1. トップ
  2. 放送から3年後に“豪華キャスト”が再集結 “挑戦的で革新的”だった朝ドラが放つメッセージ

放送から3年後に“豪華キャスト”が再集結 “挑戦的で革新的”だった朝ドラが放つメッセージ

  • 2026.2.21

伊藤沙莉が主演を務めた2024年度前期放送のNHK連続テレビ小説『虎に翼』が、完全オリジナルストーリーで2027年に映画化することが発表された。朝ドラにおいて、ドラマの主演キャストが映画にも続投するのはこれが初めてであり、それが『虎に翼』というのも納得がいく。

※以下本文には放送内容が含まれます。

『虎に翼』は何が挑戦的で革新的だったのか

undefined
伊藤沙莉 (C)SANKEI

『虎に翼』は挑戦的で革新的な朝ドラだった。「はて?」と声を上げる寅子(伊藤沙莉)を中心に、人権と女性、いないものとされてきた、描かれてこなかった人々を描く。現在放送中の朝ドラ『ばけばけ』にも通ずることだが、視聴者を信じた上でメッセージを投げかけたことで大きな反響、ムーブメントを巻き起こし、『2024ユーキャン新語・流行語大賞』へのノミネートや様々な賞を総なめにしていった。

『虎に翼』は社会的な強いメッセージ性を持たせた上で、しっかりとエンタメとしても面白い。リッチな映像美や尾野真千子による遊び心溢れる語りもありながら、キャラクターが個性的なのは当然のこと、その一人ひとりが視聴者にとって寄り添うパートナーとなってくれる。それほどに多様な生き方と幸せが『虎に翼』には詰まっているのだ。

例えば、日本初の女性弁護士となり、終戦後、裁判官となる寅子。彼女もまた間違え、失敗し、やり直し…を繰り返しながら自分の人生を歩んでいく。自身も誰かを搾取しながら働く道を切りひらいてきたことに気づき、やがて“生まれたときから自分は自分である”というシンプルでいて、見失いがちな一つの答えを作品は提示することになる。誰もが“特別な私”という呪縛に囚われてしまうなかで、主題歌『さよーならまたいつか!』の歌詞に「生まれた日からわたしでいたんだ」とヒントをそっと忍ばせていたのだ。

寅子の人生を語る上で、優三(仲野太賀)の存在は欠かすことができない。出征する優三を見送る寅子との変顔、そして寅子が優三を思いながら河原で涙するシーンは今作を象徴する名場面だ。そこで焼き鳥を包んでいた新聞紙に寅子は日本国憲法第14条を見つける。それが第1話冒頭の始まりのシーンへと帰結していくのだから。

仲野太賀、森田望智は大河、朝ドラの主演を経て『虎に翼』に帰ってくる?

2026年の今、『虎に翼』のキャストを見るとその豪華さに改めて驚かされる。ヒロインの伊藤沙莉はもちろん、仲野太賀は現在放送中の大河ドラマ『豊臣兄弟!』の主演、寅子の親友で兄嫁でもある花江役の森田望智は2027年前期の朝ドラ『巡るスワン』の主演を務める。『巡るスワン』の放送中に『虎に翼』の劇場版が公開されるということになるかもしれない。

裁判官・桂場を演じた松山ケンイチは『虎に翼』以降、数多くのドラマで法廷に立ち、寅子の父・直言役の岡部たかしは『ばけばけ』で再びヒロインの父親役を好演している。“魔女5”と呼ばれた寅子の明律大学時代の面々も『虎に翼』を経て、役者としてさらに飛躍。“涼子さま”こと桜川涼子を演じた桜井ユキはドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』がスペシャルドラマの制作が決定する、いわゆる新たな代表作となっている。そこでの土居志央梨との再共演も話題となった。

今年3月には山田よね(土居志央梨)と轟太一(戸塚純貴)の事務所設立にまつわるエピソードが描かれるスピンオフドラマ『虎に翼スピンオフ「山田轟法律事務所」』がオンエアとなる。映画キャストについて現時点でアナウンスされているのは伊藤のみだが、スピンオフの放送をきっかけにして、来年に向けて再び盛り上がりを見せていく予感がする。こうしてキャストが再集結する形は民放ドラマでは珍しくはないが、NHKの朝ドラでしかも映画でというのは異例だ。

世の中には大衆的に消費されていく作品とヒットこそはしないが特定の人にとっては一生忘れられない作品、のいずれかがある。言うなれば『虎に翼』は朝ドラという場所でマイノリティを救う、そのどちらをも両立させている稀有な作品だ。15分というフォーマットから、2時間(仮)尺になることで、それが“朝ドラ”なのかというある種の挑戦もありそうだが、そこには誰も置いていかない、一人ひとりに寄り添う物語が紡がれることは確かだ。


ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。