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27年前、読モ発ユニットが放った“裏切りのサウンド” ギャル4人による“決意の旋律”

  • 2026.1.23

1999年1月。街にはまだ少しだけ90年代の余韻が残りながら、音楽シーンは確実に次のフェーズへと歩き出していた。CDショップの棚には、個性やキャラクターを前面に押し出した女性アーティストが並び始め、グループという形にも新しい意味が求められていた時代だ。

deeps『Brand-New Heaven』(作詞・作曲:伊秩弘将)――1999年1月13日発売

榎本加奈子主演のテレビ朝日系ドラマ『可愛いだけじゃダメかしら?』の主題歌として流れたこの曲は、彼女たちの存在をさらに“音”で印象づける役割を果たした。

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1999年、ドラマ『可愛いだけじゃダメかしら?』オンエア前夜祭に登場した榎本加奈子(右から2人目)とDeeps(C)SANKEI

“deeps”というユニットが選んだ距離感

deepsは、いわゆる王道アイドル的な文脈からは、少し距離を取ったところに立っていたユニットだった。メンバーは、当時強い影響力を持っていたギャル系雑誌の読者モデル出身者によって結成されており、その成り立ち自体が、従来のアイドル像とは異なる出発点を持っていた。

ビジュアルやキャラクターを前面に押し出すことも可能だったはずだが、deepsが選んだのは、あくまで“リアルを中心に据える”というスタンスだった。複数人の声が重なったときに生まれる質感や空気感を大切にし、ユニットとしての響きを丁寧に作り上げていく。その姿勢は、モデル発のグループという先入観を、静かに裏切るものだった。

当時のガールズユニットには、「元気」「かわいい」「華やか」といった即時的なイメージが強く求められがちだったが、deepsはそこに寄りかかりすぎなかった。ギャル系カルチャー由来のトレンド感をまといながらも、音楽面では消費されきらない芯の強さを保っていた点が、彼女たちの大きな特徴だったと言える。

伊秩弘将サウンドが描いた“更新された強さ”

プロデュースは伊秩弘将。90年代J-POPを語るうえで重要なヒットメイカーであり、そのサウンドには一聴してわかる“らしさ”がある。この楽曲でも、伊秩弘将特有のグルーヴ感は健在だ。ギターのカッティングが印象的で、リズムはタイトで、ベースラインがしっかりと曲を牽引する。そのうえで、編曲を担当した水島康貴が、従来の伊秩サウンドを踏襲しつつ、よりパワフルな方向へと押し広げている。

印象的なギターソロは、ファンク調の粘り気を残しながら、エッジの立ったギターが前に出ることで、曲全体に一段階上の熱量が加えられている。静かに始まりながら、気づけば体温が上がっているような構成が、この曲の魅力でもある。

1999年という転換点に刻まれた一歩

主題歌として起用されたドラマ『可愛いだけじゃダメかしら?』というタイトルも、この楽曲と不思議なほど呼応している。軽やかに聞こえながら、内側には意志がある。そんな二重構造が、『Brand-New Heaven』のサウンドにも重なっていた。

deepsのボーカルは、力で押し切るタイプではない。だが、だからこそ複数の声が重なったときに生まれる厚みが際立つ。個々の主張よりも、全体としての一体感がある。派手なフックやわかりやすいキャッチーさではなく、何度か耳にするうちに、じわじわと残っていくタイプの強さ。それが、この曲とdeepsが持っていた本質だった。

27年経った今あらためて聴いても、この曲には“古さ”よりも“構造の強さ”が先に耳に届く。deepsというユニットが、確かにこの時代に必要とされていた理由が、そこには詰まっている。

静かに、しかし確実に時代の空気を更新していった一曲。それが『Brand-New Heaven』だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。