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ナルシシズムと完璧主義が合わさると「めっちゃ生きづらくなる」

  • 2026.1.11
Credit:canva

「鍵をかけたか何度も確認しないと家を出られない」 「手の汚れが気になって、何度も洗わずにはいられない」

こうした強迫性障害(OCD)のような症状は、一般的に「不安症」や「神経質な性格」として片付けられがちです。しかし心理学研究によると、この症状の裏には意外な「性格」が隠れている可能性があるといいます。

その性格とは、なんと「ナルシシズム(自己愛)」です。

一見、自信満々なナルシシストと、不安に怯える強迫症状は無関係に見えます。なぜこの二つが結びつくのでしょうか?

ブラジルのサンフランシスコ大学(Universidade São Francisco)の研究チームによると、自分への期待が高い人ほど、現実とのズレに敏感になり、その不安をコントロールしようとして強迫的な行動に走る傾向があるという。

そして研究によると、ナルシシズムと強迫症状この2つを繋ぎ合わせているのが完璧主義なのだという。

この研究の詳細は、2026年1月付けで科学雑誌『Personality and Individual Differences』に掲載されています。

目次

  • ナルシストには二つのタイプがある
  • ナルシシズムのタイプで異なる苦痛の現れ方

ナルシストには二つのタイプがある

「ナルシスト」と聞くと、多くの人は「自分が大好きで、常に堂々としている人」を思い浮かべるかもしれませんが、心理学では、ナルシシズム(自己愛)を一つの性格特性とは見なしていません。それは、大きく二つのタイプに分類されます。

一つは誇大型ナルシシズム(Grandiose Narcissism)です。

これは、自分は他人より優れているという膨らんだ優越感を持ち、攻撃的になりがちで、常に周囲から賞賛されることを強く求めるタイプです。

もう一つが脆弱型ナルシシズム(Vulnerable Narcissism)です。

これは「プライドの高さ」と「自己肯定感の低さ」の板挟みになっているタイプです。

このタイプは内心では「自分は優れている」と考えていますが、現実の自分が理想に追いついていないことも敏感に感じ取っており、失敗したり、他人からの批判によって化けの皮が剥がれることに怯えています。

そのため常に他人の目を気にして行動するようになってしまいます。

どちらのタイプも「完璧な自己イメージ」を追い求めるという点では共通していますが、性格としては過剰な自信家と極端な引っ込み思案のような正反対の形で現れます。

そして心理学の世界では、以前から不思議な現象が報告されていました。それは、「自己愛(ナルシシズム)が強い人ほど、強迫性障害(OCD)のような症状(強迫症状)が出やすい」という傾向です。

これは一見すると矛盾しています。 ナルシシズムは一般的に「自分は優れている」という感覚と結びつきます。一方、強迫症状は「鍵を閉め忘れたかも」「汚れてしまったかも」という不安から同じ行動を何度も繰り返してしまう症状です。

「なぜ、自分は優れていると感じる人間が、些細な汚れや簡単なチェックにこれほどこだわるのか?」 ブラジルのサンフランシスコ大学の研究チームは、このパラドックスを解き明かそうとしました。

そして研究チームは、ブラジル国内の成人約200名を対象に詳細なオンライン調査を実施しました。ここで彼らが着目したのは、単にナルシシズムと強迫症状の関連性だけでなく、「完璧主義」の傾向についてでした。

これが一見矛盾して見える2つの症状をつなげる架け橋になる可能性があると考えたのです。

そこで、チームは参加者に以下の心理尺度について回答を求めました。

研究チームは、これらのデータを解析し、どの要素がどの症状を引き起こしているのか、その心理的な経路(パス解析)を検証しました。

問題は「高い目標」ではなく「不一致の感覚」

解析の結果、驚きの事実が判明しました。「高い目標を持つこと」や「几帳面さ(秩序)」自体は、強迫症状の原因にはなっていなかったのです。

諸悪の根源は、完璧主義の中でも「不一致(Discrepancy)」と呼ばれる感覚でした。これが、ナルシシズムと強迫行動をつなぐ「呪いの架け橋」となっていたのです。

この不一致の感覚というのは、「理想の自分」と「現実の自分」のギャップをどうしても許せないという感覚です。

ナルシシズムの強い人は、心の中に「完璧な理想の自分」を描いています。しかし、現実はそう簡単にはいきません。

ふとしたミス、手順の狂い、ちょっとした汚れ…そうした些細な「不完全さ」を目の当たりにしたとき、彼らは「こんなの自分じゃない」「何かが間違っている」という強烈な「不一致(Incompleteness)」の感覚に襲われるのです。

ただ、先程ナルシシズムは2つのタイプがあると話しました。誇大型ナルシシズムと脆弱型ナルシシズムを今回の問題において同列で語れるのでしょうか?

ナルシシズムのタイプで異なる苦痛の現れ方

自己愛を持つ人が完璧主義の「不一致」による苦痛から、強迫性症状につながる可能性が示されましたが、ナルシシズムのタイプによって、心の苦痛の現れ方には違いがあるのでしょうか。

研究結果は、誇大型ナルシシスト脆弱型ナルシシストとでは、症状へのつながり方に異なる傾向が示されました。

誇大型ナルシシストは、「自分は特別だ、特権を持っている」という誇張された自己評価を持っていますが、実際望んだ地位に着けない場合、強迫症状が現れます。

通常の人は、こうした場合に単に「もっと頑張ろう」と考えますが、誇大型ナルシシストは「なぜ自分は完璧ではないのか」「なぜ認められないのか」という思考が、自分の意思に反して何度も頭にこびりついて離れなくなります。

強迫観念として、考えたくないのに頭に浮かび続ける「思考のループ」に留まる傾向があるのです。今回のデータでは、そのような誇大型は強迫行為よりも強迫観念側との関連が目立つ傾向が見られました

一方で、もともと不安を感じやすい脆弱型の人は、理想に届かない自分に対して強い「恥」や「恐怖」を感じるため、単に頭の中で悩むだけでは収まりません。

その耐えがたい不安をなんとか抑え込もうとして、何度も確認を繰り返したり、自分なりの儀式を行ったりする「強迫行為」という具体的な行動にまで支配されてしまうのです。

そのため脆弱型では不一致による「逃れられない不安から儀式的な行動(強迫行為)」を繰り返すという関連が目立ちました。

ここでいう儀式的な行動とは、例えば執拗に何度も確認を繰り返し「完璧に管理できている感覚」を得ようとする確認行動や、 執拗に手を洗うことで「不純なもの(ミスや汚れ)」を洗い流そうとする洗浄行動などです。

そしてどちらの場合も、完璧主義がナルシシズムの特性と強迫症状の橋渡しをしているのです。

なぜ、不一致は自己破壊的な行動を生むのか?

この結果は、ナルシシズムが単に他者に害を与える特性ではなく、自分自身にも大きな損害を与えるという、自己愛の「内部的なコスト」を浮き彫りにしています。

ナルシシストは、理想的な自己イメージを作り上げますが、この理想像を現実として維持するために、外部からの承認に大きく依存します。

この理想像が現実によって維持できなくなった時、彼らは「自己調整の危機」を迎えます。

脆弱型ナルシシストの場合、この危機はより深刻で、恥や恐れを伴います。

彼らは、その強烈な不安に対処し、失われたコントロール感や安全を取り戻そうとする手段として、強迫的な儀式に頼ってしまうのです。

「ま、いっか」が心を救う

今回の研究は、私たちが抱える「生きづらさ」に一つのヒントを与えてくれます。

もしあなたが、何かに対して「ちゃんとやらなきゃ」と過剰に思い詰め、確認や修正がやめられなくなってしまったら、それは能力不足のせいでも、単なる心配性のせいでもないかもしれません。

心の奥底にある「完璧な自分でいたい」という高いプライドが、現実のあなたを追い詰めているサインである可能性があります。

「理想通りじゃなくても、世界は終わらない」 「今日の自分は、これで十分」

そうやって、理想と現実のズレ(不完全さ)を許してあげる「ま、いっか」という感覚こそが、ナルシシズムの呪縛と強迫的な不安から、あなたの心を救う鍵になるのかもしれません。

参考文献

Psychologists identify a potential bridge between narcissism and OCD

Psychologists identify a potential bridge between narcissism and OCD
https://www.psypost.org/psychologists-identify-a-potential-bridge-between-narcissism-and-ocd/

元論文

The Mediating Role of Maladaptive Perfectionism Between Grandiose Narcissism, Vulnerable Narcissism, and Obsessive-Compulsive Symptoms
https://doi.org/10.1016/j.paid.2025.113487

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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