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「まさか自分が…」FW棚田遼が昨季トライアウト参加のJ1サンフレッチェ広島の先輩と立てた誓い「広島よりもビッグになって」

  • 2025.12.18

J1サンフレッチェ広島から今季は育成型期限付き移籍でJ3ガイナーレ鳥取に加入していたFW棚田遼。

両クラブから退団のリリースは発表されていなかったが、18日に大阪府内で開催された日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する『JPFAトライアウト』に姿を現した。

広島の下部組織で背番号10を背負い、将来を期待されていた男のトライアウト参加は、本人にとっても「まさか」の出来事だった。

受け入れられなかった広島からの契約満了

広島の未来を担う存在だった。

18日のトライアウトに参加した棚田。サンフレッチェ広島ジュニアユース、サンフレッチェ広島ユースで背番号10として成長し、2022年にトップチーム昇格を果たした。

「トップチームでもいつか10番を背負って、エースでやる未来を描いていた」と、地元広島で活躍したい一心だった。

だからこそ、契約満了を告げられたときのショックは大きかった。

画像: 18日のトライアウトに参加した棚田(写真:浅野凜太郎)
18日のトライアウトに参加した棚田(写真:浅野凜太郎)

「まさか自分がトライアウトに来るとは思っていませんでした。(トップチーム昇格から)4年目で契約が切れたことを、最初は受け止められなくて…。

小さいころからサンフレのアカデミーでやってきて愛があるので申し訳ない気持ちと、期待してくれているファンが多かったので、その期待に応えたかったという気持ちが一番です」

昨季はJ2いわきFCに育成型期限付き移籍してリーグ戦10試合、今季は鳥取での武者修行だったが、リーグ戦20試合2得点の活躍に留まった。

トライアウトの参加については直前まで迷うほど葛藤していたが、「まだ正式にオファーがきていない」と18日の部に臨んだ。J3のクラブから話はもらっているが、「トライアウトに来るからには自分の武器とか価値を示そう」とスカウトにアピールした。

画像: パスコースを探す棚田(写真:浅野凜太郎)
パスコースを探す棚田(写真:浅野凜太郎)

この日は紅白戦が3本行われ、自ら志願して全試合に出場。得意とするトップ下でのプレーに加え、本職ではないボランチでも持ち前のテクニックを披露した。

「本当にいい経験だったと思っています。ここからはい上がっていくしかない」と、22歳は“広島への想い”をエネルギーにしている。

今季共闘したアカデミーの先輩と立てた誓い

今季の鳥取では、同じく広島の下部組織出身で、2019年に同クラブとプロ契約を締結した2学年上のMF土肥航大(どひ・こうだい)ともチームメイトだった棚田(既に土肥は鳥取を契約満了で退団)。

普段から仲が良く、この日のトライアウト後も会う予定の二人には共通点がある。

昨年、土肥も広島からの退団リリースがないままトライアウトに参加。同選手も多くのクラブへの期限付き移籍を経験していた苦労人であり、トライアウトでは不安を隠しながら懸命に戦っていた。

「契約満了と言われたときに、航大くんがすぐに電話してずっと慰めてくれました。航大くんもトライアウトから切り替えて、今年の途中からガイナーレに来て頑張っていた。お互いに難しい状況だと思いますけど、『折れずにステップアップしよう』って話していました」(棚田)

画像: 昨季のトライアウトに参加していた土肥(写真:浅野凜太郎)
昨季のトライアウトに参加していた土肥(写真:浅野凜太郎)

トライアウトに参加する選手の葛藤を身をもって理解していたからこそ、土肥は真っ先に後輩の棚田に連絡。そして二人は“ある”誓いを立てた。

「絶対にサンフレを倒してやろうぜ」

棚田は力強く、新たな決意を口にした。

画像: パスを出す棚田(写真:浅野凜太郎)
パスを出す棚田(写真:浅野凜太郎)

「広島は地元でスタジアムから家も近いし、親も住んでいるので、広島でプレーを見せたい気持ちはあります。でもやっぱり一回(契約を)切られちゃうと、『倒してやりたい』という負けず嫌いの部分が出ますね。絶対に上を行きたいです。広島よりもビッグになって、勝ちたいです」

愛するクラブを倒し、自身の力を証明する。それが二人にとって一番の恩返しだ。

「愛があるから複雑ですよ。成長した姿を見てもらいたいと思いますけど、ファンの人にはやっぱり『絶対に帰ります』と伝えたい。まだまだこれからだし、戻れるチャンスもあるかもしれない。でも絶対に倒します」

画像: 力強くドリブル突破する棚田(写真:浅野凜太郎)
力強くドリブル突破する棚田(写真:浅野凜太郎)

広島とはしばらくの別れだ。棚田と土肥は契約満了の悔しさを糧にして、二人で立てた誓いを果たすため、再スタートを切っている。

(取材・文・写真:浅野凜太郎)

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