エメラルドカットが婚約指輪に選ばれる理由──エレガントなダイヤモンドの形について知っておくべきポイント

最もエレガントなダイヤモンドの形として名高い「エメラルドカット」

エメラルドカットの婚約指輪は、ダイヤモンドの形のなかでも最もエレガントなもののひとつだと考えられている。それもそのはず、グレース・ケリーがモナコのレーニエ王子から贈られた婚約指輪の石も、このエメラルドカットだった。

エメラルドカットは確かに美しい輝きを放つが、この長方形の石には、クッションカットやラディアントカットのようなほかの似た形のダイヤモンドほどの輝きはない。しかし、その魅力はなんといってもその繊細さにある。エメラルドカットは決して派手すぎず、美しいダイヤモンドを求めるミニマリストにぴったりの、まさに「クワイエット ラグジュアリー」な選択なのだ。

「このシェイプを選ぶ人はたいてい、主張することなく、洗練されたものを求めています」と、ジュエリーブランドGrown Brillianceの創設者、アクシー・ジャヴェリは説明する。「それは、最も洗練された形で表現された“自信”なのです」

エメラルドカットの婚約指輪に関する専門家の洞察を得るため、私たちは伝説の「ホープ・ダイヤモンド」からエリザベス・テイラーがリチャード・バートンから贈られた婚約指輪まで、世界で最も著名な宝石の評価を行ってきた米国宝石学会、GIAのEVP兼チーフラボラトリー＆リサーチオフィサーであるトム・モーゼスに話を聞いた。以下では、このダイヤモンドのスタイルがどのように鑑定されるのかといったことから、人気のあるセッティングまで、エメラルドカットの魅力について解説する。

エメラルドカット・ダイヤモンドとは？

エメラルドカットには、そのスタイルを明確に定義するいくつかの特徴があるが、トム・モーゼスは次のように説明する。「角が面取りされた長方形の石で、長く直線的なステップカットのファセットが、鏡のような効果（強烈な輝きではなく、エレガントで細長い光の連続）を生み出します。もともとはエメラルドのために考案されたカッティングスタイルですが、透明度、対称性、光沢を際立たせるため、後にダイヤモンドにも採用されるようになりました」

エメラルドカットが婚約指輪に選ばれる理由

では、このカットがビヨンセやアマル・クルーニーといったセレブたちの婚約指輪のセンターストーンに選ばれる理由は何だろうか？ 「エメラルドカットの魅力は、その慎ましさにあります」とモーゼス。「エメラルドカットの広いテーブルと幾何学的なファセットは、ダイヤモンド内部の特徴を明らかにし、アール・デコのエレガンスを連想させるなめらかで建築的な印象を与えるのです。ブリリアンスよりもクラリティが強調されるため、この石は自信に満ちたモダンな魅力をもたらし、手を長く見せたりもします」

「エメラルドカットのダイヤモンドは、『ヨンカーダイヤモンド（1934年に南アフリカで発見された巨大なダイヤモンド原石）』を筆頭に、多くの大粒で貴重なダイヤモンドのカッティングスタイルとして選ばれてきた長い歴史があります」とモーゼスは付け加える。「ヨンカーダイヤモンドという名前は、南アフリカの有名なプレミア鉱山でこのダイヤモンドを発見した南アフリカ人の名前にちなんで付けられました。世界で最も完璧に研磨されたダイヤモンドのひとつであると有名です」

エメラルドカットを「4C」で評価する方法

エメラルドカットは、「4C（カット、カラー、カラット、クラリティ）」として知られるGIAの品質評価基準で評価される。

「エメラルドカットのダイヤモンドは、GIAが開発したカラーとクラリティのシステム、カラット数の正確な測定、石の研磨と対称性の鑑定を通じて、D〜Zのカラーグレードと同じ方法で評価されます。」とモーゼス。また、エメラルドダイヤモンドの鑑定において、カットは重要な要素ではないことに留意する必要がある。石の価値はこれらのグレードによって決まり、クラリティ、カラー、サイズが高いほど高価になることが多い。

ステップカットの石のユニークな要素は、その反射性だ。ダイヤモンドの内部にあるインクルージョン（原石をカットするときにできる内包物のこと）は、その鏡のような効果のおかげでさらに拡大される。これらが目立ちすぎないよう、クラリティの高いエメラルドカットの婚約指輪を探すことが重要だという。クラリティが高いほど希少性、そしてリングの価格も高くなるそうだ。

モーゼスは「カラーもまた、特別な注意が必要です」と続ける。「エメラルドカットのダイヤモンドは、ほかのカットよりもシンチレーション（輝き）が少ないため、ダイヤモンドのカラーがより際立つのです」

スタイルとセッティングの選び方

自分やパートナーにふさわしいエメラルドカットの婚約指輪を見つけるには、パーソナルなスタイルが決め手となる。エメラルドカットは派手なセッティングに合わせることもできるが、ジャヴェリ曰く、「ミニマルで彫刻的なセッティングが似合うシェイプ」と指摘する。「私は、石を主役にしたクリーンなソリティアとの組み合わせが好きです。イースト・ウェストのセッティングは、現代的なひねりを加えたいときにおすすめですね。テーパードバゲットをあしらったスリーストーンは、時代を超越した優美な印象になります。また、ヘイロー（中央のメインストーンを取り囲むデザインのこと）は、ラインを邪魔することなく柔らかな輝きを添えてくれるでしょう」

将来、婚約指輪と結婚指輪をどのように組み合わせるかも考えておくといい。手もとをもっと輝かせたいなら、すっきりとしたソリテアとのペアリングを検討するのもいいだろう。

そのほかアドバイスと注意点

婚約指輪は何年も身につけるものだからこそ、自分にぴったりのエメラルドカットダイヤモンドを見つけることが大切だ。石のサイズは、手の大きさによって調整するといいだろう。指が長く、幅が広い場合は、大きめのダイヤモンドを。小さな手であれば、リングのデザインや付け方によっては圧倒されてしまうかもしれない。

また、石のプロポーションによっても見え方が変わる。「角が面取りされた長方形で、クラウンとパビリオンの両方にファセットが同心円状に並んでいるのが（エメラルドカットの）特徴ですので、エレガントに見えるさまざまなプロポーションに仕上げることができます」とモーゼスは言う。これらの長方形は、長さと幅の比率によって、短くすることも長くすることもできるという。そのため、購入前に石を指にはめてみて、大きさを判断するのが賢明だろう。

また、現在のトレンドを取り入れたいかどうかも考慮するといい。現在、イースト・ウェストダイヤモンドのエメラルドカットはかなり人気があるが、歴史的にはそれほど一般的なセッティングではない。もうひとつの大きなトレンドは、ラボグロウンダイヤモンドへのシフトだ。これらの石は人工的に生成されるため、サイズが大きく、クラリティが高いことが多い。ラボグロウンダイヤモンドの大きな利点には、価格が安く、希望するサイズのダイヤモンドを手に入れやすいことが挙げられる。しかし、採掘されたダイヤモンドほど希少価値が高くはない。ラボと採掘のどちらを選ぶかは、好みと予算とするのがベストだ。

モダンなエメラルドカットの婚約指輪といえば……

モダンなエメラルドカットの婚約指輪といえば、アマル・クルーニーのそれが思い浮かぶ。7カラットのダイヤモンドは、プラチナバンドに2つのテーパードバゲットで縁取られており、グレース・ケリーの指輪に似たエレガントなセッティングだ。人権活動家であるクルーニーにふさわしく、ダイヤモンドは倫理的に調達されたものだという。

Text: Shelby Wax Adaptation: Motoko Fujita

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