【専門家監修】その不調、実は「下着障害」かもしれません〈前編〉

夕方になるとバストサイズが変わる、肩が凝る、下着の跡がくっきり残る……。40代になるとホルモンバランスや体型の変化とともに、下着の違和感を覚える人が増えていきます。こうした小さな違和感を放置すると、ボディラインの崩れだけでなく、身体の不調に繋がることも。今回はプロボディデザイナーの植田稀紀子さんと、Nao Lingerie デザイナーで代表の川嶋菜緒さんに、40代から更新すべき“下着の常識と選び方”について伺いました。

今回お話を伺ったのは...

【Profile】1973年生まれ、大阪出身。プロボディデザイナー。15,000人以上の女性のケア経験をもとに「アフェクティブバストセラピー協会」を設立。全国や海外でセミナーを行い、雑誌・ラジオ・テレビでも活躍。現在は東京の美容サロン「natural forme」にて毎月施術を行っている。

【Profile】学習院大学法学部卒。伝統工芸のPRを通じて日本の職人技に魅了され、ミラノでランジェリーデザインを学ぶ。帰国後、メイド・イン・ジャパンの美しさと機能性を追求する「Nao Lingerie」を設立。「見えない場所に、いちばん良いものを」を信条に、女性の尊厳を守るランジェリーづくりを続けている。

STORY世代のリアルなバスト悩み、放っておくと体調にまで影響が

北野：読者アンケートでいただいたお悩みには、以下のようなものがありました。これは下着障害と呼ばれる症状なのでしょうか。

○「夕方になると浮腫むのか、朝よりも下着がキツく感じる」（37歳）

○「とにかく息苦しい。肩が凝ったり背中が痛くなったりすることもある」（39歳）

○「冬場の乾燥する時期になると、アンダー部分がミミズ腫れのような状態になる」（40歳）

○「ワイヤーの当たる部分がガサガサしてかゆい。全体的に乾燥していて黒ずみもあるような……」（48歳）

植田さん（以下敬称略）：カラダの不調の理由のひとつに、実は“下着”が関係している可能性があります。「下着障害」とは、サイズが合っていない下着や、締めつけの強い下着を長時間つけることで起こる症状の総称。血行不良やリンパの滞り、浅い呼吸につながり、結果として慢性的なむくみ・首こり・肩こり・冷えといった不調を引き起こすこともあります。

さらに、顔に近い場所にあるバストのリンパが滞ると老廃物が流れにくくなり、肌の乾燥、バストの下垂やしぼみ、顔のくすみ、ボディの黒ずみなど、見た目への影響も少なくありません。また呼吸が浅くなることで姿勢が崩れ、猫背や自律神経の乱れを招くことも。キツい下着は、身体的な不調だけではなく、メンタル面にも影響することもわかっています。

北野：なるほど…。では、正しい下着選びのコツはありますか？

植田：今使っているブラジャーのサイズが、本当に自分に合っているかを一度見直してみてください。いまは何でもネットで買える時代だからこそ、試着をせずに購入してしまう方が本当に多いんです。半日以上、肌に直接つけているものだから、丁寧に選ぶことはとても大切。

購入するときは、ワイヤーが当たって痛い、肩紐がずれるなど、いま抱えている悩みをぜひフィッターさんに相談してみてください。サイズだけで選ぶのではなく、「バストの高さを出したい」「胸を小さく見せたい」など、自分の理想のバストラインを伝えてみるのもおすすめです。フィッターさんは、いわば下着のソムリエ。豊富な知識と経験から、あなたに合う一枚を選んでくれるスペシャリストなんです。

バストの大きさは、生理周期によって約20％も変化

北野：フィッターさんに相談することを恥ずかしがって、自分が思い込んでいるサイズで購入する人も多いと思います。

植田：そうなんです。でもそのサイズって本当に正しいですか？ってことですよね。女性は生理の周期もありますから、生理中や生理前など、どのタイミングで下着を買いに行くかでサイズ選びも変わってきます。大切なのは自分のカラダが今どういう状態なのかをきちんと知ること。はみ肉や、ブラジャーとバージスライン（ブラジャーのワイヤーが当たる下胸のカーブした輪郭のこと）が合っているかを知ることです。着けてキツかったり苦しく感じるのはやめた方がいい。下着だけでなんとかしようと思うと、下着障害になりがちです。

川嶋さん（以下敬称略）：年齢を重ねるごとに皮膚のたるみ具合も多くなるので、肩紐やレースの収縮性、肌に優しい素材選びも大切です。長時間の装着で跡がついたり、痛みを感じたりする場合は見直しが必要。例えばレースが伸びるか伸びないかだけでも、着け心地は変わってきます。

大切なのは今の自分のカラダと向き合うこと。実際、アンダーが75cmなのに65cmだと言い張るお客様もいらっしゃいます。ご本人の好みや理想と、私たちプロが最適だと思う“落ち着くポイント”を探りながら提案しているので、試着はとても大切です。下着はあくまでも整えるもの。ちゃんと整えるけど、無理をしないことが大前提です。

▼川嶋さん直伝！正しいブラ選びのコツ

植田：大手下着メーカーさんの資料によると、自分のサイズより小さいブラジャーを着けている人は5割もいるそうです。２人に１人の割合ですね。ブラジャーのホックはだいたい3段階になってるので、その日のむくみ具合で調整すれば良いんです。朝キツめにしても、夕方になって背中に疲れが溜まってきたら一つ緩めてあげる。アンダーは2cm刻みで変えられるので、一つのブラジャーでも自由度はあるんです。

川嶋：大人はカラダも皮膚も揺らいでくるので、素材や収縮性にもこだわり、1日中着けていてもカラダを締め付けない、呼吸を制限しない下着が理想です。ワイヤーも硬すぎず、U字よりもL字で広めがオススメ。それに、小さいのをつけることで谷間を作るのも良くないですね。ワイヤーでグッと胸を寄せても、日常の動きで流れていってしまいます。

細かいポイントで言うならば、脇の高さは少し高めが良いです。ですが、高すぎるとその上にそのままお肉が乗っかってしまうので、拡散できるように背中にかけてなだらかに斜めになっているものを選びたいですね。

▼大人女性におすすめのアイテム

植田：年齢とともに代謝も落ちて、血流やリンパの流れが滞りやすくなり、コリや疲れが溜まっていくと胸に厚みも出てきます。だけど、アンダーが75の人が80に変えるのは勇気がいる。50歳くらいになると、ブラトップやカップ付きキャミソールへ移っていく方も多いですよね。

カップ付きキャミソールは見た目の観点から言うと、確かに形は悪くなります。ですが、カラダを締め付けないので、選択肢の一つとして使うのは良いですね。最近はノンワイヤーでも優秀なものはをたくさん出ていますが、S ・M・ Lというサイズに全てのバストが合うはずがありません。よく動く日や運動する日は避けるなど、着ける日を選ぶことが大切です。

毎日のブラジャーは、カップ付きキャミソールだけに頼らず、正しい位置でバストを保ってくれるもの選んでください。

に続く

取材・文／北野法子、イラスト／黒猫まな子