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25年前、稀代のタッグが放った“新たな搭乗券” 盟友と次なるステージへ向かった“決意のミドルナンバー”

  • 2026.1.22

21世紀が幕を開け、街中がハイテクな未来への期待に沸いていた2001年。音楽シーンもまた、派手なデジタルサウンドや高速なビートが主流となっていた。そんな時代の喧騒をすり抜けるように、深夜のテレビから流れてきたのは、それまでのイメージを覆すほど重厚で、どこかヒリついた質感を持つ一曲だった。

T.M.Revolution『BOARDING』(作詞:井上秋緒・作曲:浅倉大介)――2001年2月7日発売

それは、デビュー以来二人三脚で歩んできたプロデューサー・浅倉大介とのトータルプロデュース体制において、その集大成として放たれた最後のシングル。一つの時代を鮮やかに締めくくり、次なるステージへと向かうための、あまりにも美しく切実な一曲だった。

煌びやかな装飾を脱ぎ捨てた「本当の叫び」

この楽曲がリリースされた当時、T.M.Revolutionといえば、圧倒的な歌唱力とキャッチーなダンスビート、そして視覚的なインパクトで時代を牽引するトップスターだった。しかし、『BOARDING』で見せた姿は、そうしたパブリックイメージとしての「T.M.Revolution」の完成形を提示しつつ、同時にそれを自ら塗り替えていくような、剥き出しの熱量に満ちていた。

西川貴教のボーカルは、これまで以上に言葉の重みを噛み締めるように、深く、太く響く。ミドルテンポのリズムに乗せて届けられるその声は、安易な励ましを拒み、今この場所から踏み出すための「覚悟」を歌い上げている。その逃げ場のないほどストレートな表現に、当時の私たちは、自分の人生を重ね合わせずにはいられなかった。

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2001年、東京・代々木第一体育館でライブをおこなったT.M.Revolution(C)SANKEI

盟友・浅倉大介が注ぎ込んだ「完成への旋律」

特筆すべきは、デビュー当初からすべての楽曲を統括してきた浅倉大介による、あまりに計算し尽くされた音作りだ。彼はこの曲で、得意とする多層的なデジタルサウンドと重厚なビートを軸にしたドラマティックな構成を選んだ。

次作からは西川氏本人のセルフプロデュース体制へと移行することを考えると、浅倉氏が込めたのは、盟友への最大の信頼だったのではないだろうか。

「BOARDING」というタイトル通り、これは慣れ親しんだ絶対的な体制を美しく完結させ、一人で未知の領域へと飛び立つための儀式だったのだ。職人たちが音に込めた「引き算」の美学が、一つの時代を築き上げた誇りと、次なる旅路への希望を鮮やかに描き出していた。

都会の片隅で共鳴した「再生」への序曲

本作は、ドラマ『別れさせ屋』の主題歌として多くの人々の日常に溶け込んだ。ドラマが描く「関係の終止符と新たな始まり」というテーマは、この楽曲が持つ背景と奇跡的なほどにリンクしていた。深夜の静まり返ったリビングで、あるいは帰路を急ぐ車内で、この曲を聴きながら「自分もまた、一つの季節を終えて次へ行かなければならない」と背中を押された人もいるだろう。

2001年という転換期において、私たちは常に「正解」を探していた。けれど『BOARDING』が提示したのは、正解ではなく「意志」だった。流行に迎合せず、あえて内省的で骨太なサウンドを叩きつけたこの曲は、単なるヒット曲という枠を超え、人生のゲートに立つすべての人に贈られたアンセムとなったのである。

25年を経て、今も胸を打つ「搭乗の合図」

あれから四半世紀。音楽を聴く環境も、人との繋がり方も劇的に変わった。けれど、ふとした瞬間にこの曲を耳にすると、あの冬の冷たく澄んだ空気と、不器用ながらも前を向こうとしていた自分自身の姿が、昨日のことのように蘇る。

今、改めてこの曲を聴くと、当時の西川貴教と浅倉大介が交わしたであろう、言葉にならない信頼関係が透けて見えるようだ。それは、この曲が時代を超えて、「変わりたい」と願う人間の普遍的な美しさを射抜いているからに他ならない。

重厚な旋律が終わりを迎えるとき、心に残るのは寂しさではない。新しい空へと羽ばたくための、揺るぎない確信。あの冬、彼らがゲートの向こう側に残した「搭乗の合図」は、今も私たちの心の中で、明日を切り拓くための静かな勇気として鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。