない満室日の予約漏れは、まさに絶体絶命の危機。しかし、そんな時こそ宿の真価が問われます。今回は、私が経験した最大級のミスと、そこからいかにして信頼を繋ぎ止めたか。その「責任」の取り方についてお話しします。

凍りついたフロント。「予約漏れ」という致命的失態

紅葉が色づく土曜日の夕暮れ時、あるご夫婦をフロントでお迎えしたときのことです。

満面の笑みで「楽しみに来ました」とおっしゃるお二人の名前が、予約台帳のどこにもありません。

原因は単純な入力ミスでしたが、招いた結果はあまりに深刻でした。

当館はあいにく満室。近隣の宿もすべて予約で埋まっている状況です。顔面蒼白になるスタッフと、期待が驚きへ、そして深い落胆へと変わっていくお客様。その場の空気が凍りついた瞬間を、今でも鮮明に思い出します。

「謝罪」の先にある責任。奔走して繋ぎ止めたお客様の夜

私は「ただ謝罪して他館を勧める」だけでは、宿としての責任を果たしたことにはならないと考えました。

夜が迫るなか、お客様を不安なまま放置することは許されません。まずはラウンジへご案内して心からのお詫びを伝え、「私が責任を持って今夜のお部屋を確保すること」をお約束しました。

そこからは、近隣の宿一軒一軒に直接電話を入れ、宿泊可能な部屋を必死に探しました。

「当館のミスで、お客様の行く先がなくなってしまいました。どうか、力を貸してください」と頭を下げ続けたのです。

最終的に、信頼関係のある近隣宿が、予備としていた客室を急遽整えて受け入れてくれることになりました。

確保できたことをお伝えした際の、お客様の安堵された表情は忘れられません。その後、移動のタクシー手配から先方でのスムーズなチェックインまで密に連携し、お客様が二度と不安を感じないよう、最後まで責任を持ってエスコートを完遂しました。

手を握り締めてくれたお客様

翌日、お帰りの際にお立ち寄りくださった旦那様が、「最初は途方に暮れたけれど、あなたの対応を見て、この宿に来てよかったと思えたよ」と言って、私の手をしっかりと握ってくださいました。

この一件以来、予約システムは幾重にもチェックを入れる体制に改めました。しかし、何より心に刻んだのは、どれほどシステムが完璧でも、そこに「お客様の旅を背負っている」という緊張感がなければ、いつかまた同じ過ちを犯すということです。

失態を「最高の思い出」に変える唯一の方法

予約ミスは、決して許されることではありません。

しかし、起きてしまった後にどれだけ「自分事」としてお客様の痛みに寄り添えるか。その必死な姿勢こそが、失いかけた信頼を再生させる唯一の道です。 どんな困難な状況でも、お客様の旅を守り抜く。

それが、私たちが掲げるべきプロのプライドだと信じています。


ライター:na_r

私は旅館スタッフとして、日々お客様をお迎えしております。
華やかなおもてなしの裏側で、実は最も現場の力が試されるのが予期せぬトラブルへの対応です。私はこれまで、予約のダブルブッキングや設備の突発的な故障、無理難題への向き合いなど、数多くの修羅場を経験してきました。
こうした経験から得た「クレームを感動に変えるリカバリー術」や、「お客様の心理を紐解くコミュニケーション」をテーマに、現場のリアルな空気感を交えた執筆を得意としています。読者が明日から使える「折れない心の作り方」や「実践的な対応策」を、現場目線でお届けします。