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27年前、“月9ドラマ”を彩った“40万ヒットの冬ソング” 気だるげでアンニュイな歌声

  • 2026.2.11

「27年前の冬、あなたはどんな景色の中にいた?」

1999年の幕開け。ノストラダムスの予言が囁かれ、新しい世紀への期待と得体の知れない不安が、マーブル模様のように混ざり合っていたあの頃。携帯電話のアンテナを伸ばして誰かからの返信を待ち、テレビから流れるドラマの展開に一喜一憂していた、そんな冬の夜だ。

冷たい空気の中に、それまでの邦楽とは一線を画す、洗練された洋楽のような響きがそっと入り込んできたのを覚えているだろうか。その音は、ただ明るいだけではない、どこかアンニュイで、けれど体温を感じさせる不思議な心地よさを纏っていた。

the brilliant green『そのスピードで』(作詞:川瀬智子・作曲:奥田俊作)――1999年1月27日発売

“月9”の街に降り注いだ、新しい冬の音

この曲がリリースされた1999年1月、日本中の注目は一つのテレビドラマに集まっていた。反町隆史と江角マキコがダブル主演を務めたフジテレビ系ドラマ『Over Time-オーバー・タイム』である。

都会で生きる男女の心の機微を丁寧に描いたこの作品。その主題歌として、物語の温度感に完璧に寄り添っていたのが『そのスピードで』だった。

1998年に3枚目のシングル『There will be love there -愛のある場所-』で大ブレイクを果たしたthe brilliant greenにとって、これは通算5枚目のシングル。すでに“ブリグリ”という略称が定着し、若者たちのファッションやカルチャーに大きな影響を与えていた彼ら。

この楽曲のヒットによって、彼らの存在は単なる人気バンドを越え、時代の空気を規定する象徴的なものとなった。

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2017年、東京・神宮外苑花火大会で歌うthe brilliant greenのボーカル・川瀬智子(C)SANKEI

洋楽の風を纏った、孤高の3人

彼らの音楽が当時のリスナーに与えた衝撃は、その圧倒的な“洋楽感”にあった。奥田俊作が紡ぎ出すメロディとサウンドは、60年代や70年代のブリティッシュ・ロックの系譜を感じさせつつも、90年代末の日本のポップシーンに鮮やかに着地していた

特にこの『そのスピードで』は、イントロのドラムから始まり、直後に重なるギターとベースのアンサンブルが、聴く者を一瞬にして独自の空気感へと引き込んでいく。

そして何より、ボーカル・川瀬智子の透明感あふれる歌声だ。彼女の声は、過剰に感情を押しつけるのではなく、どこか気だるげでアンニュイな響きを湛えている

その声が日本語をまるで英語のフレーズのように滑らかに操る時、リスナーは言葉の意味を越えた“心地よい波動”を受け取ることになる。その歌声には冬の夜空を突き抜けるような、しなやかで力強い芯が通っていた。

40万枚のヒットが証明した、静かなる革新

『そのスピードで』は、ランキング初登場1位を記録し、最終的に40万枚を超えるセールスを叩き出すヒットとなった。

派手なダンスや演出に頼るのではなく、音楽そのものが持つ「佇まい」で勝負する。そんな彼らのスタイルが、ドラマの切ない余韻と相まって、当時の私たちの心に深く、静かに刻み込まれたのだ。

あれから27年。ドラマの登場人物たちが悩んでいた年齢を、私たちはとうに追い越してしまったかもしれない。

それでも、このイントロのギターが流れてくると、あの冬の凍えるような空気と、その中に灯っていた小さな希望の温度を、今でもはっきりと思い出すことができる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。