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30代男性が「入居初日」に後悔…最新の全館空調導入も…一家を襲った“意外な落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2026.3.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「家中どこにいても暖かいのはとても助かります。でも、まさかこれほど音が気になるとは思いませんでした」

そう語ってくれたのは、最新の全館空調を導入したYさん(30代男性、夫婦+子ども2人の4人家族)。

展示場ではそれほど気にならなかったはずの音が、入居初日の夜、静まり返った家の中で存在感を増しました。空調の室内機が設置された「空調室」から、機械が動く低い音が響き、寝室にまで届いてくるのです。

「空調室」の位置が暮らしを左右することも

全館空調には、家全体の空気をコントロールする大型の室内機が必要です。多くの住宅メーカーでは、これを1階のデッドスペースや2階のホールなどの専用スペースに設置します。

Yさんの事例では、その空調室の配置がポイントとなりました。

「廊下にあるから大丈夫」と考えていましたが、実際には寝室の壁を一枚隔てた隣に配置されていたのです。

昼間は生活音にかき消されますが、深夜の静寂の中では、機械の振動が壁や床を伝う「固体伝搬音(振動が構造体を伝わって音として聞こえる現象のこと)」となり、枕元で常に音が鳴っているように感じてしまうケースもあります。

パンフレットの「dB」では測りにくい感覚

メーカーのカタログには「図書館並みの静かさ(約30〜40dB)」といった数値が並ぶことがあります。しかし、ここにはいくつか留意すべき点があります。

・低周波音の特性
音量そのものは小さくても、機械独特の「唸り」や「振動」は、人によっては不快に感じられることがあり、一度気になると意識から離れにくくなる性質があります。

・吹き出し口の「風切り音」
機械本体だけでなく、天井などにある各部屋の吹き出し口からも、空気が通り抜ける「サー…」という音が微かに鳴り続けることがあります。

音に敏感な方にとって、24時間365日、完全な無音の状態が訪れにくいという環境は、想像以上に負担を感じるものなのかもしれません。

「静かさを守る」ための3カ条

全館空調を検討するなら、温度だけでなく「音のゾーニング」を丁寧に行うことが大切です。

・寝室から物理的に遠ざける
空調室は、トイレや洗面所、クローゼットなど、長時間滞在しない場所の隣に配置するのが一つの方法です。

・空調室の「遮音」を検討する
空調室そのものに遮音シートや吸音材を施し、さらにドアの隙間を塞ぐなどの工夫をするだけで、漏れ出す音を抑えられる可能性があります。

・防振対策の確認
機械の振動が床に伝わらないよう、設置土台に防振ゴムを採用しているかなどを確認してみてください。

快適さの定義に「静かさ」を加える

Yさんは最終的に、寝室の壁に防音リフォームを検討することになりました。

全館空調は便利なシステムですが、効率を優先するあまり、リラックスする場所の静かさを後回しにしてしまうと、暮らし始めてから戸惑う原因になりかねません。展示場で体感すべきは温度だけではなく、周囲の音に気を取られず、機械の存在感に耳を澄ませてみるのも大切です。

快適な温度と「静かな環境」をいかに両立させるか。その視点を持つことが、納得のいく家づくりへの第一歩となるはずです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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