1. トップ
  2. ファッション
  3. 「大人のための絵本」モデル・アンヌさんの名作選時を忘れて見入ってしまう伝統技術~『藍染めのアポレンカ』『きんつぎ』~vol.40

「大人のための絵本」モデル・アンヌさんの名作選時を忘れて見入ってしまう伝統技術~『藍染めのアポレンカ』『きんつぎ』~vol.40

  • 2026.1.14

オンリーワンからユニバーサルへ

こんにちは。アンヌです。2026年もどうぞよろしくお願いいたします。
最近シャナさんという方のインスタグラムをフォローし始めました。投稿の内容は、「最重度知的発達障害」を持つ二十歳のお子さんの様子や 、「多様性個育てⓇ」のコーチング。がん告知を受けてからはサバイバー日記も加わりました。惹かれる理由は、レア体験そのものより、この状況をどう捉えて活かしているか。明るく前向きな画像を見ていると、同じ経験をしていなくても人生観を揺さぶるような説得力があると感じています。また、ファッションや暮らしぶりも素敵で、楽しい!
その彼女が先日、短期で渡米した時のこと。投稿には、日本と違って洋服のサイズがたくさんあり、ピッタリのものが見つかるのでハッピーだとありました。手足がとても長いそうで、「ツンツルテン」にならずに済むと。私も、足はさておき、背が高く腕が長いのでいたく共感! オランダのファッション界隈で感じた安堵感や幸福感を思い出しました。
日本の服飾メーカーの多くは、なぜサイズ展開をS・M・Lに限るのでしょう。さらには、「フリーサイズ」だけが並ぶお店もあります。「どんな体型でも合う」というこの言葉の本来の意味とは違い、「スモールじゃん!」と試着を諦めてしまいます。一方でLを着てみると、横幅ばかりが大きくしっくりこないことも。仕方がないのでメンズのMへ。こうなったらハンサムウーマンを目指すしか術(すべ)はないのか……。大柄仲間と「わたしたちだって可愛いレディースが着たい!」と叫ぶこともしばしばですが、小柄な友人たちも同じ。もう子ども服コーナーに行きたくないって。
日本でも180センチ近い女性とすれ違うことは珍しくなくなり、以前よりさまざまな体型や国籍の人々が暮らすようになりました。また、未来に向けたSDGsの共通の目標では、体型、性別、肌の色などに関係なく、「誰一人取り残さない」がスローガンになっています。だからこそサイズ展開を豊富にして、すべての人が気持ちよく日本の服をまとえるようになればいいのにと思うのです。
ふとイッセイミヤケの「プリーツプリーズ」が頭をよぎりました。性別をあまり問わず、どんな体型にもフィットし、スタイリッシュに着こなせるボーダーレスな服! なんて個々をリスペクトしているブランドなのだろう。この技術は、日本の折り紙や着物の「折る・畳む」の文化に発想を得ているのだとか。面白いのは、唯一無二の日本の文化、古き良きものを守るためにややもすると閉鎖的になりかねない伝統技術が、ユニバーサルな服の形となり、広く世界に浸透していること。本物の伝統とは、排他的ではなく、むしろ世界を包み込む寛大な要素があるものなのかもしれない、そう思うのです。
さて、シャナさんですが、投稿によれば本の出版準備中だそうです。彼女の唯一無二の体験が、広く共感を生むのではないかなと、発売を楽しみに待っています。
今回の絵本です。受け継がれてきた伝統技術が多くの人の心に響く物語2作を選びました。何時間でも見入ってしまいますよ。
 
*次ページではアンヌさんのおすすめ2冊をご紹介します

『藍染めのアポレンカ』

作/ロマナ・コシュトコヴァー
絵/ヴェロニカ・ヴルコヴァー、ヤン・シュラーメク
訳/小川里枝
( 2,750 円/求龍堂)

藍染め工房を営むおじいさんとおばあさん。後継ぎがなく、悩んでいました。ある日森の中で汚れたお人形を見つけます。きれいに洗うと翌日女の子の姿に変わりました。アポレンカと名付けられたその子は藍染めを見ると……。チェコのモラヴィア地方にわずかに残る防染ブロックプリントの藍染の技を、昔話のような切り口で絵本に。この技術はユネスコ無形文化遺産に登録された希少なものです。同時に、世界各地で藍染めに親しんだ多くの人々にも届くよう描かれ、素敵な一冊となっています。

『きんつぎ』

作/イッサ・ワタナベ
詩訳/柴田元幸
(2,420円/世界文化社)

うさぎが青いコップと白いコップを持ってきました、小鳥とお茶会をしようと。ところが青いコップは割れ、小鳥は飛び立とうとした途端にテーブルクロスを引っ掛けてしまいます。テーブルの上のオブジェたちはばらばらに。うさぎは悲しみの淵をさまよいます。そして希望の光が……。「金継ぎ」という日本の伝統的技法に着想を得て、人の絶望と喪失感、そして希望と再生を寓話的に描いたもの。文字はなく、静かに美しい絵を追うサイレント絵本です。金継ぎとは、器の破損をわざと目立たせ、味わいとして際立たせる修復技術。青いコップと白いコップの行方も見どころです。

*画像・文章の転載はご遠慮ください

この記事を書いた人

モデル、絵本ソムリエ アンヌ

アンヌ

14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。

元記事で読む
の記事をもっとみる