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35年前、オーディション番組発ユニットが放った“さわやかな別れ” 派手さを抑えた一曲

  • 2026.1.25

1991年1月。華やかな音楽が街を埋め尽くしていた一方で、テレビの向こうやラジオの隙間には、少しだけ肩の力が抜けた音楽も確かに流れていた。強く主張するでもなく、深刻になりすぎることもない。ただ、日常の延長線に心地よく溶け込むような存在。そんな空気をまとって登場したのが、この曲だった。

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Google Geminiにて作成(イメージ)

PINK SAPPHIRE『HELLO GOODBYE』(作詞:美遊砂・作曲:宮口博行)――1991年1月30日発売

グループの現在地を映した3枚目のシングル

『HELLO GOODBYE』は、PINK SAPPHIREにとって3枚目のシングルにあたる。

オーディション番組『三宅裕司のいかすバンド天国』に出場後デビュー当初から、彼女たちは女性バンドらしい爽快さと、耳に残るポップロック感を武器に活動してきたが、本作ではその路線を大きく変えることはしていない。

ただし、前作までにあった力強い疾走感は、ここでは一歩引かれている。音の輪郭はより整理され、アンサンブル全体に無理がない。「尖るより、整える」という選択が、自然に行われている印象だ。

それが結果として、3枚目にして早くも“落ち着き”を感じさせる仕上がりにつながっている。

抑制された音が際立たせる、PINK SAPPHIREらしさ

この曲の魅力は、何かを足したことよりも、あえて抑えたことで残った余白にある。

ギターサウンドは軽やかで、全体を包む空気はあくまで爽やか。ロック色は感じさせながらも、音が前に出過ぎることはない。そのため、聴き手は構えずに曲の流れに身を委ねることができる。

ボーカルも同様に、力で押し切るタイプではない。自然体の発声が、楽曲全体のトーンとよく馴染んでいる。明るさの中に、どこか穏やかな距離感がある。それがこの曲を、BGMのように日常へ溶け込ませる要因になっている。

テレビの余韻とともに流れた一曲

『HELLO GOODBYE』は、フジテレビ系『なるほど!ザ・ワールド』のエンディング・テーマとして使用された。

番組の締めくくりに流れる音楽として、この曲の持つさっぱりとした後味は非常に相性が良かった。視聴者の記憶に強烈に刻み込まれるタイプではないが、「ああ、いい曲だったな」と自然に思わせる、そんな役割をきちんと果たしていた。

セールス的には大きな話題を呼んだ作品ではない。だが、その分だけ、作品そのものの質感や雰囲気が、静かに評価されてきた一曲とも言えるだろう。

派手ではないからこそ残る、軽やかな余韻

『HELLO GOODBYE』は、PINK SAPPHIREの代表曲として語られることは多くない。

しかし、グループが持つ爽やかさやバンドとしてのバランス感覚を、無理なく提示した一曲として、この時期を象徴する存在であることは確かだ。強い主張はしない。けれど、耳を澄ませば、きちんと心地よさが残る。

そんな“さりげない良さ”こそが、この曲が今も記憶の片隅で鳴り続ける理由なのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。