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「かなり生々しい」「刺激が強すぎる」度肝を抜く“濃密シーン”に騒然…キャスト陣の“覚悟滲む名演”が光る至高映画

  • 2026.1.30

観終わった瞬間に終わらない——生々しい感情や関係性が、時間差で心に残り続ける映画があります。そこで今回は、"過激な表現で話題を集めた映画"5選をセレクトしました。本記事では第2弾として、『二十六夜待ち』をご紹介します。

この作品は、R-18+指定を受けた大人のラブストーリーで、越川道夫監督が佐伯一麦の同名小説を映画化した作品です。震災で全てを失った女性と記憶を失った男性が傷ついた魂を寄り添わせていく姿を濃厚シーンとともに描き切った本作は、2017年の日本映画界に大きな話題を提供しました。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや演出に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画「愛を語れば変態ですか」の初日舞台あいさつに出席した黒川芽以(C)SANKEI
  • 作品名(配給): 映画『二十六夜待ち』(フルモテルモ)
  • 公開日: 2017年12月23日
  • 主演: 井浦新、黒川芽以 ほか

震災の津波によってすべてを失った由実(黒川芽以)は、福島県いわき市にある叔母の工務店で身を寄せることになります。深い心の傷を抱えたまま、叔母の勧めで小さな飲み屋「杉谷」で働き始めました。

店を切り盛りする杉谷(井浦新)は、8年前に山中で発見された記憶喪失の男性です。彼が覚えているのは、自分の手が料理をしていたという感覚だけ。周囲の温かな人々に支えられながらも、杉谷は常に怯え、自分が何者なのか分からない孤独を抱えています。それぞれに傷を負った由実と杉谷は、やがて互いの心と体を近づけていきます。

記憶を失ったまま生きる男と、忘れられない過去に苦しむ女。すれ違っていた心と体は、少しずつ重なり合っていく――。。  

越川道夫監督の挑戦――性と死と生を叙情的に描く

本作でメガホンを取ったのは、越川道夫監督です。越川監督は、『海炭市叙景』や『かぞくのくに』でプロデューサーとして名を知られ、近年では山田真歩さん主演の『アレノ』、満島ひかりさん主演の『海辺の生と死』など、監督作でも高い評価を受けている実力派です。性や死、生を叙情的に描き続けてきたその表現力は、本作においても存分に発揮されています。

原作は、佐伯一麦さんによる同名の短編小説。越川監督は東日本大震災の直前に佐伯さんと知り合い、震災後に執筆されたこの物語を、以前から映画化したいと強く願っていたと語っています。本作は単なる恋愛映画にとどまらず、喪失と再生、孤独と寄り添いといったテーマを、繊細さと大胆さを併せ持って描き出した一作です。

また、本作は第30回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に選出され、国内外から高い評価を集めました。

R-18+指定――濃厚シーンに衝撃

SNSに「あまりにも過激」「かなり生々しい」「刺激が強すぎる」などの声が寄せられるほど、本作には踏み込んだ性描写が含まれており、R-18+指定となっています。この指定により18歳未満は鑑賞できず、地上波放送などでオリジナル版をそのまま視聴するのは難しい作品です。

コンプライアンスが年々厳格化する現代の映画界において、本作は「性」というテーマを通して、人間が抱える孤独や救済を描こうとした意欲作だといえるでしょう。R-18+という枠組みは、むしろ表現の自由を突き詰めるための条件となり、主演二人の体当たりの演技が相まって、強い余韻を残す一本に仕上がっています。

黒川芽以の体当たり演技

本作において由実を演じた黒川芽以さんの存在感あふれる演技は、作品を語るうえで欠かせない大きな魅力となっています。

黒川芽以さんは1987年5月13日生まれ、東京都出身の女優です。6歳で芸能界入りし、ドラマ『ケータイ刑事 銭形泪』で一躍注目を集めました。子役時代から長くキャリアを重ねてきた黒川さんですが、本作に出演した当時は29歳。20代最後の節目となる作品として、本作に真正面から向き合いました。震災によってすべてを失った女性という難役に挑むにあたり、当時の映像を見返したり、震災直後に現地へ向かった人々の証言に耳を傾けるなど、丁寧な役作りを行ったといいます。

なかでも大きな挑戦となったのが、井浦新さんとの濃密シーンです。長回しで撮影されたシーンは、女優にとって大きな覚悟を要するものでした。それでも黒川さんは、越川監督やスタッフ、共演者との強い信頼関係のもと、この役に誠実に向き合い続けました。

本作は、黒川芽以さんにとって20代の集大成であると同時に、女優として新たな一歩を踏み出すきっかけとなった作品でもあります。R-18+指定作品で見せた体当たりの演技は、彼女のキャリアにおける重要な転機となりました。

実力派キャストが集結――井浦新の繊細な演技

映画『二十六夜待ち』には、確かな実力を備えた俳優陣が顔を揃えています。

主要キャストには演技力に定評のある俳優が集められ、記憶を失った男・杉谷を井浦新さんが体現しました。震災によって家族や日常を失った女性・由実役には、黒川芽以さんがキャスティングされています。

由実が働く飲み屋の常連で、市役所に勤める木村を演じるのは諏訪太朗さん。由実を温かく受け入れる叔母役として天衣織女さんが出演し、さらに作品の雰囲気を彩る音楽家・大沢役には鈴木慶一さんが起用されました。

井浦新さんと黒川芽以さんという二人のベテラン俳優が織りなす、緊張感のある濃密な演技の掛け合いこそが、本作の中心を成しています。

2017年12月23日公開――東京国際映画祭でも上映

映画『二十六夜待ち』は、2017年12月23日に劇場公開されました。R-18+指定作品のため上映館は多くありませんでしたが、作品の持つ濃密さが口コミで広がり、次第に注目を集めていきました。

公開に先駆けて、本作は2017年開催の第30回東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門に出品されています。国際映画祭での上映を通じて、本作は単なるエロティック作品ではなく、震災や喪失といったテーマに真正面から向き合った芸術性の高い映画として評価される場となりました。

撮影を手がけたのは、是枝裕和監督作品でも知られる山崎裕さん。美術は平井淳郎さん、音楽は澁谷浩次さんが担当しています。各分野のプロフェッショナルが集結したことで、本作は完成度の高い一作に仕上がりました。

その後、WOWOWなどで放送された際には、R15+指定として一部シーンを編集したバージョンがオンエアされています。無修正版を鑑賞できるのは、R-18+指定の劇場版およびパッケージ版のみです。

実際に鑑賞した視聴者からは、「映画館で3回観た」「家族とは一緒に観られない」「過激なシーンに驚いた」「覚悟して観たがストーリーが良かった」といった感想も寄せられています。

孤独な魂の寄り添い――失われたものを取り戻す物語

映画『二十六夜待ち』は、越川道夫監督が佐伯一麦さんの同名小説を原作に映像化した作品です。震災によってすべてを失った女性と、記憶をなくした男性が、傷ついた心を寄せ合いながら生きていく姿を、徹底して描き出しています。

黒川芽以さんは、踏み込んだ濃密なシーンにも果敢に挑み、体当たりの演技によって、震災という喪失を背負った女性の孤独と再生を鮮烈に表現しました。コンプライアンスが重視される時代において、本作は「性」を媒介に人間の本質へ迫ろうとした意欲的な一本です。地上波では完全版の放送が難しいほど過激な描写を貫いた本作は、現代日本映画で失われつつある表現の自由を取り戻そうとする試みともいえるでしょう。

劇場という限られた空間でこそ味わえる本作は、観る者の記憶に深く刻み込まれる作品となるはずです。


※記事は執筆時点の情報です