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840万円のはずが1,700万円に…1年近く家が建てられず!?40代夫妻を襲った大誤算【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住まい探しをしていると、相場より安い土地に出会うことがあります。調べてみると、地目(登記上の土地の種類)が「農地」だったという経験をされた方もいるのではないでしょうか。

農地は、エリアによっては農地転用(農地を宅地などに用途変更する手続き)の許可を取得すれば建物を建築できる場合があります。そのため、相場より明らかに安く理想の広さが確保できる土地であれば「建物にお金をかけられる」と期待してしまうでしょう。

しかし、安さの裏にある本当の総額と時間を計算しないまま進めると、後から大きな誤算に変わります。

今日ご紹介するのは、安い農地を購入したものの、最終的に周辺相場とほぼ同じ総額になり、1年近く建築に着手できなかったというエピソードです。

坪12万円で70坪。誰が見ても“お得”に見えた農地

6年前のことです。40代前半のAさんご夫婦がご相談に来られました。小学生のお子さまが2人いる4人家族です。

検討していたのは、坪12万円で70坪の農地。土地価格は840万円でした。周辺の市街化区域(原則として住宅を自由に建てられるエリア)の宅地は坪24万円前後だったため、数字だけ見れば明らかに割安です。

Aさんは少し興奮気味にこう話しました。

「この価格なら、注文住宅でも予算内に収まりそうなんです」

無理もありません。土地にかかる費用が抑えられれば、その分を建物や設備に回せます。家づくりを検討している方なら、誰でも魅力を感じる条件でした。

しかし、その土地は市街化調整区域※(原則として建築が制限される区域)だったので、建築には開発許可の取得が必須という条件でした。

※熊本では集落内開発区域に該当すれば一般住宅の建築が可能なケースもあります。

安いはずが、土地関連総額1,700万円に到達

まず必要だったのは農地転用(農地を宅地に変更する手続き)です。申請費用や書類作成、行政との協議対応を含めて約10万円。

さらに、開発許可申請。設計図面の作成や役所との事前協議、審査対応などを含めて約100万円が必要でした。ここまではAさんもある程度想定していました。

しかし、本当の問題はその後です。

  • 造成(地面をきれいに整地して家が建てられる状態にする工事)費用:約500万円
  • 道路との高低差を解消する擁壁工事:約150万円
  • 上下水道引込費用:約100万円

最終的に、建物費用を除いた土地関連総額は約1,700万円に到達。Aさんは戸惑った表情でこう言いました。

「こんなに費用がかかるんですか?」

結果的に、その総額は周辺の市街化区域宅地とほぼ同水準になりました。

1年近く建てられない現実。時間という“見えないコスト”

開発許可の取得には数ヶ月、場合によっては1年近くかかります。その間は、建築確認申請(建物の設計が法律に適合しているかを審査する手続き)へ進むことができません。つまり、家づくりそのものが止まってしまいます。

一方で、同じ価格帯の市街化区域の宅地であれば、購入後すぐに建築確認へ進める状況でした。結果として、建築着工が遅れたことで、Aさんご家族は現在住んでいるアパートの家賃をさらに9ヶ月分支払うことに。

土地の総額自体は周辺の宅地価格とほとんど変わりませんでした。しかし、着工までにかかった時間とその間の家賃という見えないコストが上乗せされ、結果的には周辺宅地よりも高い選択になってしまったのです。

安い土地ほど、冷静に総額を出す

土地探しでいちばん怖いのは、安いという言葉に気持ちが引っぱられることです。坪単価が相場より低い土地には、たいてい「安くなる理由」が隠れています。

例えば、次のような事情です。

  • 法規制の制限があり、建て方に条件がつく
  • 上下水道などのインフラが整っておらず、引込工事が必要になる
  • 造成が前提で、土地を整える工事費がかさむ

プロは、安いという一点だけでは前に進みません。まず、なぜ安いのかを分解して、家が建つ状態にするまでの総額を出します。そして冷静に比べます。

総額が周辺の宅地と100万円しか変わらないなら、私は迷わず市街化区域の整った宅地を選びます。手続きや工事で足止めされにくく、計画が崩れにくいからです。

不動産は、買った瞬間がゴールではありません。住み始めるまでに、いくらかかるのか。どれだけ時間がかかるのか。そこまで含めて初めて判断できます。

安い土地ほど、気持ちは高ぶります。だからこそ最後は感情ではなく数字です。

総額と時間を一度出す。そのひと手間が、地獄を避ける分かれ道になります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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